ロミオが掃除で登っていった煙突の風景は,さぞかし見晴らしがよかったと思います。
19世紀のイタリアとスイスが舞台ですが,労働力としての子どもの人身売買は当たり前の時代です。しかし世界史の教科書に載っているような子どもしか入れない炭鉱の先端で働く(命がいくつあっても足りない)よりはましかなとも思いました。
徒党を組んで少年たちが集まれるだけ,自由は与えられているという点では,世界名作劇場の中でも,子ども向きの作品ですが,大人も半ば安心して楽しめる名作の一つになっていると思います。
ただ,作品が古いので,知名度が低く,その分評価が低いのかなあと思うと残念です。もっと評価されてもよい作品だと思います。
人身売買の過酷な弊害をサブテーマにしつつ,煙突掃除仲間が,かたい信頼と友情で結ばれ,他の少年グループと勇気と知恵を出し合って争うというのが,中盤の展開です。
アルフレドとの親友の関係は,見ていて清々しく,このまま続いていったらなあと思わせます。アルフレドとロミオで主人公が二人いるような感じです。
アルフレドは毅然とした性格で国王の前でも臆せずに自分の血筋を証明します。しかし,雇い主の過酷な作業を強いられたため肺結核でで命を落としてしまいます。
一度売られたら,元の村には生きて帰れないといわれたロミオですが,帰郷してアルフレドの妹と結ばれてパッピーエンドというのがうれしい誤算です。
付けたしですが,日本を含め臓器売買や「性」の売買で,21世紀のこの世界でも人身売買が形を変えて残っているのは嘆かわしいことです。