パルンだっち さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
少女のまま人生を駆け抜けた大女優の物語
この作品は引退した大女優である「千代子」が半生を振り返る。本当にたった、たったそれだけの作品なんです。
それだけの作品がなぜここまで評価されているのかというと、それは今敏名物の「現実と妄想が入り交じった世界」が目まぐるしい速さで展開されていくからでしょう。
ブラックホールのような強い引力に引き込まれるように、この作品の魅力に取り込まれていく、この映画ではそんな感覚を味わえます。
千代子は少女の頃に出会った「鍵の君」という人物に恋焦がれています。彼にまた会いたい、ただそれだけの為に彼女は女優としての道を選びます。傍から見たらそれは狂気的な愛にも思えるでしょう。けど千代子は「鍵の君」の事を想う間だけは、恋をする少女でいられたのです。
「大人にならざるを得ない」時が誰しもいつかは来ると思います。千代子はそんな世界を少女のまま駆け抜けたんです。この生き様を美しいと言わずしてなんというのでしょうか。
「つまらない」「意味不明」と思う人がいるのも理解はできます。けれど、刺さる人には一生残る傷跡のような作品だと、私は思います。
一生に一度でいいから見て欲しいです。