101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
イントゥ・ザ・セーラー・ギャラクシー
シリーズ最終章“シャドウ・ギャラクティカ編”(原作、旧作TVアニメ共に未見)を描いた劇場アニメ作品の前編。
【物語 3.5点】
TVアニメ3クール分相当のシナリオをギュウギュウ詰めに。
息もつかせぬ展開というより、間も潰され、息苦しい感じ。
内容も、敵か?味方か?はかりかねる新たな戦士に謎の幼女、記憶改変、時空の歪みと、把握に集中力を要する内容のため、
油断すると思考回路はショート寸前にw
さらに星々に破壊をもたらし、宇宙の真の支配を目論むギャラクシアが云々と、
大風呂敷もコスモスサイズなので、中二病が合わない人にとっては、
頭痛を伴うかもしれませんw
よって評点は基準の3点辺りが妥当なのでしょうが、
私が加点したのは後編に向けて手応えを感じたからです。
星の力をクリスタルに宿し、何度も転生を繰り返すセーラー戦士。
セーラー戦士にとって肉体はかりそめの器なのか?
永劫の魂と刹那の肉体。戦士たちの自己同一性は如何に。
サブタイトル・『~Cosmos』(秩序)と対をなす「Chaos(混沌)」の示唆。
破壊と再生を繰り返す宇宙の星々と比べて余りにも矮小な青春の一頁。
守る価値はあるのか?
セーラー戦士の孤独と救済も織り込みながら大団円に向けて走り出すシナリオ。
そこに私が期待を抱けるのは、やはり引き続き脚本を担当した筆安 一幸氏との相性が良いからだと思います。
【作画 3.5点】
アニメーション制作:東映アニメーション&スタジオディーン
90年代の旧作TVアニメ版への回帰傾向が一段と強まる。
前作『~Eternal』よりキャラデザに迎えた旧作『無印』、『~R』の只野 和子氏が本作でも続投。
さらにデジタルで構築した作画に線の強弱や途切れ線などの手描きっぽい処理を加えアナログ感を出す。
背景の影にグリーン、光の当たる場所にピンクを配色する。
随所に施された90年代アニメの映像を再現する隠し味が効いたのか、
私は前作以上にノスタルジーを感じました。
新たなセーラー戦士・スターライツの3人のコスはアムラー(←死語w)を思わせる大胆な腹出しスタイル。
ただ、主演・三石 琴乃さんによるとスターライツのパワースポットは後ろ姿の腰の“くぼみ”らしいですw
ファッション、風俗だけでなく、授業中の秘密通信をLINEではなく紙のメモで行うなど、
女子高生の生態も90年代風。
そんな懐古視点から、私が眼福だったのは、セーラーヴィーナスこと愛野美奈子の紺色ブルマスタイルのバレーユニフォーム姿。
CGも交えた変身&バトルシーンもまずまず。ビルが千切れ飛ぶボスとの対峙も中々の迫力。
一方で、作中の“男性アイドルグループ”スリーライツのステージはあまり動かさず。
そこはチャレンジして欲しかったかなとも思いました。
【キャラ 4.0点】
旧作TVアニメ版はセーラー戦士等の群像劇&キャラアニメ。
原作コミックは主人公・月野うさぎの一人称視点の少女漫画。
本作は後者のうさぎ視点を踏襲。
というより、尺の都合上、群像劇にするとキャラ散乱による作品破綻は必至なので、
プリンセスの宿命を背負う、うさぎの孤独と葛藤に集約したのは上策だったかと。
ボス役・ギャラクシア。
ゲスな言動が際立ちますが、勧善懲悪とは異なる。
非道の中に秘められた宇宙と戦士の哀しき運命(さだめ)を予感させます。
【声優 4.0点】
主人公・セーラームーン/月野うさぎ役の三石 琴乃さん。
本作では旧作アニメに引き続き、ちびうさより幼い、ちびちび兼任も継続。
ほぼオウム返ししかしない未就学児の背徳感を再現し、
まだまだ幼女もイケるベテランの意地で魅せてくれます。
新セーラー戦士・スターライツの3人には、
井上 麻里奈さん、早見 沙織さん、佐倉 綾音さん。
{netabare} “男性アイドルグループ”スリーライツとして地球に潜入し、うさぎたちを監視したり、
衛のいないプリンセスの心の隙間を埋めたりするという難役を、
イケメンな男性ボーカルも含めてカバー。{/netabare}
流石の対応力を発揮。
ボス役・ギャラクシアを演じるのは林原 めぐみさん。
ここも集大成に向けて90年代の真打ちをぶつけて来ました。
名実ともにCV.三石 琴乃さんと哀戦士の矜持をぶつけ合うのに不足のないお方。
後編での、お二方の共鳴に期待大です。
そんな中、村瀬 歩さんが、
セーラーアルーミナムセイレーン役として、かりそめとはいえ、ついにセーラー戦士に。
今年は男の娘プリキュア・キュアウィング役も務めているそうで。
彼の前に、もはや性別の壁など存在しないですね。
【音楽 4.0点】
劇伴担当は高梨 康治氏がシリーズ完投。
ロック主体のBGMは旧作シリーズと比べて火力が強すぎると感じる方もいるとは思いますが、
展開が詰った劇場版においては、次!次!と発破をかける意味でもアリだと思います。
というより、彼のシンフォニック・ロックを大音響で堪能するのが、
私が映画館に足を運ぶ主たる理由だったりします。
OP主題歌は「ムーンライト伝説」が復活。
OPアニメーションにも旧作オマージュが散見され、原点回帰を所信表明。
“男性アイドルグループ”スリーライツの「流れ星へ」もリメイク。
スローテンポの原曲からミディアムにテンポアップ。
スリーライツの音楽性はテクノに設定され、本曲にもアレンジされるが、そこも90年代テイスト。
ED主題歌はDaoko「月の花」
歌詞世界でセーラー戦士の心境を、テクノ成分でスリーライツを。
米津 玄師さんとのコラボソング「打上花火」でも見せた和風、東洋風に対応した歌唱で火球皇女を。
作品世界観を織り込んだ上々の締めくくりで後編へ繋ぐ。