薄雪草 さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ダウンドラフトは一切なし
私は、飛行機は一度っきりの搭乗しかないのですが、ちょっと大げさに言えば人生観が変わるくらいに感動しました。
何度も登った富士山が遠くにちんまり見えたこととか、北アルプスの稜線が真下に見えたこととか、雲の上に抜けたり下にくぐったりなんて体験は、感じたことのない興奮を覚えました。わくわく。
地上で暮らしていると、高い目線は車のバードナビを鳥ふうに脳内変換するか、TVの自然環境番組に50センチくらいまで近づいて妄想するかくらいしかありません。
ただ、幸いなことに車でしばらく走ると広い河川敷にグライダーの滑空場があって、遠く真っ青な空の上に何機もの機影を眺める機会に遭遇することができます。
ゆっくりと旋回しながら高みへと昇っていく長い翼。
真っすぐに飛び去って空のあわいに溶け込んだり、きらりと光る輝きが白い機体を浮かび上がらせたりすると、知らず知らずのうちに体から魂が抜けだして、あたかもコクピットに座っているような錯覚さえ感じます。
でも、目に映るのは空の青だけで、地上の様子は少しも思い浮かばないんですね。
そんなわけでグライダーを見るならライブな風景を見るに限る。
高度や速度、機体の傾きや風の流れのダイレクト感に心を寄せて鑑賞しました。
ですので、映画館で観なかったことがよくよく心残りでした。
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大学のサークル、なかでも体育会系は、オリンピックに直結する種目もあれば、Eスポーツまで実に幅広なすそ野と選択肢があります。
"つるたま" こと都留たまきさんは高校ではバレーボールに勤しみますが、大学ではおしゃれな恋に憧れる女子学生キャラでもあります。
とあるザンネンなきっかけから航空部に入部し、初フライトで空の魅力、グライダーの醍醐味にドはまりし、根っからの天真爛漫のままに青春を謳歌することに・・。
体育会系ならでの厳しい規律、全国に広がるライバルを友としながら、心に垣根なく、言葉に遠慮なく、まるで大空に境界線がないかのごとくに立ち回ります。
本作は、グライダーというあまり見慣れないジャンルだし、スポコンや恋バナとはかなり位置取りが違うシナリオ作りになっています。
私的に言えば・・・、「瓢箪から駒」ふう?
思いもしないところから他者とつながる意外性だったり、大人を含めて海外にも踏み出せる機会を得たりという大人の味付けもあります。
紆余曲折はあっても、そこに自分のアイデンティティーが投影できたり、力量を底上げするプロセス、器を大きくするという成長譚が、基底部には敷かれてあるように感じました。
それに重すぎる人間関係のしがらみやドロドロは、きっとグライダーには似つかわしくないのかもしれません。
さわり程度に収めてあるのも、一歩間違えば死に直結する重さのほうに力点を置いたからかなって思いました。
知識と技術、正しい判断、そして何より自分自身への責任感が、生と死とのバランスを取り持っている。
そんなスポーツはほかにはあまり聞いたことがありません。
グライダーへの一瞬の見惚れが、一生を左右するような4年間へと導く予感。
それは瓢箪から駒ともいえる出会いの醍醐味にあるのでしょうね。
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原作は未読なのですが、丁寧なレビュー解説もあって作品理解に大きく参考になりました。
風呂敷を広げるだけ広げ、打ち止め打ち切りと言うことであれば残念な気もします。
登場するキャラはそれぞれ魅力的だし、背景や相関性も当然あるわけです。
航空部のあるあるや、競技性などにも触れるなら、奥行きや広げ方もほかにあったかなと思います。
つるたまの初フライトは、体育会系の1ページでしたが、一般の方にもそのチャンスは開かれているみたいですし、めったにないことですので、お小遣いをやりくりして、自分の妄想を現実の体験談に書き換えられたらなって思いました。
ブルーサーマル。
いつか私も捕まえてみたいし、乗っかってみたい。
そんなふうに思いました。