101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
東映が手描きで表現したベリーハードなサイバー聖魔大戦!
原作チョコのおまけシールは20枚程。コミックはおちよしひこ版を購読。
アニメ『ビックリマン』シリーズはシールの裏に石版の記録の如く書き綴られた、
天使VS悪魔の戦いを映像作品用に物語として編み上げたもの。
古今東西の神話等も下敷きにした、実はかなりシリアスな聖魔大戦を、
低頭身のキャラたちによるコミカルな掛け合いも交えて、
年少の視聴者にも消化しやすく料理した点が秀逸なシリーズ。
ところがこの外伝的作品『スーパービックリマン』になると、
神話にSF要素も絡み、重厚な物語はさらに重量アップ。
旧作同様ギャグもありますが、頭身アップし、
バトルアーマーの如き理力の鎧で超戦士と化した天使と悪魔の抗争は苛烈を極め、
破壊と暴虐はエグみを増し、時に倫理の枠を大きくはみ出し、表現はグロ化し、
コミカル要素のオブラートくらいじゃ、とても包み切れるものじゃありません。
例えば {netabare} 悪魔軍に製造されたバイオミュータントの悲哀。
ハーフデビルの苦悩、裏切りなど……。{/netabare}
ニチアサタイムに子供が受け止めるにしては、厳し過ぎる展開が次々に投げつけられます。
さらに主人公ヒーローを、悉くボロ雑巾の如く痛め付ける東映の作風は、
齢10歳の主人公天使・フェニックスに対しても容赦ありません。
主人公たちが“サイバーアップ”により纏う“サイバーテクター”は、
頻繁に欠損、大破し、ズタボロ感に拍車をかけます。
そもそも戦況からして、あまりにも絶望的なスタート。
{netabare} 天使の拠点・天聖界が悪魔軍により既に陥落済な上に、
天聖界ヘッドのスーパーゼウスが天魔界ヘッドのスーパーデビルに、
物理的に取り込み済というグロテスクな描写により、
絶望感のメーターが最初から振り切れています。{/netabare}
そしてラスト……。
{netabare}苦境の連続をボロボロになって乗り越えた先の衝撃的な幕引き。
フェニックスたちはこんなに頑張ったのに、
その報いがこれかよ!と当時の私は茫然自失。
後に、この衝撃は、『スーパービックリマンチョコ』販売不振等による
コンテンツ全体の終息による、唐突感からきたものでもあると知りました。
ただスタッフによると、結末の方向性自体は、
打ち切りでも、順調でも、変えるつもりはなかったとのこと。
最終盤をもっと緻密に描けば、もと名作アニメとして語り継がれる作品になり得たのに……。
という悔恨もある一方で、詳述されたらされたで、奈落が深まる可能性もあったので、
スパッとやられて良かったのかも?とも私は考えています。{/netabare}
設定面では“サイバーアップ”の変身バンクや必殺技バンクがとにかく格好いいです♪
当時の東映はサイヤ人が超戦士へと覚醒を遂げ、
美少女戦士が月に代っておしおきするなど、変身願望が漲っていた時代。
本作でも少年少女が日曜朝から、お茶の間の目など気にせず?
熱い劇伴と共に、自分の殻を脱ぎ捨て、覚醒を遂げ、画面を躍動します。
作画面ではCGアニメ普及前夜でもあった当時、今だったらCG作画で押しまくるであろう、
ロボットくさいガチャガチャした変身シーン等のSFファンタジー世界が、
手描きで表現されているのも味わい深いです。
特に主人公フェニックスの“サイバーアップ”時、
額から配線の如きラインが伸びてきて、
装甲が構築されていくバンクが私のお気に入りです。
主題歌は主演の草尾毅さんがOP・ED共に熱唱♪
OPは高揚感が変身願望と冒険心を刺激する、
アニソン魂が迸る快作ソングに仕上がっています。
しばしばエッジが効き過ぎて、トラウマのリスクすらある本作。
私も主人公たちが傷だらけだった印象ばかり残っていますが……。
それでも確かに心に爪痕を残す。
私にとっては今でも忘れがたい大切なアニメです。