waon.n さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
その唸り、一度聞いたなら、あなたの胸にも響く
【synopsis】
主人公の父は莫大な借金を残して死んでしまった。
残された子供のデンジは、893屋さんに借金を返すために働く、とても貧しく危険な日々をずっと過ごしていた。
悪魔(デビル)ハンター。
主人公デンジの職業、その仕事というのが危険を伴うデビル(悪魔)ハンター。
ある日、逆にハンティングされてしまったデンジは相棒の悪魔チェンソーの悪魔ポチタと一つになることで一命を取り留め、そして…地獄のヒーローチェンソーマン、チェンソーの悪魔になってしまう。
公安に捕まり、公式にデビルハンターとして働くことになったデンジの夢は『パンにジャムを塗って食べる』
目先の欲望に素直なデンジと恐怖を切り裂くチェンソーの超激震ダークヒーローの物語が開幕
【Staff】(Wikipedia参考)
原作者 藤本タツキ
監督 中山 竜
シリーズ構成 瀬古浩二
3DCG 奥納基 横川和政
編集 吉武将人
チェックしたいスタッフ7名になりました。
原作者は、言わずもがなですね。漫画読んじゃいました。他の作品も気になります。余裕があったら読んでみようと思います。
制作会社は MAPPA で日本のアニメ制作会社の中でも5本の指には入るノリに乗っている会社ですね。『呪術廻戦』でも高いレベルの作画をテレビ、劇場の両方で披露してくれました。
中山 竜監督は何やら初監督? 作品らしいです。元々アニメーター出身で、演出、コンテなどを前述の『呪術廻戦』や『盾の勇者の成り上がり』で務めて素晴らしい映像を残した功績により大抜擢となったらしいです。
原作に寄せる、映画的な映像を演出し作品全体に芯を通したことで、とても引き込まれる作品へと昇華されました。
瀬古浩二さんはもう何度と私のレビューに出ているので、もう言わずもがなですが、この藤本タツキの濃い目に綴られた作家性のある表現物に真っ向から立ち向かいまして、見事原作の良さを引き出して、映像に落とし込んでくれたとやはりスゴイ人だと思いました。関係ないけど同時に何作品やってんの? ってくらい同じ秋アニメで名前見たので、働きすぎないように気を付けていただきたいものです。
3DCGは二名がwikiに載っていました。
【奥納基、横川和政】のお二人になります。おそらく、3DLOと3Dキャラクターで分けられていたんじゃないかなって推察します。
詳しくは分からないですし、分かるところも省きますが、この二つは3Dですが、作業の工程が違うものだったりします。3DLOはどちらかといえば、美術の方面で、3Dキャラクターの方は作画方面に寄っています。この作品はかなりの割合で3Dを使用しているように見えるので、量が膨大だったと思います、チェックするだけでもかなりの時間を有するので、二つに分けて総括したものを監督にチェックしてもらう方がそれぞれ集中して作業に向かえてよかったのだと思います。この辺りは書いていませんが、プロデューサーが優秀なのかもしれません。とにかくあの作業量(想像だけですが)を捌いただけでもスゴイ事だと思います。素材管理した設定制作さんも大変だったと思います。
編集は吉武将人さん。
1カット毎に尺を調整したり、1カットの中で間を足したり抜いたりもします。
監督や演出さんと調整するものだと思いますが、映画的な間の使い方、退屈しない尺の感じなどを上手くまとめ上げていると思いました。
特に6話のおも~い雰囲気が絶妙に上手いのでは…と思った次第です。
音楽も最高だったので、音響監督も素敵でした、
【Review】
悪魔ってなんだぁぁ? ってところを出発点にすると面白いかな。
『すべての悪魔は名前を持って生まれてくるその悪魔の名前が恐れられているモノほど、悪魔の力が増すという』みんなのお母さんマキマのセリフだ間違いない。
そしてこれが基本設定。
じゃあ、恐怖そのものが悪魔なのか? また、恐怖に立ち向かう事を描きたいのか?
いや、そうじゃない。。。と思う。
なぜなら、デンジに恐怖はないし、だからこそ、立ち向かう事もできない。頭のネジが何本か跳んでしまってバグっているから、心がもう悪魔だから、いずれにしても彼には悪魔へ対する恐怖がない。この境界にいるもう一人の人物がマキマ。
悪魔が恐怖する人間は死を怖がらない人間。それが、デンジ、マキマだとすると死を超越しちゃった人という意味まで飛躍させれば、二人はもしかしたら天使とか神様? ん~これは妄想の範疇かな。
閑話休題。すこし話を戻したいと思います。
悪魔ってなんだぁぁ? モチーフ、もしくはメタファーとしての悪魔だったとして、何のすり替えがあってこのようなレトリックになっているのだろうか。
割と最近インスタントに使われているのが、【七つの大罪×悪魔の名前】の組み合わせ。しかし、今作にはこれらは出てこない。
つまり欲では無さそうだ。
それっぽい所から探しても見つからなさそうな予感がするので、デンジがぶっ壊いしてくれているものから考えてみようと思います。
最初に現れる(厳密には違うけど!)ゾンビの悪魔は、有象無象の手によって自分も有象無象の中に引きずり込まれそうになる所から救ってくれた。
次に(厳密には違うけど!)ヒルの悪魔では、夢バトル(大好きこれ)での勝利により誰かまたは自分からの勝手将来への期待をぶっ壊してくれる。
次に(厳密には違うけど!)永遠の悪魔は、仲間内の損得勘定をぶっ壊してくれた。
そして、サムライソードは因縁を断ち切る。
これらは所謂世間的な生きづらいけど、飲み込まなければいけない理不尽で、デンジの言動には体重が乗る。それは、この作品を好きになった若者の層がこの不条理な世の中に対して、不明瞭だけれど、確かに感じているものだからかもしれない。
そして、これらが受け入れられているし、ダークヒーローとして人気が出ていることからも何となく合っているように思われる。
ルサンチマンを煽るような風潮になっていますが、この風刺に私はぶっ刺されたように思います。
この世の中、頭のネジがぶっ跳んでいて壊れていないと、強く生きていく事なんてできないんだぜ。まともな奴から死んでいく。
んで、悪魔って奴はなんだぁぁ?
多分だけれど、藤本タツキさん表現したいもの。つまり、生きてる中で感じた不条理なマクガフィンを表現するための舞台装置なのかもしれないな、と。
合ってるかは分からないけれど。
こんな主人公は初めて見た!
{netabare}
・パンにジャムを塗って食べたい。
・女の胸を揉むために全力で悪魔退治する。
・好きな人がいても、近くにキスさせてくれる人がいたらキスしたい
・欲望が質素
・欲望が目標に、目標が目的になる短絡的な性格
{/netabare}
彼は世界を救いたいなんて思ってはいない。何なら同僚だって別に助けたいと思っていないと思う。世界を救うよりも、好きな人とのキスを選ぶだろう。
パンにジャムを塗れる日々が続くように。
追記;作画や演出について
よくこのアニメーション作品が映画のように作られているという点が言われているけれど、どういう事? って話になります。
〇映画的なカメラワーク
アニメは構造上平面で奥行きがあるように描くことで立体感を出し、リアルな風景として成立させています。
なので、基本カメラはFixで動かさない。横や縦にスライドする形のPANや応用したローリングといったパース感に変化のないカメラになります。
(パースの変化…机を目線の高さから見下ろすと何となく台形に見えるけど、真上から見下ろしたら長方形に見える、とかって事)
かたや映画はと言えば、3次元を映像として切り取っているので、どんだけカメラを動かそうが不自然にはならない。吐き気がするような気持ち悪いカメラワークはあるかもしれないけれど。
別にアニメでもやればいいじゃんって思うかもしれませんが、簡単じゃない。なぜか。坊やry
パースの変化をアニメで表現するする必要があるからです。
どう大変かというと…。
背景をカメラの動きに合わせて何枚も書く必要がある。そして、変化したパースとキャラの動きを合わせる必要がある。画面の中にあるもの全て。
いわゆる背動(背景動画)。セルで動かす場合もあるので、カットによって違いはありますが、手間がかかりすぎるし、失敗もしやすいのでよほ度大事なカット以外では基本的にはやりません。
しかし、これを膨大な3DL/Oを作成することで、成立させたのがこの作品のひとつの特徴と言っても過言ではないでしょう。
〇映画的な間
時間、空間の切り取りが映画では大事だったりします。(いやそこまで詳しくないけれど)
アニメは1カット4秒以上にでもなれば何となく長尺なカットに感じます。
これは、絵がもたないって表現をすることが多いです。
なので、必要のない間はなるべく削っていきます。
例えば、個人的ではありますが、美術館に行ってゴッホなどの絵を何十分も眺めてしまうような、絵の力強さが全てのカットに込められれば良いのでしょうが、アニメってそもそもそういうものじゃない…っていうね。
絵の掛け捨てをじゃぶじゃぶしているものだから、それで良いんですよ。
先程のカメラワークも止まっていると絵に力が必要になるから動かしたくなる。飽きさせないための手法だったり、演出だったりするわけですね。
例えば、 宮崎さん庵野さんは構図の良さでこれを作り出そうとする監督ですね。カメラワークが無くても、視線の誘導で演出する。庵野さんは視線をあえて狭くして圧迫感をだしつつ演出したりしますね。受話器の間ごしに被写体を映したりするのとか面白すぎる。
構図がしっかりしているとこの映画の間を生み出しても退屈しづらいわけですね。
そして、この間を作り出すためにこちらの監督が何をしているかと言えば、キャラの視線を動かす。時に眼球だけだったり、顔全体だったり、細かい身振り手振りを加えたりしながら、気持ち悪いほど丁寧に間をもたせています。
デンジとマキマの絡みとか、テンポ悪く感じるかもしれませんが、かなり重たい演技をしているので、長尺なカットもだらけない。
とはいえ、この辺り結構チャレンジングな事をしているのは間違いなく、(ただエロイことをしているからじゃない)動きの演技をあそこまでゆっくりと時間を使い、ふんだんに枚数を掛けて作成している。
上手く作品にノレていないと、もしかしたら失敗に映ってしまうところですね。人によってはテンポ悪いなとか思ったかもしれません。
私はもちろん、デンジそこ変われ!って思っていましたので、成功しちゃっている方の人です。
【postscript】
とりあえず12話まで、続き楽しみですー!
原作も一気に読んでしまいました。
マンガもアニメも今後とも楽しみにしています。
この作品を観たら、きっとあなたの胸にもエンジンがどぅるるん!と鳴り響いているでしょう!
疲れたのでそろそろおしまい。
では、よしなに。
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