ひっく さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
歴史に突き刺さった棘のような作品
僕はSFロボットアニメは基本的に苦手で、機動戦士ガンダムですらストーリーが上手く頭の中に入って来ずに序盤数話で挫折している。そこで逆に「まだ子供向けを脱していない」という評を聞いた事があるザンボット3なら敷居が低そうだと思い、挑戦してみた。尺も2クール23話だし!
序盤、今の目線で物語に没入できるかはともかく、悪ガキの主人公・神勝平がまるでロボットのおもちゃで遊ぶように得意気に敵を倒し、家族経営でお母さんやお婆ちゃんが戦艦を「えーと、このボタンかね?」と操作する様子は、ロボットアニメに昭和のホームコメディが乗っていて、小難しいことをなんにも知らない僕みたいなモンでも気楽に観進めることができた。
しかし5話くらいから、破壊されたままの街、神一家を良く思わない住民、戦艦を壊そうとしてくる主人公の幼馴染など、居心地の悪さの中で敵を倒していく流れになっていく。ロボットも決して無敵超人などではない。日本の首脳が道楽のように敵に射殺されたりと無残なシーンも頻発する。アメリカの老指揮官の死を目の当たりにすることで、勝平の人間性にも徐々に変化が表れていく。
そして問題の16話以降の展開。人間爆弾編以降のコンセプト・ストーリー構成は、ちょっと筆舌に尽くしがたい。ここまでの話は「昔のアニメでこんなものがあるんだなー」という気分での視聴だったのが、この辺りから完全に目が離せなくなった。今まで、90年代末期以降の「今、そこにいる僕」「最終兵器彼女」「ぼくらの」などのいわゆる鬱アニメはエヴァンゲリオンの影響下のものだと思ってきた。しかしザンボット3を観た今では、これらの作品は確実にエヴァよりもザンボット3からの影響の方が大きいように見える。逆に言うと、エヴァ以降・90年代末期以降の作品群の鋭利な精神的切迫感を、ザンボット3の人間爆弾編は70年代のうちに体現してしまっていて本当にとんでもない。最終回まで心に残る展開の連続だった。
僕も最初は「地球を助けている神一家に対して、住民たちが感謝を抱かずに『お前らがいるから敵が襲ってくるんだ!』と誤解して迫害するなんて、さすがに無理やりすぎてリアリティがないんじゃないか」と思っていました。これはデビルマンの終盤についても同様で、現実の大衆はそこまでアホじゃないんじゃない?と。しかし、昨今のSNSの二元論化、簡単に扇動され大して思考もせず全肯定か全否定かで決め、誹謗中傷を繰り返す者達のアクションを見ていると、今作やデビルマンの極端な大衆の描写には実はかなりのリアリティがあるんじゃないか?と考え直すことになりました。1977年に今作を作った富野監督に最大限の敬意を。