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「アリスとテレスのまぼろし工場(アニメ映画)」

総合得点
72.8
感想・評価
73
棚に入れた
215
ランキング
1096
★★★★☆ 3.9 (73)
物語
3.8
作画
4.4
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.7

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アリスとテレスのまぼろし工場の感想・評価はどうでしたか?

ネタバレ

メガマインド さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 3.0 キャラ : 1.5 状態:----

セカイ系的な閉塞感

陰鬱とした田舎から抜け出したいけど、抜け出せないそんなはがゆさを

この作品から感じさせつつ、そこにある甘酸っぱい青春模様を映し出す。

スポーツして恋愛して、

青春というのは何もキラキラしたものばかりではない。





周りが工場で囲まれてて、親の仕事を継がねばならない。

閉塞感というのをこの作品から感じ取れました。

投稿 : 2024/12/06
閲覧 : 26
サンキュー:

3

ネタバレ

nas さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

エンタメ感高い岡田麿里作品

これは良いわ。今年のベストアニメかもしれん。ここのところ岡田麿里作品にハマってなかったからスルーするつもりだったんだけど傑作と評判良いから見てみたら確かにそんな感じだわこれは、なんだろうな、今までで1番湿度高いのに爽やかさがある。世界設定もありそうであんまりないと言うか、結着の付け方がかなり好み。基本的には今までと同じ作風に乗ってるんだけどエンタメ感が1番高いのかな、極限状態だからかジメッとした要素が気持ちよくなってて作風にめちゃくちゃあった世界設定だったな

投稿 : 2023/11/18
閲覧 : 85
サンキュー:

5

ネタバレ

waon.n さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

【傑作】1,私の中のフィルター 2,美しく残酷な世界3,小説を読んで

【First】

 岡田磨里節炸裂って感じですね。
 本当に優秀な脚本家さん。監督としては映画化2作品目になります。
 監督との兼業になり2作目ということで、演出の仕方もより洗練されてました。『さよ朝』よりも一段上の表現力になっていると思います。

 どんな絵コンテ修正入れてるのか私気になります!

 まだ観てない方はとりあえずレビュー読む前に映画館へダッシュを推奨します。

【Synopsis】

 とある工場町その名を見伏町。そこには大きな製鉄所があり、かつてご神体でもあった山を切り崩しながら成り立っている町である時、爆発が起きた。
 その日から、町は人々は成長を止める。
 成長停止の原因は山の神様の怒りとされ、鎮まるまれば元に戻れるという希望が人々を正気に繋ぎとめていた。
 そんな先の見えない状態が何年も続いた頃。
 この停まった世界から抜け出したい主人公はある少女に出会う。
 その子は町で唯一成長しする。
 つまり外から来た少女だった。

【Review】

 レビュータイトルの私の中のフィルターについてそこから書いてみようと思います。

1、私の中のフィルター

●リアルの事件や災害がもたらしたもの

 9.11後に映画中で現代以降の戦争または紛争が描かれればアメリカ人にとっては9.11以前と以後において、フィルターが入るのと同じように。
 日本人には爆発事故があれば、3.11関東大震災からなる福島第一原発の事故というフィルターを通してみてしまう。
 いや、日本人という主語を大きくしなくても良い。私の中にはそのフィルターがしっかりと入っていて、映画の意図とは関係なくあってしまうものなのだろうと意識させられてしまった作品だった。

 これまで、アニメでは『バブル』『すずめの戸締り』など、そもそもモチーフとしてもしくは、メタファーとして、もしくはテーマとして入っているアニメを観てきましたが、言ってしまえば分かりやすく、そうつくってるんじゃないの? って意図を感じ取れていました。

 しかし、今回は少し違っていて岡田磨里さんだからそこを突くことはしてこないだろうと思っていたし、本当にそんな意図はない可能性の方が高い。
 なので、映画というコンテンツが発するモノではなく、私の中にあって、あってしかるべきものとして存在してしまっているから色眼鏡で見てしまっているのだと気づかされてしまった。
 じゃあどの辺で感じ取ったの? って話をしてみると、冒頭で工場が爆発するシーン。そして、製鉄所がどうなったのか、町がどうなったのかを見せつけられた時。
 時間が止まってしまった場所。
 海岸線。
 あの後、石巻市、名取市、などに行きあの日から止まってしまった風景を見た。もしあの時、時間を切り取って永劫続く日常として、生きていたらどうなのか…。想像してしまう。

 そしてそんな中にいるかもしれない、本作の主人公は外へと希望を観る。


●いくつかの作品でみられる閉塞感

 場所に囚われる。時間に囚われる。どちらも岡田さんの作人はしばしばこういったモチーフが顔を出します。
 『花咲くいろは』では旅館に。
 『あの花』ではめんまがいた秩父という町に。また、めんまがいた時代に。それ故に引きこもりになった。
 『空の青さを知る人よ』でも過去と現在、そこから脱出できない人を描いている。
 そんな中から逆境を乗り越え、成長し―――だったり、一歩踏み出す勇気を―――みたいな雰囲気でした。

 今回の作品にもその閉塞感は重苦しい鈍色の空模様として演出され、物語のテーマへ繋がっているように感じました。


2、美しく残酷な世界

●テーマ、テーゼはなんだったのだろうかと反芻してみる。

 【時は止まれども変化は止められず】
 【停滞の中での変化】

 全体的に不条理が街全体を覆っています。
 いつまでも雪が降り続きながら。

 事故は誰の身にも突然やってくる。
 言ってしまえば【不幸】が降ってくる。
 そこにちょっと待って! っていう感じで、時間だけががストップしてしまった。
 誰にでも、同じ毎日の繰り返しで飽き飽きだ。こんな退屈な毎日から抜け出したい。などと嘯く青春時代を過ごした記憶がある、もしくは観たことがあるんじゃないだろうか。
 そんな鬱屈とした毎日は子供と大人で大きく感覚が異なる。そしてそこを描いている点は面白かった。
 日々成長を続ける10~20代とこれから歳を取って肉体的には老化していく30~上の世代。現状を維持したい大人との意識の相違は次第に対立へ向かっていくような気さえしてくる。

 見ている時の私はどっちのスタンスだったのだろうか。
 …いや、どちらの気持ちも分かってしまうなというのが正直な感想で、子供の頃の感覚も思い出せるし、現状を鑑みるとこのまま長い間生きていけるということにも惹かれる。
 物語自体は子供からの視点で進んでいくけれど、佐上のようなキャラクターが大人目線での欲求をストレート表現してくれたので、深堀りをする手間を省く役割をしてくれたのは上手いなと思いました。キャラクターとしても強いし面白いアクセントになったのは間違いない。

 若者の変化は身体の変化だけではない、精神的な変化でこれは止めることができない。
 そんな主人公とヒロインの二人に岡田さんがぶつける悪意は二人の幸せになるはずだった未来。もうたどり着くことのできない未来を見せる。
 二人はそこですれ違う。
〈あれは、今の私達の未来じゃない。だからこの子も私たちの子供じゃない〉
 そう、停滞した場所に居続けるという選択はつまり、子供は作れない。だからあの子は生まれない。とてつもなくツライ現実。
 でも本能では自分の子供だと感じてしまう。
 強烈な不条理で私は震えた。

 岡田磨里さんの脚本にはキャラクターに対して容赦なく悪意をぶつけることができる力がある。これがとてつもない魅力で観ていてツラいけど観てしまう。
【心に傷をつけられる→痛い→好き→痛い→心に傷がついた】
 逆説的に痛いと感じたものはもしかしたら好きの裏返しなのでは? という問いにも聞こえてくるからまた面白い。
 どんなに否定しても、愛情の裏返しに見えてしまうから睦実っていうキャラクターはツラそうに見えてしまう。

 テーマに対して、テーゼはこっちなのかもしれないなと、こうやって振り返ってみて思う。


●変化しない活動記録

 元の時間の動きに戻った時の為に変化しないように記録を付けるっていうのも面白かった。
 変わってないと安心する人、変わってしまったのに同じことを書かなければと思ってしまう人、欺瞞だと最初から書かない人。それぞれだろう。
 主人公は書かなかった。でもなぜ書かなかったのか、書けなかったのか。変化したいという欲求があったから。
 書いてしまうことで枠にハマるではないけれど、そこに収まってしまう怖さみたいなものを感じていたのかもしれない。
 ――自伝小説家トーマス・ウルフの原稿は文章が多すぎた為、編集者のパーキンズが編集者として校正して文章を短くしたという話を本で読んだ。ウルフは全てを描写したかったがこれでも削っている、これ以上は減らせないと二人は格闘したという――文章に残すというのはそういうことなのかもしれない。規定されてしまうことと一体なのだろう。
 彼は絵を描くのが好きだ。これも一つの表現を規定している物差しではあるけれど、決められた文章を書くのと違う点がある。
 中動的であり、且つ能動的である、そして上手くなるという変化を感じることができる。
 それだけでなく、居なくなった父と自分を繋ぐものとしても機能している。
 これだけマクガフィンとして優秀なこれを趣味に選んだのはスゴイ。
 あそこは泣けちゃうポイントだったよ本当に…。

●一番印象に残っているシーン

 さて、この間を揺れ動くすっごい生々しく岡田磨里さんのいい意味で悪意を観て胸が痛くなったキャラがいる

 それは妊婦の後ろ姿だ。
 とにかく動きが重い。
 こうなる前は生まれてくる日を夢想しない日はなかっただろう。
 しかし、停滞した今ずっとお腹のなかにいて生きているのを感じ続けるしかない。生まれることを夢見続ける。

 「希望とは目覚めている人間が見る夢である」

 調べたら出てきたアリストテレスの名言らしいけれど、停滞したこの世界では、希望は残酷なだけなんだ。
 こんな皮肉の効いた話はないよ。

 停滞した世界はかくも残酷なものなのか…。
 仙波や園部が耐えられなくなるのも分かる。
 となると、あれは救済だったのか?

3【追記】小説を読んで

 映画の公開より先んじて出版されていたみたいで驚きました。
 ひび割れの描写がああなったのはイメージボードを作成した美術監督さんが素晴らしい仕事をしたんだなって改めて感じました。

 また、タイトルにある『アリスとテレス」ですが、本文でちゃんと書いてありました。
 印象に残っているシーンで書いた彼の名言が引用されていました。
 そうすると、じゃあなんでアリストテレスではなくアリスとテレスなのか…。
 恐らくは二つの世界、希望の世界と夢の世界が隔たれていることの隠喩なのではないか、などと考えました。

 映画では描かれていたのか確認できていなかったので、Blu-ray買ったら確認したいなと思っている事がひとつあって。
 それは、小説版では妊婦さんが現実の世界を観た時に、子供と仲良くしている自分を見るというもの。
 そして泣き崩れる。
 この涙をどっちと捉えるのか…。
 どっちとはつまり、現実でちゃんと産まれてくれたという事の安堵や顔を見れた嬉しさによるものなのか、それが今後自分にはおとずれる事がない事への絶望の涙なのか。
 もしくは、嬉しいって感情の後に、絶望の波が押し寄せてきたのかこの心情を想像しながら読んでいて非常に胸が苦しくなった。

 正宗の父の日記を読むシーンがあった。
 ここにアリストテレスの言葉が出てくるのだけれど、映画では分からなかったが、居なくなった大人の象徴として出てくる父は希望や可能性という言葉を使う。
 希望を見る資格のある少女を犠牲に―――
 大人からの懺悔のように聞こえる。
 そして、自分も変わりたかった、だけど無理だった。でも、正宗お前はちゃんと変わっている。
 それを認めてもらえて、褒めてもらえて嬉しくないはずがない。
 変わっていく決断をするには充分な動機となる。例え今の世界を犠牲にしても。
 反対の面からみると悪役の立ち回りかもしれない。でも彼の視点で物語が進展しているので、そうはならない。
 むしろ、世界の存続を願って行動する佐上は主人公だったのかもしれない。見終わってから考えて俯瞰した時にこの捻りは面白く感じる。

 変えられない大人達の懺悔をここに見た気がした。。。

【おわりに】

 物語の順序に合わせてレビューを書いていないので、読みづらそうだななんて思いつつ書いてみました。
 主人公とダブルヒロインの恋愛模様については敢えて書くこともないかなって思ってしまったので割愛しました。

 しかし、違う世界だとしても近親者での色恋を三角関係にしちゃうなんて本当に恐ろしいことを考えなさる(笑)

 映像がどうだとかっていうのもほとんどレビューしてないけれど、いやはや頑張ってらっしゃる。
 アニメであんなにエロいキスシーンを描いちゃったらもう…Blu-ray買います! ヘビロテだ(使い方違うし死語感ある)。

 現実とのリンクを断ち切れずに視聴をする事になってしまったけれど、そうではない人だって、自分の人生という経験値からくるフィルターも同じなわけで特別なことではないし、あるから良いとか悪いとかそういうものでもない。超自然的にただあるだけ。千利休リスペクトって感じ?(知らんけど)
 
 最後に副監督の平松さんだと思うんだけれど、鏡の構図はメチャクチャ面白かったし、不思議で不穏で何とも言えない演出でした。
 監督と副監督の意見交換がどういった形で進んでいったのか興味を引かれる部分がありますね。

 何やら小説版も出てるじゃないですか!
 先に読んでいたらどんな楽しみ方になっていただろうかな。
 もし先に小説読んだ方がレビューしていたら、レビュー読みに行きたいです。教えてもらえたら嬉しいです。

 終わりにが長い…ってことで終わります。
 では、よしなに。

投稿 : 2023/11/03
閲覧 : 108
サンキュー:

10

ネタバレ

たわし(爆豪) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

SF好きとしては物足りない

原作、脚本も書いている岡田麿里監督の第二作目であり、恐らくは「さよならの朝に約束の花をかざろう」の流れからするともう一作を作ることで、「SF三部作」として完成するんじゃないだろうかと勝手に妄想しておりますが。。

本作「アリスとテレスのまぼろし工場」は、少女漫画より更に1960年代のSFちっくな作品であり、去年に批評した荒木哲郎監督の「バブル」と同じく、影響を受けたであろうはジェームズ・G・バラードの「結晶世界」でしょう。

今回も「さよならの朝に」同様、人の「感情」や「情念」が世界に影響をもたらす。。。そう「セカイ系」の典型的な作品ですが、今回もまたセカイを覆う「心機狼」なる煙によって「幻の世界」と「現実の世界」が二手に分かれて行き来をするという感じの内容になっています。

ただ、岡田真里さんはそこに少女漫画的な恋愛要素や幼少期の思い出を語りだすので、「自小説」の側面もあったりとSFでありながら他構造からなる複雑な内容になっています。

なので、岡田麿里さんの「思い出」(幼児期の体験や恋愛経験)に感情移入できる人は話にぐっと引き寄せられる内容になっていますが、新海誠監督の作品のように分かりやすい恋愛要素はないので、万人に受ける内容かと聞かれると微妙な気がします。

かと言って、SF的には結末が、もともと脚本の専門家だったというには少々お粗末だと感じました。

「現実」と「幻」というのは、グレアムバラードからすると「生」と「死」の世界であり、そこは共通感覚ですが、岡田真里さんはあくまで「アニメ脚本」として捉えるあまり結末がどうしても分かりやすく納得のいくものとして構成されていて、グレアムバラードような「幻こそ救い」であり「死」こそ「美しい」という感覚が、恐らくは彼女自身もわかっているはずなのに描けていません。

「死」は残酷だという固定概念ではなく、「終わってしまう世界」こそ儚く美しいという。。SFがもたらす「センスオブワンダー」がちょっと抜けてる気がします。

次回作こそSFとしても娯楽としても傑作ができることを期待しています。まだまだ伸び代がある監督だと思います。

投稿 : 2023/10/07
閲覧 : 245
サンキュー:

7

ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

昭和テイスト

いえ、作品の価値を蔑ろにするものではありません。
そんな悪い意味ではなく、ちょっと感じるところがあったからです。

わたしは、鑑賞から大きなインパクトを受けたので、本当のところはネタバレありで書きたいんです。

でも、ストーリーもキャラ相関も劇伴もEDも、ぜんぶ前情報なしで、劇場で感じていただきたいなと思います。

つまり、「すべてがすごく良かった」と申し上げたいんです。



一つだけ。
(もちろん、本作のストーリーには直接関わりのないことです)

作品に「神隠し」めいたシーンが演出されています。
私は、そのシーンに "横田めぐみさん" が思い浮かびました。

北朝鮮に拉致され、未だ帰国できないでいる彼女が拉致されたのは、中学1年生、わずか13歳です。

昭和52年11月15日。
あの日から、横田さんご家族の世界が一変し、時間も止まったままです。



世界を変えるのは、心の痛みが伴います。

命が存在することさえ危ぶまれる世界ならなおのこと。

だから、勇気を振り絞って、情動を昂ぶらせて、声を叫ばせて、未来に拘らなければなりません。

わたしは、国民が一つになる、ならねばならぬ痛みだと信じています。

本作に昭和テイストが感じられたのは、日本人拉致という国家を揺るがす大事件への怒りと、現状の閉塞感からだったのかもしれません。



作品と一体となるのが、中島みゆきさんのEDです。

目を閉じて、耳をそばだて、イメージの余韻に深く浸ることができるEDでした。

岡田磨里氏が思い切ってオファーし、中島みゆきさんが快諾されたという逸話付きです。
(なぜだか曲調がほんのり昭和テイスト気味に感じられたのはわたしだけ?)


また、本作は、全編にわたり、岡田氏200%の入れ込みとのこと。(さよ朝は100%だそうです)
なので、シナリオはもちろんのこと、声優さん、映像密度、陰影の表現性なども、何も言うことはありません。

ファンの方にはきっと満足できるクオリティーです。
そうでもない方には、いろいろな切り取り方やアプローチで楽しめると思います。

私は、おすすめです。

{netabare}


〜 余韻に想う 〜


戦わせるのは、母と娘とに錯綜する恋の落としどころ。
分かち合ったのは、未練を断ち切るために絞り出す愛の言霊。

求めていたのは、凍てついた時空を溶かすほどの熱いキス。
立ち向かったのは、まぼろしのままに身を伏せていく覚悟。

心の拠りどころをまぼろしの過去に求めた少女と、身の置きどころを未来へと送り出す少女の物語。

わたしはそう受け止めている。



閉塞に囲われ、虚言に支配された見伏(みふせ)の町。
曇天に覆われ、心音さえ弱まったさびれきった町。

時間は歩みを止め、空間は窓を閉ざしている。
心の痛みだけを塗りこめて。

正宗は父を失い、睦実は母を亡くした。
幼い女の子は名前もないままに、わだかまりだけが胸に取り残される。

亡失に縛られ、焦燥に取り憑かれた彼ら。
それでも、その心音は刻々と思春期に身を寄せていく。



睦実が「私には六つの罪があるから」と自嘲したことで、正宗が「お前よりも罪が一つ少ない」と言い立てた少女の名前。
それが五美(いつみ)だった。

正宗は、五美の生成りのままの幼さや、あどけない屈託のなさから、それを感じ取ったのかも知れない。

あるいは、睦実のあざとい挑発に憤りながら、同罪感に苛まれたせいなのかも知れない。

正宗と睦実の魂から欠け落ちてしまったものを、五美に見て取ったからかも知れない。

ただ一人だけ成長を続ける五美の生々しいそれを。



五美。
それは人間に備わっている五つの感性を言い表わしているように感じる。
見ること、聞くこと、嗅ぐこと、口にすること、全身を動かすことで爆発する魂の歓喜と衝動。

本音が語れない、本心を聞けない、美味しさを感じない、未来が見通せない、好きな気持ちにも触れられない。
これらの抑制された感情は、正宗と睦実の五感を否定するものだ。

この対比こそ、まぼろしの世界に蔓延った得体の知れない闇ルールの正体。
それを打ち破るのが、五美の真っ直ぐな魂に触れた正宗と睦実の恋への気づきである。

やがてそれは、五美を閉じ込めてしまった{netabare} 沙希 {/netabare}の気持ちを激しく揺さぶっていく。



沙希(五美)は、正宗と睦実を、恋に引き合わせるため、愛を高めてほしいがために、特異な仮想空間を創り出したのではないか。

時間を歪ませたのも、家族との絆を深く結びつけたかった、そのために何度でもやり直しをしたかったと捉えると、すんなりと納得できてしまう。

いいえ、本当は、正宗と睦実の本心が、そうしたかったし、そうなりたかったのかもとさえ思えてならない。

恋は、時代を勝ちぬく強さがなくてはならない。
愛は、未来を育んでいく粘りがなければならない。

その結晶が、五美を沙希として、現実へと送り出す二人の覚悟につながるのだ。
五美の名をいだいて、まぼろしの町に消えていくふたりを勇気づけるのだ。



生きていると、たまらなく嬉しいことや、逆に、どうにもならない気持ちに出くわすことがある。

沙希(五美)にとっては、盆祭りの屋台に見つけた "ハッカパイプ" がそのタイミングだった。
ここが、本作の入り口で、核心になっている。

神隠しは、あの花の "かくれんぼ" をモチーフにしているのだろう。
沙希は、心を隠し、体を隠し、現実の世界さえ隠して、自我のなかにエスケープしたのだ。

閉ざされた沙希の五感が、まぼろしの町を作り出し、からっぽの身体を成長させ、怪しげな神機狼を営ませている。
正宗と睦実に、五美を世話させ、裕子を消してでも、得たかった願いが、心の奥底に隠されてあるのだ。



本作には、母の姿が二人提示される。
ひとりは、まぼろしの世界に夫を亡くした正宗の母。
もうひとりは、現実の生活に子どもを失くした睦実である。

少年に恋した少女も提示される。
まぼろしに創り出した正宗に恋する五美。
その正宗に恋心をぶつける睦実と裕子である。

複雑に行き交う人の情念の着地点はどこなのだろう。
それは叶うことのなかった恋慕を、失恋として昇華した、ただ一人の少女の微笑みとして、終幕に見て取れる。



沙希と五美は、岡田麿里が創作した、岡田麿里その人のようにも見える。
子と親の生き方を問わずにはいられない彼女の一丁目一番地とも言えそうだ。

脚本家としての彼女のコンセプトは、歌い手としての中島みゆきに手渡される。
子どもが親にいだくセンシティブな感情は、成長するにつれて柔らかな記憶へと書き換えられる。

全ての旅の軌跡は、おぼろに色あせ、まぼろしのように昔日に霞づかせる。
しかし、まぼろしはまぼろしのままに薄れていっても、愛の心音は未来を鮮やかに色づけるのだ。

そう。
新しいスタートラインに向かい立つ者には、そのバトンが手渡されていくのだ。

時間の撚り糸は、クリエイターの意思によって束ねられ、その結びまで未知の光景を織り上げていくのだろう。

先人から引き継がれたDNAを温めながら、色なす未来への航路を見つけ、それを体現していく二人の女傑を思うと、たまらなくわたしは嬉しくなるのです。

(敬称は省略させていただきました)。
{/netabare}

投稿 : 2023/10/05
閲覧 : 479
サンキュー:

18

ネタバレ

Tenjin さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

世界観の説明が足らない

岡田さんがメインスタッフの作品は見たことがなくて、この映画の予備知識も入れずに見た。

思ったよりは見られたというか、苦手な部分はあまりなかった。単なる青春物語かと思ってたら、オカルト?要素が入ってきたのはちょっと驚いたが。

そのオカルト要素の説明がほとんどないのが分からなさの原因かな。一応、物語としては永遠に変わらない世界という問題も解決するし、主役二人の恋愛も収まるところに収まってめでたしめでたしではあるが、結局、しんきろうは何だったのかとかヒビは何だったのか、というあたりが解明されないままなので、スッキリしないところは残る。

キャラクターは全員役どころがはっきりしていて過不足ない使い方ができている。ボケてたおじいさんが電車を運転したりとか。千波くんと園部さんはぱっとしない見かけから予想される案の定な消され方で気の毒だけど。

ヒロインの睦美さんは情緒不安定すぎてそんなに好きになれなかった。いかにも女の子らしいとも言えるが。主人公の正宗くんは少しひねたところのある思春期少年という感じで割と普通のキャラかな。

個人的には佐上のお父さんが完全にピエロだけど好きかも。間違った認識で突っ走ってしまったけど、悪意はなさそうだし。

作品のテーマを考えるなら、生きることは色んな感情や出会いを経験することであり、それは時には痛みを伴うものでもあるけど、前に進もうという感じだと思うけど、それが何かと恋愛方面に帰結しがちなのが多少引っかかるところではある。そこにばかり焦点が当たるとスケールが小さな話になってしまうような気がして。まあ、若い人たちが中心の話だし、個人の好みなのかもしれないが。

投稿 : 2023/10/03
閲覧 : 98
サンキュー:

3

ネタバレ

ゆん♪ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

廃工場のラストシーンが好き。

MAPPAさん、さすがの背景シーン。
工場群の描写は素敵でした。特にラストエンドロールの光が刻々と移って影が変化していくシーンが好き(いきなりラストから…^^;)

っていうか、冒頭工場の爆発シーンから、時間が止まった町の設定で、あ~この町の住人は死んじゃったのかなぁって思ったんだけど、いつみちゃんが出てきてむつみとそっくりとか言ったあたりから、もしやこの子はこの二人の…


キャラもみんな可愛かったんだけど、正宗のお父さんとおじさんが見分けつかなくて「あれ?父…?おじ?」ってなった(寝てたのかもw)

DJに憧れて焼失した少年が実は冒頭からずっと流れてるラジオのDJの人だったらいいなぁって思いました。

いつみが二人の子供ならこれは並行世界(平行?)の話なんだろうなぁ。


雰囲気映画…だったかもしれない。

もう一回観たらまた違う感想になるかな~。1回観て「?」の部分の答え合わせができるだろうから。

情報処理の追いつかない脳が辛い(><;)

投稿 : 2023/10/03
閲覧 : 83
サンキュー:

7

ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

未来が無くても愛は尊し、これぞセカイ系の神髄。マリー節濃厚な割には割と爽やかなラブコメだった

「さよならの朝に約束の花をかざろう」に続く、岡田麿里監督の二作目の劇場作品。
時間が停滞してる?閉鎖空間?の鉄工所都市を舞台に、閉塞感や情動抱えた主人公ヒロインのセカイ系ラブロマンスな感じ。

【良い点】
世界観が面白い。
過去作だと「ゼーガペイン」とか「グリッドマン」彷彿とするが、主人公たち以外の街の住人全員がセカイの仕組み理解しているケースは珍しい。
寂れた鉄工城下町の(多分)昭和~平成初期ぽい?郷愁と相まって、時が停滞している世界観に引き込まれた。
また、この世界観を出し惜しみすることなく、序盤から家族との会話劇などで丁寧に視聴者に開示、セカイの秘密に過度にのめり込むよりも、少年少女のドラマに注力していた。
この手の過去作と比較して、良くも悪くもドラマ重視。
次第に明かされるセカイの真相や、綻び破滅が近付いていく予感を丁寧に描写、ドラマを飽きさせなかった。

寂れた時の停滞した街を舞台に、中学生の行き場の無い鬱憤…からの、面倒くさそうでいて結構素直なラブコメが良かった。
ヒロインはかなりマリー節の効いた拗らせ女子な割に結構可愛く見える、これは世界観をドラマの舞台と割り切った作劇と、三角関係の一方の軸が幼女で対抗軸になっていない故に、ドロドロしそうでいて意外とドロドロを回避していた。
次第に明かされるセカイの真相を追う過程で、逃れられぬ儚い関係性と結末が提示されている故に、ドロドロするよりもセカイ系の真骨頂な美しいラブロマンスに昇華したのが上手い。
破滅が不可避な状況でなお強い絆で結ばれる少年少女、これぞセカイ系ラブコメの真骨頂。
ラスト、主人公ヒロインがどうなったかの過程は開示されないが、現実世界で成長した娘ちゃんが鉄工所跡を訪れるシーンの繊細な機微から、多くを語らずとも美しい物語だった良き余韻残した。

ヒロインが(実は実の娘?)に対して恋敵として容赦しない姿勢は流石はマリー作品。
娘ちゃんを現実世界に送り出すシーンでの「未来はあなたのもの、けれど彼は私が貰うッ!」はゾクゾクした。
マリー節炸裂の名場面だけど、セカイ系純愛ドラマとして美しい故に、ドロドロも綺麗に思える不思議。
例えセカイが滅びても愛は勝つ!これぞセカイ系ラブコメの神髄であり、本作は見事にそれを体現していた。

本作のテーマは複数あり、「ツァラトゥストラはかく語りき」をモチーフに宮崎駿作品「君たちはどう生きるか」以上にどう生きるかを問うて見せたり、
たとえ滅びが不可避でも生きるんだ的な意志も素晴らしい。
主人公ヒロインの選択は「放課後のプレアデス」の謎の少年や、近年だと「サニーボーイ」も少し彷彿、未来の有無に関わらず、選択する意志の尊さ感じる。

マリー作品の割に不快なキャラが少ない点も良い。
親との関係がそこそこ良好だったり(けど母娘の緊張感はやはり凄まじいが)ちゃんと愛はあるのでかなりマシな方。
何気にカルト教祖?も面白いキャラで憎めなかった。
悪役ではあるがセカイの仕組みを鑑みて維持を目指した男、主人公の父が「あいつが正しかった」と認めた通りだったり、主人公父との拗れた友情ドラマも良かった。
周囲のキャラが特異な世界観で精一杯生きる生き様を見せており、彼らの存在もセカイの魅力に貢献していた。

作画は寂れた工業都市と時間停滞したセカイの不気味さが伝わる良作画。
声優陣は久野美咲氏は流石のプロ幼女、上田麗奈氏のマリー節との相性の良さ。
他には教祖役の佐藤せつじ氏も良かった。ガノタ的にはターンAのジョセフしか知らないけれど、大塚芳忠氏を彷彿とさせた。

主題歌が中島みゆきソングで素晴らしい良曲。
きちんと作品の主題を表現して心に響く。主題歌はかくあるべし。

【悪い点】
セカイ系ロマンスが良かった一方、もう一方のどう生きるか方向での作劇がやや浅かった。
停滞を望まず変化する者は消滅する(エンジェルビーツの成仏を彷彿)、主人公も未来が無いセカイに絶望しながら成長ドラマとこれは良かったが、
そこからセカイ系ロマンスに持っていくのが矛盾を少し感じる。
丁寧に見ると心情の変化はちゃんと描かれているんだけど、背反するテーマを欲張り過ぎた感も。
尺不足なので、できればセカイ系ラブロマンスに絞ってほしかった。

主人公と娘ちゃんの交流とロマンスが今一つ。
感情表現が未熟な野生児的幼女では、三角ラブコメの一方の軸にはなりづらなった。
そこは過度にドロドロしない良い点でもある。

【総合評価】9~8点
マリー節でセカイ系をやればこうなると見せてくれた。完成度も高い。
賛否ありそうだけど自分は大好き、前作母子物よりも好みだった。
自分はセカイ系全般が大好きなので。
評価は「とても良い」

奇しくも同年の「君たちはどう生きるか」と重なる要素が多いけれど、本作の方がドラマやテーマが分かり易かった。

投稿 : 2023/09/28
閲覧 : 88
サンキュー:

6

ネタバレ

さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

私は現実を知りすぎてしまった

不気味の谷と呼ばれる現象がある。
人型のものが実写に近づいていくとある一点で好感度が極端に下がる現象なのだが、今回私がこの映画を見て感じたことの一つにその現象が絡んでいたのではないかと思う。
私が岡田麿里さんを知ったのはあの花のころだったと思うが、性に対する感情の発露の仕方が他に例を見なかったし、勢いのある展開にのめり込んだのだ。
あの花は今でも名作だと思っているが、あの花に引かれたのは、秩父が舞台だったことも起因していた。
秩父近隣に住む私にはそれなりに身近な場所であったため、親近感を感じずにはいられなかった。
あの花の聖地めぐりもしたし(といっても再確認の意味合いが強い場所ばかりだった)、秩父で行われた劇場イベントにも行った。
それから時は立ってちちてつ民から西武鉄道民へとジョブチェンジした私は、山登りが趣味の一つとなり方、奥多摩や秩父、丹沢を中心に各所を回るようになった。
それがここ数年アニメ視聴に影響を及ぼすようになっている。
日本とりわけ関東が舞台のものに対し、生で見た風景がちらつくようになったのだ。それを上手く昇華している作品ならばよいのだが、この作品においては完全に悪手となっていた。
生半可に知っている舞台・知識のために、解像度の高い描写が仇となり、物語どうこうの前に舞台の裏にあるものがちらついてしまう。
このアニメの評価は賛否あるようだが、おそらく私は視聴者にもなれていないと思う。かと言って関係者でもないのがもどかしい立ち位置だ。
感想を書いていてふと作中にも同じような描写があったなと思ったのだが、
{netabare}主人公がヒロインに対して寄せていた印象もまた似たようなものなのかもしれない。{/netabare}
このアニメの根幹はある種ユアストーリーと共通しているように思った。それが良いとか悪いとかでは無いが、私がアニメに対して求めているのは現実との共通点を見つける事では無く、知らない世界を見せてくれるファンタジーなのだと再認識する事となった。

投稿 : 2023/09/28
閲覧 : 130
サンキュー:

9

ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

「メメント・モリ」+「ツァラトゥストラは如く語りき」

写実絵画がそのまま動いたような映像美は圧巻でした。
ファンタジー世界をとことん現実的に描いています。
それによって、今、見せられているのは、やはり現実なのではないか?
そう言う、なんとも言えない錯覚を覚えさせられました。
実は、これがとても重要な要素であることを物語の途中で気づくことになります。

ここから先は、ネタバレです。
まぁ、いつも通り作品を好き勝手に解釈しているだけなんですけどね・・・。


■『君たちはどう生きるか』
{netabare}
この作品と同時期に上映されている宮崎駿監督作品です。
どちらもこの世とあの世の狭間の世界を舞台に「生きる」ことについて描く作品です。
同じ年に同じテーマの作品が重なることってありますよね。
この2つの作品もそんな印象を受けました。
似ている、似ていないと言う問題ではありません。
私は、同時期に偶然にもテーマが重なると言うこと自体が面白いなと思うのです。
恐らく時代がこう言うテーマを欲しているのでは?と感じたりします。
シンクロニシティ(意味のある偶然の一致)と言うやつですね。
{/netabare}

■「生きる」と言うこと
{netabare}
もちろん、ただ心臓が動いていると言うことではありませんよね、人間の場合は。

そもそも「生きる」と言うことは、死ぬことが分かって初めて実感できるものです。
しかし、普通の人は、大きな病気、身近な人の死、大災害に直面しない限り、
なかなか死について考えることはしないのではないでしょうか?
それは、死は、一番身近な出来事のはずなのに、自分からは一番遠いと思うからです。
そもそも「死ぬ」体験なんてできませんし、その体験談を聞く機会もありません。
ですので、その逆の「生きる」ことについても漠然としていると言うことです。
つまり、「生きる」こと自体は当たり前のことすぎてよく分からないのです。

特にこの作品の登場人物のように子供なら、自分が死ぬことすら考えもしません。
正直な話、子供の頃に祖父母が亡くなった時に死を自分事のように考えたでしょうか?
確かに会えなくなったことに対してはとても悲しい思い出はあります。
しかし、自分が死ぬことを自分事のように考えたことはなかったと思います。
そんな子供に死を実感させ、だからこそ、今、どう生きるべきかを考えてもらいたい。
そのような時に、この世とあの世の狭間と言う世界観が丁度よいのではと思うのです。
なぜなら死後の世界を描いても、それはただの異世界転生です。
そこには実感はなく、「今を生きる」ことにつながってきませんから。
{/netabare}

■「メメント・モリ」
{netabare}
「死ぬ」ことを実感し、そのうえで「いかに生きるか」について考えたいと思います。
その時、ラテン語の「メメント・モリ」と言う言葉が思い浮かびます。
この言葉は、「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」と言う意味です。
本来の意味は、だからこそ「今を楽しめ」と言うことなのだそうです。

しかし、その後、キリスト教により違った意味になったそうです。
それは、現世での楽しみは空虚でむなしいものであると・・・。

この作品は、逆にこの言葉の本来の意味を取り戻す物語になっていました。
それは、この後の「ツァラトゥストラは如く語りき」で考えてみたいと思います。

ちなみに、「メメント・モリ」と言う言葉の具体的な例としては、
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチが有名です。
気になった方は、ぜひチェックを。考えさせられます・・・。
{/netabare}

■「死ぬ」と言うこと
{netabare}
もちろん、ただ心臓が止まったことを言うことではありませんよね、人間の場合は。

人間にとっての「死」とは、「心が死んだ」ときのことも言います。
なぜなら、それは、「生きる」ことをあきらめた時だからです。
だから死んでいるのです。

もちろん生きている場合、つらくて悲しいことなんて、いっぱいあります。
でも、そんな心に入った「ひび」を放っておくとどんどん広がっていきます。
そして、やがては、本当に心が壊れてしまいます。
それは、生きていても、死んでいるのと同じです。
そうなる前に自分で心の「ひび」を修復しなければなりません。

しかし、一度、入った「ひび」は、修復はできても完全に直るわけではありません。
どんどんもろくなっていき、いずれ完全に壊れてしまうかもしれません。
しかし、それでも「ひび」を修復し続ける努力をしないといけないのです。
そんな努力をすることが「生きる」ことなのです。

この物語では、空にできた「ひび割れ」がそれを表現していました。
そして、その「ひび」がこの物語に登場する人々の「心」の状態を表していました。
{/netabare}

■「ツァラトゥストラは如く語りき」
{netabare}
今回の舞台は、製鉄所の事故により閉ざされてしまった地区です。
そして、同じ季節が繰り返す「永劫回帰」の世界です。
そこで人々は、「神」にすがって生きていました。
空にできた「ひび割れ」は、世界崩壊の原因になると信じていました。
それを「神」が直してくれるのだそうです。
そして、いずれもとの生活に戻るためには、「神」の救済が必要だと考えていました。
また、そのためには、自分たちは「変わる」ことはいけないことだと思っていました。
まるで人々は、それを「運命」だから仕方ないと受け入れているようです。
つまり、そう言った「固定概念」で縛られている人々の物語でした。

しかし、最後は、「ひび割れ」を直す「神」は止まってしまったのです。
そこで、人々は、ようやく、自分たちは「変わる」ことを選びました。
「神」に救済を求めるのではなく、自分たちでこの状況をなんとかしようと考えたのです。
つまり、自分たちの思いで「生きる」ことにしたのです。

実は、この物語は、ニーチェの「ツァラトゥストラは如く語りき」をなぞっています。

「永劫回帰」の世界で、「神」と言う「固定概念」にしばられて、
「いかに生きるべきか」と言う視点が固定されている人々に対して、
発想の転換を迫ったのがニーチェです。
最後は、「神は死んだ」とし、
自分たちが置かれた状況をそのまま受け入れるのではなく、
「自分たちで考え行動せよ」、それが「生きる」ことだと説きました。

これが、「ツァラトゥストラは如く語りき」です。
この物語の根幹は、そのままのように感じます。

ちなみに、ニーチェの言う「神」とはキリスト教のことです。
ニーチェは、結果的にキリスト教を否定したことになります。
これにより、キリスト教によって意味がずれてしまった「メメント・モリ」が、
その本来の意味を取り戻す結果につながることになりました。
なお、この物語は日本のお話なので、「神」はキリスト教ではなく架空のものです。
{/netabare}

■「生きる」ことについて岡田麿里さんらしい脚本で描く
{netabare}
この物語では、「いかに生きるか」を岡田さんらしい脚本で描こうとしていました。

それは、大きく2つありました。

1つ目は、「生き方」について描いています。

この地区の大人たちは、自分たちの置かれた境遇がどんなことであっても、
つまり、自分たちは消滅する「運命」であり、死ぬ「運命」だったとしても、
「神」にすがるのではなく、
自分たちの手でそれを少しでも先延ばしできるように努力します。

この物語で「神」と崇められていたものは、製鉄所の溶鉱炉でした。
物語では、それを「神機」と呼んでいました。
この神機が、空にできた「ひび割れ」を直していたのです。
今までは、その神機、つまり、溶鉱炉は、「神」の意志で自動的に動いていました。
そして、自分たちは、それをただ見ているだけだと言っていました。

しかし、その「神機」が動かなくなったのです。
つまり、「神は死んだ」と言う解釈です。
でも、このままだと「ひび割れ」が広がり、人々は、破滅してしまいます。
この時初めて、このままだと自分たちは死んでしまうと言うことに気づきました。
そこで、自分たちの手で、溶鉱炉を動かし、より長く生きられるようにしました。

死は避けられません。
しかし、その「神」が決めた「運命」に少しでも抗う決断を人々はしたのです。
終わりが決まっている人生を自分の意志でどう生きるか。
死ぬときに、どう生きてきたかと言えるような、そんな人生。
これこそ、「いかに生きるか」と言うことだったのではと思うのです。


2つ目は、人間の根源的な「生きる」意味である「愛」について描いています。

主人公の思春期の子供たちについては、恋愛にからめて物語を構築していました。
このあたりは、岡田さんの脚本の真骨頂です。

「人を好きなること」。
単純なことなのですが、でも、それを否定せず、その気持ちに、今、素直に従うこと。
それは、「今を生きる」ことに他なりません。
どうせ死ぬのなら人を好きになる意味はないのでは?
違います。
死ぬまで一緒にいたいと思うほど人を好きになることなのです。
それこそ、短い人生を「いかに生きるか」と言うことです。

それに、人を好きになると、そんな短い人生も楽しくなります。
これが、「メメント・モリ」の「今を楽しめ」にも通じてきます。
「人生」とは、「今」の連続であることを忘れてはいけないのです。

この物語では、主人公の男の子と二人のヒロインが登場します。
つまり、三角関係です。
岡田さんの脚本って感じですよね。

この二人のヒロインには、別々の役割を持たせています。
当然、三角関係なので一人の恋は成就し、一人は失恋します。

前者は、もともと主人公のことが好きなのに「運命」を悲観し、素直になれません。
しかし、自分に素直になり、主人公に「好き」と言うことができました。
心の「ひび割れ」がふさがれたのです。
そして、この後どんな運命が待っていようとも「生きる」ことの喜びを得たのです。
また、その「愛」の結晶として二人の子供も描かれていました。
命を次の世代に紡いでいくこともまた「生きる」と言うことなのです。
このあたりは、前作「さよ朝」でも色濃く出ていました。

一方、後者は、結果的に失恋することにより、心に「ひび」が入ります。
これがこの物語のクライマックスへの引き金となります。
しかし、結果的には、その失恋を乗り越え、心の「ひび割れ」はふさがれます。
そして、最後は、この恋愛の舞台となった、製鉄所(工場)に訪れます。
そこは、廃墟でした。
しかし、そこで、人々が生き、自分たちは恋愛したと言う証拠を見つけます。
人は、「生きる」ことによって、確かにそこに「生きた証」は残るのです。
それは「まぼろし」では、なかったのです。

このシーンは、ぱっと見は、廃工場をただ訪れるシーンでしかありません。
しかし、そこに廃工場が残っている理由を考えると脚本の緻密さが見えてくるのです。
なかなかだなと感心せざるを得ません。
{/netabare}

■まとめ

今回の作画は、とことん写実的でした。
この世ではありませんが、この世と見紛うほどの現実感があるこの物語の世界は、
「死」は、紙一重だと否応なしに実感させられます。
この作品は、このことを表現するために作画に一切の妥協はありませんでした。
さすがとしか言いようがありません。

物語のテーマは、「ツァラトゥストラは如く語りき」そのものです。
「神」を否定し、「いかに生きるか」を追求したことにより、
結果的に「メメント・モリ」の本来の意味を取り戻す物語が完成したのです。

では、その「いかに生きるか」とは、具体的には、どう言うことでしょうか?
説明がとても難しい問題です。
しかし、そこを岡田さんらしい脚本で、具体的に描いてみせたのがこの作品です。

その脚本とは、つまり、思春期の「恋心」を題材にしたことです。
この「恋心」と言う「心」は、諸刃の剣です。
壊れやすい、それこそ、心に「ひび」が入りやすいものです。
しかし、その反面、後先考えず突っ走れる部分もあり、ある意味最強の「心」です。
この物語では、思春期の子供たちがこの「恋心」と言う武器を手にとりました。
そして、どうにもできないと思っていた「運命」に、最後は、抗ったのです。
「運命」に抗う物語は、岡田さんの過去作品にも通ずるところがありますよね。

この作品は、ところどころ解釈が少し難しい部分がありました。
しかし、その1つ1つの要素を線でつないでいくと大きなテーマが見えてくるんです。
岡田さんの脚本って実は"隙"がまったく無いんですよね。
物語のすべての要素に必ず意味があって、そのすべてがつながっているんです。

岡田さんの脚本は、ファンタジーの形態をとっていますがきわめてドラマ的です。
ですので、最後にSFチックなド派手な終わり方はしません。
どちらかと言うと、地に足が付いたとても等身大な感じがする終わり方です。
それは、悪く言えば人間臭い、良く言えば人間味があるって感じでしょうか。
ですので、スカッと忘れられる作品ではなく、なんだか「もや」っと残ります。
でも、その「もや」は、決して悪いものではありません。
なぜなら、自分の中に何か残って、何かを考え続けている証拠なのだと思うからです。
ただ、このあたり、岡田さんの脚本の好き嫌いがわかれるところかもとも思いました。

今回、私は、この作品については、いろいろ考えながら観ることができました。
とても有意義な時間を過ごすことができたのでとても良かったと思います。

投稿 : 2023/09/22
閲覧 : 182
サンキュー:

21

ネタバレ

タック二階堂 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

欲張ったり!岡田マリー!

詳細は公式サイトでも見てください。

監督・脚本:岡田マリー。制作:MAPPAという超強力布陣で制作された劇場版オリジナル作品です。

いちおう本レビュー全体にネタバレ隠しをしていますが、念のために以下も隠します。未見の方は開かぬように。
{netabare}
と言いつつ、本編をボカしながら語りますね。

さすがの岡田マリーでも、タイムパラドックスを描くと無理が生じるんだなというのが観覧後の印象。

えっと、製鉄所の爆発事故で町の住民全員が死んだんですかこれ?
そんな災害級の事故じゃなかったっすよね?

でだ。みんな死んだ廃墟の町が、まぼろしとなって時間が止まった世界になったという解釈で合ってるんでしょうか? そんな死者の世界に、生者である主人公の娘・五実が幼少期に神隠しで迷い込み、ある程度、大人になったところで主人公たちの○十年後の世界へと戻されると。

いやいや、主人公と睦実、死んでないじゃん。

これを、あるアニメYouTuberは「爆発事故のとき、現実世界からコピーされたまぼろしの世界」と言及しました。まあ、パラレルワールドという話にしないと成立しないわけですけども。

で、だ。
ま、要するに五実は両親(主人公と睦実)の待つ現実世界へと戻るからこそ、貨物列車でトンネルに突っ込む睦実との別れのシーンが、まったく涙も感動もないわけ。それどころか、なんで五実は帰りたがらないの?という感想まである。

まあ、それは五実が主人公に恋をしてしまったから、という解釈であり、それに気づいた睦実が帰らせるために「主人公が死ぬ瞬間に思い出すのは私であり、あなたじゃない。主人公もそうだ」という、残酷な岡田マリー節となるわけなんですが…

「君の名は。」のようなタイムパラドクス要素の起点が、すべて恋愛という岡田マリー脚本らしい面があり、しかも神事といった要素も含んだり、追ってから逃げるといったカーチェイスありと、ずいぶんとまあ岡田マリーは欲張りましたね。

でも、それがことごとく消化不良。

なんだろう。どうしてもテーストが新海誠に影響を受けていると言わざるを得ないんですよね。んで、岡田マリーさんがお好きな「幽霊」的な話。「あの花」も「ここさけ」もそうでしたもんね。

睦実の義理の親である神主、非常に浮いてました。もっと、なんというか「エヴァ」のゲンドウみたいなキャラにして、陰謀渦巻く感じにしたほうが良かった気がしますね。なんか、ギャグ要員なんだもん、あれでは。

主人公の叔父。序盤からずっと主人公の理解者であり、このまま主人公たちの計画を手助けするもんだと思ったら、主人公の母親に恋慕し、この世界を守るために神機狼を復活させるように動きます。キャラの方向性が変わりすぎでしょ。

とまあ、期待が大きかっただけにハードルを超えるどころか、下をくぐってしまったという評価です。それもこれも、岡田マリーがやりたいことが強すぎて、詰め込みすぎた感じを受けました。そのくせ、なんだろう、脚本家としての顕示欲がでたのか、見せ場のシーンが冗長。何度か、眠くなるほど長々とまあ、やってんなぁというシーンがありましたね。キスシーンとかね。
{/netabare}

MAPPAの作画は素晴らしいの一言。ぶっちゃけ、新海作品と遜色ないレベルでした。駄作とまでは言いませんが、決して名作とは言えないかなぁ…

投稿 : 2023/09/17
閲覧 : 95
サンキュー:

4

ネタバレ

けいP さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

もしサザエさんに出てくるキャラが年を取らない事に疑問を感じたら?

分かりにくい部分もあったけど何か印象に残る作品ですね。

例えるなら年を取らないサザエさんの世界にカツオと花沢さんの子供が紛れ込んできた。みたいな?

投稿 : 2023/09/17
閲覧 : 90
サンキュー:

9

ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

隔離世界

この作品で最初に思ったのは「ゆゆゆ」の様な隔離世界が舞台の様だなぁ〜って感じてましたが、もっと似てるのは「SUNNY BOY」が近いかも?しれません。

そこは神により隔離された世界で何かをきっかけに空がヒビ割れます。
その先の世界にあるのは「現実」でそれを修復する為に工場が存在し工場が出す煙「神機狼」
狼の顔をした煙です。

その世界は現実世界から切り離された世界で現実世界と繋がると幻想世界が消滅してしまいます。
そして、そこに住む時間の人達も。

この閉ざされた時間の中では人が死ぬ事なければ産まれる事も無い世界でもあります。
時間は進みますが季節は永遠にその季節(冬)のまま。
イメージとしては現実世界の全ての時間の中で1部の時間を切り取りその時間と人々をコピーして永遠にその時間を繰り返すと言う方がイメージしやすいでしょうか?

勿論、隔離世界の彼らはコピーみたいなものなので現実世界の自分は何も知らずに生きているしその彼らは現実世界の時間を成長して暮らしてます。
作中では隔離世界の人々は幻と呼んでたかな?

で、この世界にはルールがあり。
変化すると消されてしまいます。
世界維持の為なのですが、神機狼が消しに来ます。

恋愛を失礼して傷を負った裕子
DJになりたいと夢を持った仙波

彼ら彼女らは消されてしまいました。
この世界は、1部の時間を切り取った世界でしかありません。
現実世界で、その時間に変化しなかった事を隔離世界で変化すれば消されてしまう。

人は生きていると、恋を実らせます、失恋もします。
夢を持つ事もあります。
けど、それを許してくれないのが隔離世界です。
だから、この世界には自分を確認する為の書類があります。
自分の考え方や好みが変わっていないかを調べる為に……消されないように。

窮屈な世界ですよね。

で、その隔離世界に数年前に迷い込んできた女の子、五実。
彼女は神の子として工場に監禁されていました。
その世話を任されたのがヒロインの睦美です。
そして、睦美により巻き込まれたのが主人公、政宗

この作品はラストが面白いです。
実は現実世界では政宗と睦美は結婚していて、その娘が五実でした。

しかし、隔離世界は不安定になり崩壊の危機を迎えていました。
五実が世界に残れば彼女が巻き込まれる事になる。
だから、政宗は彼女を現実世界に送り返す事を決意する。
五実は嫌がります。
それでも彼は彼女を帰すと言います

嫌がる五実を無理に帰す必要はあるのか……
私は凄くこの話を見て心が痛くなったのは現実世界の政宗と睦美を見た時でした。

盆祭りで欲しい商品を買って欲しいとグズる五実にダメだと言う母(睦美)は店の前から動かない娘を放置する事にします。
けど、実際は隣の屋台に隠れて様子を伺うつもりだったのですが……目を離した隙に、五実は神隠しで隔離世界へ……

父(政宗)は盆祭りで娘を探しているのです。
現実世界で五実が何年消失してたのか解りません。
幼い五実が隔離世界に来て、隔離世界の政宗に出会うまでにかなりの時間が流れてるし、彼女が現実世界に帰っても姿は戻らない事から同じくらいの時間が経っている?

そう考えたら、何年も何年も盆祭りに向かい娘を探してるのかな?
母(睦美)も玄関で蹲ってて凄く塞ぎ込んでて、見ていて心が痛かったです。

子供が行方不明になったら、親ってのは探し続けるんだろうなぁ〜
何年も何十年も自分が死ぬ日まで……
でも、理屈じゃなくてさ、例え周りから何と言われても探す事を諦められないよね
だって、何年何十年立とうと親が諦めたら本当に心からも居なくなっちゃう気がする。
そして帰って来ない気がするかも……


けど、そんな彼らの親心を考えると心が痛かったです。

で、五実の現実世界に帰りたくないってのは解るかな。
五実は自分の父と母が政宗と睦美だとは知らないし、彼女は睦美が大切な友達で、政宗が初恋の人なんだよね。
そんな大切な2人と別れるなんてしたくないよね……

でも、政宗達が五実を現実に決意するのには納得出来てしまう。
私でも絶対そうする。

だって、それが五実の生きる世界だから。
政宗は知っている、五実の両親が彼女を心配している事を。
2人が五実を大切にしてる事を。
帰してあげたいって思います。

そして、いつか消滅する世界に五実を残したら彼女はどうなる?
彼女は住む時間も世界も違う。
そんな彼女も消滅に巻き込む事になる。
仮に消滅して彼女のみ生き残り現実に帰れたとしても彼女は消滅した政宗と睦美の悲しみに耐えられるでしょうか?
政宗がそんな重荷を彼女に背負わせようと思うでしょうか?

彼女には無限の未来が広がっているのです。
睦美が言っていた事が全てです。
沢山の世界を見て経験する事が出来る人なんだから見て欲しいしと思います。

それでも、本人の意思が1番大切だと思う。
けど、それは同じだよ?
政宗や睦美だって本当は別れたくないよ。
悲しいし辛いよ。
本当は一緒に居たいよ。
だから、確かに五実の気持ちは通らなかったけど政宗の本当の気持ちに蓋をして泣き言も言わずに頑張ったんだと思います。

誰かを想う事は、自分の気持ちを押し付ける事じゃない……相手の幸せを考える事だと思います。

睦美の義理の父(佐上)がいい例で自分の欲望に忠実だった。
帰りたくない五実の気持ちを利用して隔離世界に閉じ込めようとした。
確かにコイツは五実の残りたい意思を優先させてくれる奴かもしれないし利害が一致したから五実はついて行ったのでしょうけど……

本当に相手を思いやってるのは、どちらでしょうか?



さて、物語全体として最初の神機狼の登場は迫力ありました。
前半見始めて、私は内容が少し難しいので少し後悔してしまいました。

けど、見すすめると物語に深みがあり中盤くらいからグイッと作品に引き込まれます。
物語のメッセージ的には「家族」もテーマになっていて、政宗と睦美、五実の親子エピソード。

他にも、政宗と政宗の父や、政宗の父(お爺ちゃん)と五実(孫)のエピソードなどもあります。

「生きる」もテーマになってます。

子供が大人になれない世界

夢を持てない、叶えられない世界

季節が動かない世界

何も変えられない変わらない世界

街の外に出られない世界

それでも、生きようとする人達。
真実を知って生きることに執着しなくなった人達
そんな世界でも守ろうとする人達

そんな世界で生きる意味とは?
実は、この作品は五実が現実世界に帰った後に隔離世界がどうなったかは描かれていません。
まだ、存在するのか消滅したのか……

最初、この隔離世界は痛みを感じなかったそうなんです。
けど、崩壊しそうな世界の中で五実を送り届けた後に睦美と政宗は痛み……痛覚が目覚めます。

痛みなんてない方がいいと思う。
怪我をした時、ケンカをした時、失恋した時、人は沢山の痛みを経験し抱えます
痛い、苦しい、辛い、泣きたい、時には死にたいなんて感じる事もあるかもしれまん。
痛みなんてなければ身体も心も傷つかない。

けど、生きているから痛みはあるんです。
それが生きると言う事なのかも知れません。
そう考えると、隔離世界に何か変化があったのかな?と思います。
もしかしたら、隔離世界は別の世界線として存在してるのかな?とも。

そして、その裏では政宗の叔父の時宗の様な、崩壊しそうなこんな世界でも守りたい……守りたい理由がある人達が頑張った結果なのではないでしょうか?

結構、後半は泣きそうになるシーンや考えさせられるエピソードもありました。
内容としては複雑ではありませんが視聴中は難しく感じるかもしれません。

後、隔離世界がつくられた理由とか、神様が何故作ったのかの明確な真実は明かされません。
推論なら作中にありましたが……答えではないので作品に答えが欲しいって人はもしかしたら合わないかも?しれません。
割と、神機狼とかも謎はありますし……
消えた人が現実世界でどうなったのかも謎だし。

けど、考えさせられる内容もありし、色々考えて自分なりの結論を出したりとか、友達や恋人と見て意見交換しながら感想言うのも楽しそうですので、是非見て欲しい映画かな、と思います。

投稿 : 2023/09/15
閲覧 : 247
サンキュー:

14

FJSDR37436 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/23
閲覧 : 5

kakelu さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/23
閲覧 : 4

ルカルカ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/22
閲覧 : 3

Tamotamo さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/15
閲覧 : 4

電光 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.3
物語 : 2.5 作画 : 4.0 声優 : 1.0 音楽 : 3.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/08/25
閲覧 : 5

santaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/08/05
閲覧 : 5

ニッキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/07/29
閲覧 : 5

アニメガタリ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/05/15
閲覧 : 7

ぞろ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/05/11
閲覧 : 7

kuroneko さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:----

投稿 : 2024/04/14
閲覧 : 7

アニメ好きのおっさん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/04/10
閲覧 : 7

プーチン さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:----

投稿 : 2024/04/07
閲覧 : 9

セイ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:----

投稿 : 2024/03/31
閲覧 : 8

R さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/03/29
閲覧 : 8

いのり さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/03/28
閲覧 : 8

ニャンキチ君 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/01/24
閲覧 : 13

はちごー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:----

投稿 : 2024/01/24
閲覧 : 10
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アリスとテレスのまぼろし工場のストーリー・あらすじ

変化を禁じられた町で暮らす少年少女の恋する衝動が世界を壊す様を描いた長編アニメーション。原作となる同名小説を、監督を務める『さよならの朝に約束の花をかざろう』の岡田麿里が書き下ろし、「進撃の巨人」のMAPPAとタッグを組んだ。主人公の正宗を「呪術廻戦」の榎木淳弥、謎めく同級生の睦実を「鬼滅の刃」の上田麗奈、謎の少女、五実を「サマータイムレンダ」の久野美咲が担当する。(アニメ映画『アリスとテレスのまぼろし工場』のwikipedia・公式サイト等参照)

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2023年9月15日

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