Witch さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
奇才・吉浦康裕→「よし!本気で売れそうなアニメ作ったろw」
【レビューNo.15】(初回登録:2023/1/8)
2008ー2009年で公開されたWebシュートアニメで全6話の作品。
(1話15分程度で最終話のみ30分)
(ストーリー)
「未来、たぶん日本“ロボット”が実用化されて久しく、“人間型ロボット”
(アンドロイド)が実用化されて間もない時代。」
主人公リクオの自宅にもアンドロイドのサミィがいて、普通にロボットとして
家事に従事していた。
ある日リクオはサミィの行動記録に不審な点があることに気づく。そんな彼女
を探ってみると、彼女はひそかに喫茶店「イヴの時間」の常連客となっていた。
この店では「人間とアンドロイドの区別しない」というルールがあり、それに
従いここでは普段は無表情なアンドロイド達が、人と交わり感情豊かな人格を
現し人間らしい振る舞いをしていた。
この光景に戸惑いつつも、この店での様々な出会いや人間とアンドロイドを取り
巻く社会情勢との狭間で、リクオはサミィとのかかわり方を見つめ直していく。
(評 価)
{netabare} ・ショート枠でのストーリー展開が秀逸
「イヴの時間」での出会いを中心に、毎話オムニバス的にテーマを扱いつつも
きちんとした積み重ねがあり、綺麗にラストへ繋がっていく。
例えば最初は(感情も豊かな)人と遜色のない人型アンドロイドと交わっていき、
違和感のないヒューマンドラマという雰囲気で話は進んでいくが、話が進むにつれ
イカにもロボットという風貌で感情表現できない旧型アンドロイドが現れる。
それでも(それまでの流れから)しっかり感情を揺さぶられるドラマが成立して・・・
ショート枠ながら、しっかり構想が練られてるなあという印象。
・近未来ながらもノスタルジーな空気感
喫茶店を舞台とすることにより、「そこには特別な時間が存在する」という演出が
作風と上手くマッチして、落ち着いて作品に没入できる。
・アニメとしての魅せ方にこだわり
吉浦康裕お得意の3DCGのメリットを生かした作画やカメラワーク、音楽など
「アニメとしていかに面白く魅せるか」
という部分もしっかり考えられるなと感じます。
登場場人物も見た目と性格・声がちゃんと一致しており、短いストーリーの中でも
しっかりキャラ立ちしている点も好印象。
のちに再編集され劇場版も公開されますが、そのキャッチコピーが「ボクラノキョリ」。
登場するアンドロイド達は、「もっと家族のために尽くしたい」「その為に家族のこと
をもっと理解したい」という思いを抱えています。
例えばサミィは「リクオにもっとおいしい珈琲を入れてあげたい」という理由から
「イヴの時間」で珈琲の入れ方を勉強していたのでした。
「ロボットは命令に忠実にあるべきだ」そう考えていたリクオは、そんな彼女の思いを
知り、何を思うのか・・・
{/netabare}
吉浦康裕は前作「ペイル・コクーン」で「商業アニメ」としてはデビューしているのですが、
この作品はまだマニアックすぎるというか・・・
そういう意味では、本作は「一般受けするようかなり寄せてきたなあ」って印象ですね。
(自分を捨て媚びているという意味ではなく、上手くバランスを取ってきたなと)
これまでの自主制作からチーム体制で臨み、初のシリーズ作品として制作された意欲作。
【追記】
「ペイル・コクーン」レビュー投稿、「商業アニメ」のくだりはそちら参照