フェイルン さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
頼りない人達に囲まれた孤独な女の子のファンタジー
私は「時をかける少女」から細田守監督作品を好んで観るようになったのだが、「未来のミライ」から違和感を感じるようになりだした。
細田守監督が作品を作り、金曜ロードSHOW!他で放送される度にネガティブコメントを聞くようになった。
「細田守作品が賛否両論になる理由が改めてわかった」というレビューを読んでいて、嗚呼これがここのところ細田守監督作品で引っかかるところかと腑に落ちた。
細田守監督がやりたい事やテーマは分かりやすい。
美女の野獣をベースにしているというのもある程度は分かる。しかし、美女と野獣というよりは、オペラ座の怪人のような印象を感じた。
現実を比喩する為にファンタジーの世界に展開し、機をみてまた現実に戻る。
しかし、本作で言えばラストの展開に疑問がある。
現実の世界での展開がファンタジーから戻ってくる時にファンタジー並の非現実な設定が現実を侵食していく。現実でそうはならんやろと言わんばかりの展開で作品のテーマを表現しようとするあたりに無理を感じると違和感を感じるのだ。もはやこれはアレルギー反応。これはこういうものなんだと違和感を感じなければそれまでで気持ち良いものなのだろう。
他にもヒロインの母の行動とラストの行動について、果たしてこれがベターな行動だったのかという疑問もある。
えええ?どうしてこうなった?
いや、そうはならんやろ。
それが現実世界で起こる違和感。
まぁ、それはサマーウォーズでもあったか。
サマーウォーズより時間が経過し、多様化により我々は作中のモブのように無関心もしくは批判者となってしまった!!とでも暗喩しているのだろうか?
劇中のサブキャラ他は目の前の大事について興味が無いのか他人事のようだ。
ファンタジーの世界で折角あのようなシーンがあるのなら、周りを巻き込んで上手く解決は出来なかったのだろうか?
とまあ、手放しに褒めるほどすっきりとした終わり方では無かった。
つまりだ、大人やらおじさんとなって観ている私達は、主人公の年齢層から見れば観客や傍観者でしか無い。細田監督が対象としているのは主人公の年齢層であり、その視点を重視しているのだろう。頼りにならないどころか意味不明な行動をしたり傷つけてくる大人たちに囲まれた世界で問題を解決しようと奮闘している子供たちの世界を描きたいのだろう。本作(今)の子供たちは大人を信用していないと言いたいのだ。
本作はサマーウォーズから技術的にはアップデートしている。
しかし、エンターテイメントの面から観るとサマーウォーズの方が同じファンタジーでぶっ飛んだ展開でも大人も子供も問題解決に向かい、納得のいく終わり方だった。
どうやら、細田監督の脚本になってからは、家族愛を表現するようにみせかけながらも個の強さや自立の方が強くなっている印象が強い。
次回作、脚本はまともな人に任せましょう。