
トロール夢民 さんの感想・評価
1.3
物語 : 1.0
作画 : 2.5
声優 : 1.0
音楽 : 1.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
夜の仕事
学校へ行かず深夜の街を徘徊する典型的なニートが、露出度の高い女に出会い逢瀬を繰り替えす
本作の内容は、ヘルス嬢にハマったオッサンの悲哀を描く物語だ
少なくとも私は、本作をそのように捉えた
本作は一見すると捉えどころのない作品のように思える
しかし「吸血鬼」を「風俗嬢」或いは広義の意味で「夜の仕事をする女性」と解釈すると、途端に腑に落ちる
そして作中における吸血鬼の「眷属」とは、風俗(夜遊び)にハマって抜け出せなくなり破滅していく哀れな男のことだと解釈できる
作中では主に、性的不能(勃起障害)に陥った主人公が、夜な夜な回春マッサージに通って生殖機能を回復するまでの過程を冗長に描いている
主人公をオッサンに、露出度の高いヴァンパイアを性感ヘルス嬢に見立てると理解が進む
夜眠れない」というセリフを「チンコが立たない」に置き換えると更に話が早い
言うまでもなく、作中の「吸血行為」は「口内射精」の比喩的な表現だ
客として足しげく通った結果、無職だった主人公は行きつけの性感ヘルス店のポン引きとして働き始めることになる
主人公は客引き現行犯で逮捕、ヴァンパイアは児童労働による労基違反で逮捕されるべき案件が描かれる
なんと不健全で、不道徳な作品だろうか
主人公は不能なだけあって、女性に興味を示さない
それは、ニートの自分を無条件に好いてくれる幼馴染の女性に対しても同様だ
その幼馴染の女性は作中で酷い扱いを受ける
不能な主人公と行動を共にした結果、汚いオッサンから穢れた汁(精液)を盛大にぶっ掛けられてしまう
不能な主人公が無能なために、発育の良い幼馴染の女性が汚いオッサンに顔射されてしまうのだ
酷すぎる、胸糞な展開だ
この時の主人公の無能ぶりは見ていて腹が立つ
自分に良くしてくれる幼馴染の麗しい女性が、目の前で薄汚いオッサンに襲われているのだ
それなのに、何もせず「なんだ、なんだこれ…!」と心の中で実況しながら、ただ突っ立っているだけで動こうとしない
無様だ
間髪入れずに顔面を蹴り上げるとか、オッサンのズボンを脱がして金玉を握りつぶし引っこ抜くとか、色々やり様はあるだろうが
いち不細工ハゲの私から見て、本作の主人公には全く魅力を感じない
この主人公は一度、マ・ドンソク氏主演のアクション映画を観て勉強した方が良い
などと思って観ていると、主人公はようやく椅子をフルスイングしてオッサンの顔面を殴打した
ここでの一連の流れから、作り手の性癖が垣間見えた
主人公が攻撃するまでの無駄に長い「間」の取り方から察するに、自分の性的魅力に無自覚な女性が知らないオッサンに無理やり顔謝され汚される非道な絵を描きたかったのだろう
つまりこのシーンは、視聴者へのサービス・カットだ
この幼馴染の女性が作中で「吸血鬼」になってしまったなら、これほどまでに最悪な展開は無い
しかし原作にはそうした展開は無く、幼馴染は用済みとなって物語から退場することになる
このとき幼馴染を襲った汚いオッサンも、訳アリの人物だ
おそらくこのオッサンは、キャバ嬢あたりに恋をして、ケツの毛までむしり取られた哀れな男の末路を表しているのだろう
要するにこのオッサンは10年間、借金してまで貢いできたにもかかわらず、一度もヤらせてもらえずに破産し、とうとう発狂してしまったといったところだろう
そんな哀れなオッサンを優しく慰め、主人公へ警告を与える探偵の言葉には少なくない含蓄がある
途中に登場するメガネ男も、相当に酷い
このメガネ男はJKリフレ嬢に恋をする、キモいオジサンだ
彼はガチ恋客から熱心なストーカーへ転身し、最終的には嬢専属の奴隷へと昇格して、自らケツの毛までむしり取られる未来を確定させた異常者だ
作中では、ガチ恋客とJKリフレ嬢の明らかに不健全な関係性を恋愛というフレームで装飾し、貢ぐ・貢がれるだけの主従関係を相思相愛(両想い・一蓮托生)の間柄であるかのように描いている
ここまで大胆に視聴者を欺くとは、非常に悪魔的な手口だ
本作の物語は退屈の一言に尽きる
事件が起きるまでが長すぎる
間を持たせるために無意味にカットを切り替えまくる演出が煩わしい
劇伴は軽薄でチープ
主題歌はあまりにもダサくて、聴いていて恥ずかしくなってくる(視聴中は可能な限り全てスキップした
主人公が不能で、かつ主体性が皆無であることから、話が一向に進まない
いい加減つまらな過ぎるので、テコ入れがあったのだろうか
終盤になって探偵という新たなキャラクターが登場する
作品に不穏な空気が漂い始め、物語に動的な作用が加わった
ようやく面白くなる機運が高まってきた
そこに漕ぎつくまでが長すぎる
長すぎるアイドリングは燃料の無駄だ
主人公に主体性とエゴが皆無なのは致命的だ
主人公は、環境や周囲の人々が自分の人生を面白くしてくれることを期待して、ただ突っ立っているだけだ
これでは周囲がお膳立てをして、主人公の人生を面白いものにしなければならなくなる
受け身ではなく、積極性のあるキャラクターの登場こそが物語を面白くするカギだ
本作に探偵が必要になるのはそのためだ
とにもかくにも、登場するのが遅すぎる
女性が苦手で夜遊び(風俗・キャバクラ等)にハマってしまうオッサンたちの哀愁を延々と見せられているような、観ていて虚しくなる作品だった
こうした作品を観るにつき『千と千尋の神隠し』が、如何に凄まじい作品なのかを改めて認識させられる
なぜなら、千と千尋は本作と同じく性風俗産業を題材としていながら、表向きはあまりにも健全で、内容は途方もなく面白く仕上がっているからだ
本作の主人公には物語を面白くできる資質が備わっていない
なぜなら、全く成長しないからだ
人が成長するために必要な経験は、挑戦と失敗と挫折だ
本作の主人公にはこれが無い
千尋も主体性の無い主人公として物語の世界に放り込まれるが、何だかんだですぐに挑戦を始め、程なくして挫折を経験する
己の無力さを痛感し、不安で惨めでどうすることもできない時にありふれた人の優しさに触れ、おにぎりを食って涙する
当たり前のことに感動できるのは、実体験を通して「有難み」を知るからだ
これが成長だ
千尋の経験値が増え、人として深みが増した瞬間を見事に描写している
だから共感できて感動を覚えるし、観ていて面白い
本作には、そうした展開が一切ない
だから、つまらないのだ
最終話で吸血鬼の口から「人生つまらねえ」というセリフが出てきてしまっている
そんなものは、第1話で言うべきセリフだ
本作にはスピード感が足りない(おそらく3倍速で観ても退屈に感じるだろう
結局のところ、吸血鬼になっても人生つまらねえよ?それでもなりたいの?という、本作を自壊へ導く結論に達している
つまり、物語は始まってすらいなかったのだ
吸血鬼は夜の自由を満喫していると謳歌する半面、昼間に活動できない不自由を甘んじて受け入れている
吸血鬼は不自由な身であり、まったく自由に生きていない
むしろ、昼夜を問わず活動できる人間の方が選択肢が多い分、日常生活を営む上では自由度が高い
こんなことは判り切ったことで、12話を費やして明かされる御大層な内容ではない
マトモな話として終わらせるならば、吸血鬼を人間にする展開へシフトさせた方が健全で無理が無い
生命には終りがあるという当たり前の事実を悟ることで、生涯はより濃密で豊かなものになりうるからだ
とはいえ既に原作は完結している模様で、ネタバレ記事を読むにつき、物語は最後までぼんやりした話のまま終わっている
本作には、吸血鬼が惚れた相手の血を吸うと、どちらかが死ぬかもしれないという設定があるようだ
原作の物語終盤では吸血鬼が主人公に惚れてしまったがために、二人は離れて生活することになる
これは要するに、貢がせる側が貢ぐ側になったら商売が成り立たず、生活が破綻するという話であって、そうなる前に風俗嬢が別の環境(店)へ移ったようなものだ
その後、最終回では主人公が移転先の風俗嬢の元へ会いに行き、風俗嬢もまんざらではないといった様子で物語が幕を閉じた
それは、本人たちがそうしたいならいいんじゃないの、という、驚きの無い結末だった
挫折を恐れて逃げ出し、失敗を恐れて挑戦しない
主役の二人は、最後まで主役にならずに終わった
二人のその後は、視聴者の妄想か、二次創作で補完してくださいといったスタイルで締めくくられている
もはや挫折の果てにハゲ散らかした無能な不細工でしかない私に言わせれば、本作の内容はあまりにも空虚で、どこまでもチープだ
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