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レトスぺマン さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
世間的に評価されていないのが残念ではあるが…
{netabare}本作は1992年に放送されたNG騎士ラムネ&40の続編である。
前作に関していえば打ち切り的な終わり方で終了してしまったのには玩具の売り上げや全体視聴率低迷の要因があったそうである。
そこからの続編である本作であるが、やはり前作の「好評価ながら打ち切り気味の終わり方」となってしまったことに対する雪辱の意味合いがあったのだと思う。
そのため本作は前作と同様、主人公がゲームをクリアすることで異世界へ転生をし冒険を繰り広げる物語が展開されたことに加え、あかほり氏の作品特有のギャグ、おバカ、萌えに繋がる要素。
そして前作からのキャラクターを引き続き再登場させたり、登場人物の名前を似せるような形で前作ファンでも楽しめるような仕組みが取り入れられていることが挙げられる。
いわば前作からの発展形が本作なのである。
また、前作ではどちらかといえば単純明快な楽しい冒険物語といった印象ではあったが、本作はそれにプラスするような形でドラマ性も取り入れられている。
それは、主人公ラムネードを取り囲むパフェ・カカオといった女の子キャラクターとの恋愛物語もそうだが、後半はキャラクターの犠牲を伴うストーリーが展開されたりとシリアス成分も結構強い。
これに関していえば、前作の視聴者の年齢層がそのまま上がったことを見越してある程度ストレスのある展開をしても問題ないと判断したものによると思われるが、私としては結構好きな展開ではあった。
例えば主人公の味方が犠牲になるといったまさかの展開に引き込まれるというのもあるが、味方以上に敵にも感情移入がしやすいことも大きかったのである。
それは、本作の敵であるドンジェノサイやダンディ・リップの2人コンビ。
加えてブラックラムネスといったキャラクターが大邪神アブラームに操られている存在であり、その洗脳が解けた時の「実は本来は悪いキャラクターではなかった感」が重ね重ねで現れてくる展開そのものなわけだ。
特にダンディ・リップの2人コンビは敵といえども、毎話楽しいギャグで笑わせてくれたこともあり、全体にわたってどこか憎めない感じのあるキャラクターであった。
また、ブラックラムネスに関しても初代ラムネスの悪クローン的な立ち位置ではあったが、所々で初代ラムネスの良い部分が消えていない部分が見え隠れしている様も良かったと思う。
そして、女の子キャラクターとの恋愛物語については、前作では主人公に対する「ミルク」という一人の女の子キャラクターしか出てこなかったが、
今作はパフェ・カカオの二人組。
そしてアンドロイドのチェロ・ドラム・トランペットといったキャラクターが花を添えている。
そのため、前作に比べればハーレム要素が強くこの辺りはどうしても賛否両論が出てきてしまう点でもある。
しかし、よくよく見ると各キャラクター個々の性格がはっきりしているか、いわゆる「被り」を感じる部分は一切なかった。
例を挙げれば「直情径行」のパフェに「お淑やかなのに少し変なところもある」カカオ、といった形でキャラクターが持つ性格の凹凸をうまく組み合わせている印象だ。
この辺り、下手したら女性に翻弄される主人公といった形になりそうな気もしたがそうにはならず先述の通りどの女の子キャラクターも同じくらいのレベル感で好意が持てるようになっている流れも良かったと思う。
また、第二の主人公のダ・サイダーはダジャレキャラでの宿命から寒いところもあったが、主人公ラムネードのサポート役としての立ち回りができており、「味方かつ憎めないキャラ」の組み合わせといった形でまさに本作全体を体現しているようなキャラクターであった。
さて、ここまで本作の気に入った点を書いてきたが、本サイトの全体評価を見ると今一つの結果ではある。
その理由の一つとしてはやはり「大風呂敷を広げすぎて」しまったことが挙げられるだろう。
本作において思うのは先述の通り「NG騎士ラムネ&40」の続編であるからこその発展形を目指した点にある。
だからこそ、前作とのつながりを取り入れや時系列を複雑にする・物語構成要素を多分にするといった工夫が必要になってくるわけだ。
ただし、そこからのデメリットとしてストーリーの流れがわかりにくくなったり、あるいはキャラクター個々の印象が薄くなってしまう懸念がある。
本作からもそれらは見て取ることができ、例えば初代ラムネスの物語から続く過去・未来の時間軸は少し整理しないと明確に把握しづらい仕組みになっている。
また登場人物が前作と比べて多くなりお色気要素もアップしたことから、単純寄りの冒険活劇である前作をそのまま期待した視聴者にとっては肩透かしを食らった気分になったのではないかと思われる。
しかし、そこに対しても良い部分は確かにあって、時間軸が複雑化するということはより未来を見据えた大河アニメ的なものも作れた可能性があったわけだ。
今作の主人公であるラムネードは「三代目ラムネス」として活躍するが、
その先の四代目五代目…といった形で広げることで、その時代に合わせたストーリーの無限生成ができるようになる。
それは今では叶わぬ夢とはなってしまったものの、そういった一大メディアミックスになり得るための可能性を示してくれただけでも本作は価値があると思え、
何よりも本作の「正しい意味としての続編を望む声」が今でもネットの隅から聞こえてくることが何よりの証明である。
もう一つの理由として、本作の前番組が「新世紀エヴァンゲリオン」ということだけあって、それとは正反対の物語がアニメ界のパイオニアともいえる存在の後番組で放送されてしまったことが考えられる。
エヴァを比較してしまうとやはりどうしてもインパクトとしては小さくなることに加え、
OP曲である未来アイドルも人によっては視聴を躊躇してしまう要因にはなってしまったのではないだろうか。
確かにエヴァの後番組の放送は確かに運が悪かったとも思えるが、
90年代の文化として、エヴァを「暗」としたときにあかほり氏の作品というのは「明」を意味している節がある。
2025年の現在では90年代=「暗」ばかりの作品といったイメージが強くなりがちではあるが、「明」があるからこそ「暗」が輝くのであって、その「明」は現在に続くラノベアニメや萌え系の源流とも言い換えることができるわけだ。
そのあたりは個人的にもっと注目されてもよいとは感じるし、一つの史料的な意味として本作を改めて視聴してみるのも良いのではないかと思う。{/netabare}
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