ネムりん さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
私の本気を見せてあげるわ!
※追記
デレマスの島村卯月役のへごちんちゃん(大橋彩香)が螢役でした。漢字間違え→蛍×
▩物語 4.0点→4.5点
作画 4.0点→4.5点(最終)
疑問点について主要部分にだけ色々と突っ込みを入れておきます。(長文ですがこれでも1/3ぐらいに削りました。理解力が足りなかった人はパンドラの箱を開けるかもしれないので閲覧注意)
{netabare}先ず春がHY:RAINを辞めた理由は蓮が春の本当の実力を知ってしまい、春がグループに残り実力を出すか相手に合わせるかの何れを選択しても、絶望した幼馴染の蓮を傷つけるジレンマを抱えていたから。
自分にあって他人にないものが分かっていたので自分の居場所がなくなり、相手の気持ちを考えHY:RAINを辞めることを選択した。
話し合いの場を持っても個人の能力差の話なので解決できる問題ではなく、これ以上内容に触れ相手を傷つけないために、何も言わずにいなくなることがその時の春の胸中を考えればベストな選択だったと思います。
法律上の話になりますが、事務所側はアイドルを辞めたい人間を止める権利は一切ない( 民法の「退職の自由」に規定)ので春の考えていたことから話し合いを持つことにはならない。
じゃあ一緒に切磋琢磨してできるようにしてあげればいいじゃんという疑問が出てくるけど、それは高みを目指して頑張ったことがない人の恣意的な意見だと思います。
地方のアイドルや地下アイドルと呼ばれる人達はある程度の実力があればやっていけるだろうけど、トップアイドルになるには努力だけでは足りない立ちはだかる大きな壁の存在があり、それが才能と呼ばれるものだと思いますが、その壁を破って上に行けたもののみがトップアイドルの地位に立てる。
春はそのことを分かっていたから壁にぶつかり落胆してしまった蓮のために、自分なりに考え行動を起こしたことが判断できます。
一般には理解されにくい他人の痛みや悲しみを自分の感情のように感じるエンパス("にゃんぱすー"ではない)と呼ばれる共感体質を持つ人は自己犠牲を考える傾向にあり、自分も同様な性質と経験があるので春の考えはよく理解できる。
そのことに関連してソロのトップアイドルの螢に憧れる春がTiNgSでアイドル活動を再開したのは、杏夏と理王が春の本当の実力を知らないので、自分の実力を隠して相手に合わせていればメンバーを傷つけずにアイドル活動ができると思っていたから。
その後春が実力を隠していた事情が露わになり、葛藤を抱えていたことが分かるのですが、相手に合わせるのではなく、自分が相手の気持ちに応えてあげることでもっと高みを目指せることを理解し、グループのメンバーと共に努力していくことの大切さを知り、全力を出すため所属していたHY:RAINではなく、そのことを気付かせてくれた未完のTINGSのメンバーと共に中野サンプラザの舞台を目指し結束することが目標になっていく。
春の心の葛藤が消え、成長が垣間見えた瞬間でした。
このことからアイドルとして完璧に見える春は優し過ぎるというのが一つの欠点になるので、メンタル面の強さ(負けず嫌いの性格やリカバリーの早さ) が要求されるソロアイドルには不向きだから、本当の実力を発揮できるという意味では杏夏と理王達が支えてくれるTINGSのメンバーが春にとってはかけがえのない存在であり、探していた居場所ということが言えます。
マネージャーの嘘を見破る能力はこの作品にとっては必要。
なぜなら様々なシーンでそれが伏線になっていたから。
「どんなアイドルになりたいか、どんな夢を持っているのか」とTiNgSのメンバーがマネージャーに聞かれた時に、その能力から杏夏と理王は嘘をついていたけど、春だけが嘘をつかなかったところに含みを持たせていて、マネージャーの前で3人でダンスを踊っている時に春だけがしっかりと踊れており、杏夏と理王はバランスを崩したりタイミングが遅れ、踊り終わった後も息を切らしメンバーの中では最初から実力差が出ていた。
このことから杏夏と理王はアイドルとして活動していくことに葛藤を抱えていて、その後の課題を解決する話の展開にその能力が寄与していたことが分かります。
嘘を見抜く能力があることで反対のことを言っていることが分かり、何故嘘をついていたのか物語の核心部分に触れることができるが、その能力がないとそこで話が終わってしまい、登場人物の内心に迫れないので適切なアドバイスを行うこともできない。
だからメンバーたちの考えていることが能力を通してより伝わり、感動を与えることができた。
「君達はアイドルだ。常に自信を持って胸を張って定期ライブに臨んでほしい」とマネージャーが語っていた時に、杏夏と理王が輝いて見えた時も同じことが言え、日生直輝がTiNgSのマネージャーを引き受けた理由が"春だけが本当の事を話し輝かなかったから"なので、同僚を傷つけてしまった過去の経験から3人の関係を見て状況を把握し、「春の本気の言葉にTiNgSに希望の光を見た」と言っていたことから、嘘を見抜く能力がこの作品にとってはとても重要だったということが分かります。
そして事務所の社長が第1話で解散宣告をした本当の理由は、最終話で「解散」の言葉を口にした時に輝いて見えたことから本音ではなく、メンバーが一つに繋がり成長してもらいたいと願う社長の親心からくるものと分かり、始まりにはしっかりと理由があったことで「繋がり」というテーマに見合ったよく考えられた脚本の流れでした。
このことは社長がマネージャーとの対談で肯定的な意見を言っていた時に、嘘をついてマネージャーを試していたことからも読み取れます(要するに中野サンプラザのステージを成功させることが本当の目的ではなかったということ。あくまでも解散宣告は当て馬です)。
そのマネージャーの能力は表情や仕草、目や口の動き、声の調子などで相手の考えていることや次の行動を読み取る「ノンバーバルコミュニケーション」に該当するもので特殊能力ではないと思います。
アニメーションなので分かりやすくするために色を付けて可視化し、FBIの取調官が取り調べ時に活用する読心術のように訓練によってある程度は相手の考えていることが分かる類のもので、マネージャーはその能力が人より長けているのだと思います。
そのように考えるとSF要素やご都合展開といったものではないことになる。
以上を踏まえTINGSが本来の力を発揮し中野サンプラザのステージを成功させるには、メンバー自身での課題解決が求められていて、マネージャーが必要以上に肩入れをしなかったのはメンバーの自主性を重んじる必要があったからで、きっかけを与えるのみに留め、周りから見守るのもマネジメントの仕事だったということが分かります。
よって日生マネージャーは社長の意図を理解し、適切に行動ができていたということになりますよね・・・。{/netabare}
物語の評価はアイマスのようにプロデューサーがアイドルを売り出すために奔走したり、メンバーが営業などを行いアイドル活動で苦悩を抱えながら、経験を通して成長していく王道アイドルものですが、お手本のような脚本で、解散宣告に始まりお互いが抱える葛藤を克服してTINGSのメンバーが一つに繋がり、中野サンプラザでのコンサートへの目標途中でHY:RAINのメンバーの存在がアクセントになっていて、メンバー同士お互いを高め合いエンディングを迎える全12話よく纏まった内容でした。
内容以上に作画表現力が優れていて、制作会社がスタジオKAIなので、モーションキャプチャーを使用していたと思いますが、メンバーのダンスシーンでは実力差が分かるように使い分けがされていて、春は他のメンバーに合わせるように卒なく踊れていたが、理王はバランスやテンポ感、体力面等で動きが劣り、杏夏はその中間の立ち位置。
第1話のマネージャーの前でのダンスシーンでは3人の実力差が顕著で、第2話の定期ライブではマネージャーに掛けられた言葉に触発された春だけが突出して踊りが上手く、第4話の杏夏がセンターのライブシーンでは3人のダンスが成長に合わせるように比較的綺麗に揃っているといった、その時のメンバーの心境を映し出し作画が丁寧に描かれていました。
口や手の動き、顔の表情などもシーンに合わせ繊細に描かれていて、2Dと3DCGを組み合わせた高い表現技術があったからメンバーの気持ちを適切に捉え、レベルの高い内容に仕上がったのだと思います。
内容はシリアスよりで暗くならないように所々コメディ要素を入れ、全体的に明るい雰囲気で前向きなイメージがあり、それに伴いメンバーの個性がよく出ていました。
いつも明るく皆を思いやる気持ちが強い春の笑顔とジョークに難がある(?)が杏夏のブレないパフォーマンス、 ムードメーカー的存在のリオの懸命な努力。
それぞれの長所がTINGSを支え、雪音と紅葉を加えて一つの目標に向かいメンバーが努力していく。
テンプレなのかもしれないけど、細かな気配りができた作画や思慮を重ねた脚本において、スタッフの想いが伝わる高い評価ができた作品内容でした。
※余談
成長に合わせて「リオ・ザ・タイフーン」→「リオ・ザ・サイクロン」→「リオ・ザ・トルネード」に進化していったのがワロタw
□以下過去レビュー
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物語は解散宣告をされたアイドルグループ”TiNgS”が、コンサートで中野サンプラザの会場を満員にすることを条件に解散を取り消してもらうため、グループのメンバーと共に手を取り合いマネージャーなどの周りのサポートを受けながら、大きな夢を抱いてアイドル活動で奮闘していく、いわゆる成長型の王道アイドルアニメ。
街頭でのチラシ配りや結成当初観客が少なくて苦労しているところは、AKB48の初期メンバーに姿が重なります。
序盤での点数評価はニュートラル付近であまり高い評価はしていなかった作品ですが、描かれているものが"できる側"の視点と"できない側"の視点、逆接関係ではなく対比関係。つまり個人に主眼を置いたものではなく、他との関係において成り立つ相対的なアビリティやポテンシャルが論点となっていて、アイドルグループという競争社会における「人との繋がり」がテーマになっていると思います。
グループから離れていた雪音と紅葉がメンバーに加わり”TiNgS”から"TINGS"へ。大は小を兼ねるという言葉から5人が一つに繋がり本当の意味での「TINGS」に。
各々が抱える苦悩や目標を各話別視点で物語が描かれており、それぞれの想いが一つに集約して未完のアイドルグループが開花していくところは、テーマに沿った形で物語の構成の巧さを感じる作品。
課題をクリアにして成長していく側と本来の実力を出す側の抱えているものにスポットを当て、深みを持たせたエピソードを挟みながら、今まで噛み合っていないかったものが重なり合い、その想いをテーマ曲にのせて届けるシーンは、展開が予想できても落ち込んだり、一生懸命だったり、唇を震わせて相手に気持ちを伝えたり、声優さんの演技もそうですが、音声映像の表現力が高いと心に響くものがあり素直に感動できます。
評価を変えるきっかけとなったのは、やはり8話辺りから明らかになる春の採った行動。
物事への考え方が成熟していない年頃なのに、メンバーを決して蔑むことなく、自分の存在を消して大人でもなかなかできないことをしてあげる純粋な心の優しさ。めちゃくちゃいい子。
「TiNgSが大好きだから本気を出してみんなを傷つけたくなかった。
自分にしかできないことを見つけはじめた杏夏ちゃん。歌声でみんなを魅了し始めた理王ちゃん。
歌もダンスもパフォーマンスもまだまだだと思ってた。だからみんなを守らなくちゃいけないと思ってた。」
そんなメンバーを思いやる気持ちを持つ誰よりも早く振り付けを覚え、誰よりも上手く踊れて、自分の才能で誰かを傷つけてしまうのが怖くて実力を出せなかった春と、春に合わせるため本気の自分たちを見せるために努力していく杏夏や理王達"TINGS"のメンバー。
第9話でその想いが結実して中野サンプラザでのコンサートへ繋げるシーンは本当に素晴らしかったです。
今期メイド・イン・アビスが今までは頭一つ抜けていたけど、この作品がストーリーの評価で並びました。
クライマックスに向けて一気に駆け抜けてもらいたいですね。
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