101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.7
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
【評価辛目】MAPPA×澤野弘之氏による『ベルばら』MV集?
原作未読。映像化、舞台化作品も未見。
【物語 2.5点】
音楽アニメ志向が強い劇場アニメ化作品として割り切って見る必要性。
宝塚歌劇団の人気演目でもある『ベルばら』
歌との親和性も見出したというスタッフたちが、
挿入歌カットをどこに配置するかありきで構成した印象。
私は心情が盛り上がったシーンでMV風になる作品も、
嫌いではありませんが。
本作の場合はなんと全15曲。流石に多すぎると感じます。
そのキャスト陣が歌唱する挿入歌群も、
ミュージカルでもなくキャラソンでもない中途半端な位置づけ。
歌詞自体はキャラの心情も反映はしますが、
歌で、二人が急接近するセリフがかき消されたりするのは如何な物かと思います。
これだったら消したセリフをミュージカル風に歌った方がマシだったのでは?とも感じます。
フランス革命前後、
登場人物たちの20年に及ぶ人生を描いたという連載漫画の内容を、
一本の映画に詰め込むことは困難。
ある程度ダイジェスト感が出るのは仕方がないと事前に覚悟して私も観ました。
が、もしも挿入歌をあと10曲カットすれば、
もう少し拾えたセリフがあったのではないかとの悔恨も残ります。
重要そうなセリフを歌で消しておきながら、
恋とはイカロスの如く突然舞い降りてくる云々の件などは、
回想含めて3回繰り返したりもする。
本作を広義の劇場版総集編と捉えれば、無難にまとめてくれれば物語3.0の基準点。
実際、オスカル&アンドレはなぜ、半世紀語り継がれる神カップルなのかを示したクライマックスなど、感動的なシーンもありましたが。
私はセリフの取捨バランス含めて脚本はこれで良かったのか疑問が残ります。
私はMAPPAも澤野氏も好きなので、
こういうアフィ◯スまとめサイトみたいな煽り気味なレビュータイトルで批判するのも心苦しいですが。
物語は基準点割れの2.5点とさせて頂きます。
【作画 4.5点】
アニメーション制作・MAPPA
CGも絡めて背景美術と一体となった、
フランス革命での群衆蜂起、バトルシーンなどで持ち味を発揮。
現在も少数派ポジションである少女漫画原作アニメを観ていると、
絵が古い?と思うこともしばしば。
ですが、本作は、花びらフレームの中で繚乱する、長~いまつ毛のキラキラお目々の美男美女など、
少女漫画の伝統芸を多用しながら、技術力で、古さを感じさせない映像美を実現。
結局、革命も作画も兵力が物を言うのだろうなと再認識。
上記で私が邪険にしたアニメMV風のカットですが、
利点は、作中、数度に亘る濡れ場を抽象化することで、
映倫区分G(全年齢鑑賞OK)を勝ち取ったこと。
それでいて二人の想いが溶け合うイメージ映像は芸術点が高く、
例えば{netabare} オスカル&アンドレの一夜{/netabare} など、下手に裸を描かれるより余程エロティックだと感じます。
連載50周年の節目も終え、CM等での露出も多い『ベルばら』
キャラが「ガーン!」となった際の白目剥いた表情がネタとして多用されている感がありますがw
本作では片手で数える程しか、白目剥いてませんでした。
ま、そんなしょっちゅう、卒倒していたら身が保ちませんよねw
【キャラ 3.5点】
主人公の男装麗人で近衛連隊長のオスカル。
オーストリアから王妃として嫁いできたマリー・アントワネットを、
身命を賭して守ると誓った前半。
後半は、オスカルが“第三身分”の平民たちの心情を知り、ルソーの書物などで啓蒙。
捨てたはずの自身の乙女心に気づくなど、
アントワネットへの忠誠や、己の生き様に対する動揺で葛藤する様を描く。
オスカルの心情については描写量もまずまずで、伝わって来ました。
一方、アントワネットやアンドレについては要点は抑えたものの、
歌に尺を取られた感も強く、やや掘り下げ不足との渇望が残ります。
アンドレが{netabare} 心中したくなる程、{/netabare} オスカルを想った理由や、
アントワネットが{netabare} ルイ16世の国王即位が決まって抱き合って涙したのは、
どういう不安からなのか?{/netabare} 辺りは、
本作の描写だけ見ても確信しきれない部分があります。
私の推しキャラはスウェーデン貴族のフェルゼン。
罪な男は見ていて背徳感があって楽しいですが、
こちらも掘り下げ不足感が残りました。
宝塚歌劇団の「フェルゼン編」の映像でも視聴して補足しようか?
という欲求も湧いて来る今日この頃です。
【声優 4.0点】
挿入歌の歌唱もこなせるキャストを、概ね声優陣からオーディション選出。
主演オスカル役に沢城 みゆきさんが選出されたのが、
『ベルばら』未体験だった私が本作を鑑賞した最大の理由。
やはり中性的なボイスを操るみゆきちの妙演はグッと来ます。
制作エピソードで一番胸熱だったのが数少ない俳優タレントキャストとなった、
ナレーション役の黒木 瞳さん。
本企画の話を聞いて、ガヤの一言でも良いから出演させて欲しいと熱望して出演。
革命に向けて、民衆の怒りが着実に蓄積していく歴史的経緯を、
落ち着いたナレーションでナビゲートしてくれました。
他にもアントワネット役の平野 綾さんの高潔ボイスなど、
豪華声優陣の歌劇スキルが花開く中、
ルイ16世役で落合 福嗣さんがポッチャリ枠で潜り込んでいたのがホッコリしました。
ルイ16世が暗愚な亡国の王ではなく、不器用だけど勉強熱心で心優しい青少年として、
描写、演技されていた点は好感しました。
【音楽 4.0点】
劇伴は澤野弘之氏が盟友・KOHTA YAMAMOTO氏と、お馴染みの共同制作。
貴族社会の仮面舞踏会など、優雅なストリングスもアレンジするものの、
結局、フランス革命の18世紀末だろうが、宇宙世紀だろうが、
良くも悪くも澤野節に染まってしまう劇薬ぶりは相変わらず。
私は澤野サウンドをヘビロテしていても苦痛にならない人間ですが、
そんな私が聴いても、大挙して押し寄せる上述の挿入歌群も含めて、
ちょっとしつこいかもと感じるくらいなので(苦笑)
澤野氏に食傷気味の方、アレルギーのある方は、回れ右を推奨します。
ED主題歌は絢香「Versailles - ベルサイユ -」
激動のフランス革命と、“ばら”たちの人生、
そして澤野無双を乗り切った後の壮大なバラード。
ホッとしてしまうこの感情は、良いことなのか悪いことなのか(苦笑)