takato さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「デカスロン」もアニメ化熱烈希望。剽げた大河数寄ロマン。
個人的には山田先生の作品だと「デカスロン」の方が好きだが、本作がやはり代表作だろう。原作は正直引き伸ばし過ぎたが、本作は良いところで切り上げていて、3クールだけでそこまで引き伸ばし感がなくて良かった。1話1話がテンポが良くて30分とは思えぬ。
話としては基本的には歴史通り、もちろんフィクションだから面白くするために弄っている部分が多々ある(特に信長の死)が、本筋は概ね歴史通り。信長から家康という歴史上の中でも特にドラマティックな時期を剽げた数寄武将織部の視点で追っていく。
本作の序盤は、やはり日本の歴史上で最も英雄的だった男、信長の痛快無比な飛翔の物語だが、中盤以降は織部の二人の業深き師匠といえる秀吉と利休の物語となる。どちらかといと織部はその二人を追いかける狂言回しであって、なかなか自分なりの境地を見いだせす滑稽な失敗を繰り返す。しかし、その失敗の果に二人の世俗と芸術の巨匠がなし得なかった世界、即ち不完全なスキと笑いを愛する剽げた数寄の境地へと至る。
本作では秀吉も利休も自分の夢のためならば非常の手段もじさない、実は誰よりも業が深く、それに囚われて苦悩してもいる存在として描かれている。織部は二人のようにはとてもなれないが、第三の道であるマジになりすぎない本当の意味での心の平穏と余裕の道を追求する者として、失敗ばかりしているが愛嬌がある男としてずっと描いてきたからこそ納得できる内容になっている。
全体的にクオリティーは安定しているし、茶道という難しい題材ここまでを楽しく扱っているのは流石!。考えてみれば、「侘び茶」は当時においてはモダンでアヴァンギャルドな物だったわけで、現代の古ぼけて固定されきった物というイメージとは大きく異るのが興味深い。こういうメジャーではない題材をノー知識でも楽しめるエンタメにしている作品は本当に尊敬に値する。
それにしても、山田先生にはヤンサン休刊で未完に終わっている「度胸星」をどんな形でもいいから終わらせて欲しい!。もう本作でめっちゃ売れたし、あとは好きなことだけやっても悠々食べていけるくらいの余裕はあるだろうし。