脳トレ さんの感想・評価
2.3
物語 : 2.0
作画 : 2.5
声優 : 2.0
音楽 : 3.5
キャラ : 1.5
状態:観終わった
具材は豪勢なのに調理の腕が残念
様々なヒット作の受けそうな要素をかき集めたもののどれも上手く扱いきれていない作品、という印象。
島に送り込んだ調査団が「花」になって戻ってきた…のくだりは不気味でワクワクしたし、始めからほぼ無敵の主人公でこれからバトルものとしてどう盛り上げていくのかも興味が湧いた。罪人と処刑人ペアでクリアしなければならない、という条件もバトロワに独特の駆け引きが生まれそうで序盤こそ期待していたのだが―
蓋を開けてみれば {netabare}「死ななそうなキャラがあっさり死ぬ」で意表を突くというパターンの繰り返し。こちらはまだキャラへの愛着もなく勝負の駆け引きもないので初見の驚き以上の感慨はないし、それすらもう既に陳腐化してしまっている。{/netabare}その他、キャラの内面描写やストーリーの展開なども総じて大味。期待していた作画も撮影処理だとかの手間暇はかかってそうだがキャラのデッサンなどは安定感がなく怪しい部分も多いので今の所OPくらいしか見所がない。
1~7話感想
<ストーリー&バトル描写>
雑魚キャラ相手に主人公が無双するか、ちょっと本気出す→次のカットで既に決着、のパターンで序盤はいまいち盛り上がらず。
ダイダラボッチ戦で本格的な戦いが始まったかと思えば {netabare} 今まで斬っても焼いても傷つかず、むしろ武器のほうが砕けるような不死身の主人公が強敵相手にはなぜか一発殴られただけでKO寸前の大ピンチになるよくわからない展開。(ちなみに殴られた本人曰く「受ければ即死」の攻撃だったはずなのだがモロに直撃を受けても「これなら耐えれる…!」なと言ってることがブレブレ。)チャクラとかオーラとかその手の大まかな強さの指標もないので攻撃が効く時とそうでない時の違いが不明。
そんな中で佐切の剣だけが通じる理屈も「人体に詳しくて剣が上手だから」という非常にザックリしたもので人間離れした化物だらけの戦いの中ではちょっと説得力が弱い。せめて作画の力でそこを補えれば良かったが、フルスイング中の敵の指を切り落とすことはできるのに完全に伸びきったひざ裏にはかすり傷すらつけられないというような気の抜けた描写をするので理屈を説明したそばからその説得力もなくなっていく。そして結局最後は佐切のメンタル、やる気次第で勝敗が決まってしまう根性論的な展開。
それでも佐切の精神的成長でカタルシスが生まれるのならいいが、この期に及んで「罪人を切るのにまだ迷いがある…」みたいな今更過ぎる内容ではそれもない。次の瞬間にいつ死んでてもおかしくないような極限の状況で「自分のことは自分で決めたい」とか進路に悩む学生みたいなで事でウジウジやられても心底どうでもいいのである。
{/netabare}
個人的に期待していた人間が花になる謎も上陸して早々サクッとネタバレしたしその見せ方も全然盛り上がらないので肩透かしだった。{netabare}花化の原因である人面蝶は危険の度合いで言えば巨大な怪物よりもはるかに脅威なはずなのに誰も警戒するそぶりがないし、説明のために剣豪の腕を一刺しして以降は存在感がほぼゼロに。
強キャラとの戦闘中は空気を読んで邪魔をしない配慮を見せ、必要とあらば特定のキャラだけピンポイントで気絶させてみたり、早々に脚本の便利アイテムに成り下がってしまいかなりガッカリした。{/netabare}
他にも弔兵衛&桐馬チームなどは{netabare}二人が実は兄弟というネタを全く生かしきれず。例えば二人の関係を伏せたまま他の罪人or処刑人と戦闘になる→弔兵衛ピンチの場面、それまで黙って見ていた桐馬が敵(他の処刑人とか)を後ろからブスリ→ち、血迷ったか桐馬…?!→実は二人は兄弟だった!―とかの方が大好きな意表をつく展開にできたと思うのに、そういう所は何のひねりもなくあっさり秘密を明かしてくる。
また、兄が弟を見捨てた…?!の展開についても、兄が弟を励まし導く回想シーンを先に見せてこいつは弟思いなキャラなんだな、と印象付けた上でやるのなら狙いはわかるが、実際は何故か回想シーンを後にやる意味不明な構成。見てるこっちはまだ兄がどんなキャラか把握していないので弟を見捨てることがさもショッキングな展開のように演出されても(そして仮に本当に見捨てて逃げたとしても)「ああ、こいつはそういう人物なのね」で別に驚きも何もない。{/netabare}
舞台設定もキャラクターも、面白くできそうな要素はあちこちに散りばめられているのに見せ方が雑なせいで全然盛り上がってこないのが本当にもったいない。
<キャラの心情描写>
1話の死にたいけど死ねない画眉丸→本当は生きたい!のくだりは話の掴みとして分かるが{netabare}3話でも邪魔者は誰だろうが殺す→本当は殺すの辛い!でまた同じパターンだし、それを見た佐切の「はっ!そういえば今までも辛そうだった…!!」にいたっては積み重ねも何もない後出しでなにも響かない。 {/netabare}
佐切の抱える葛藤も同様、{netabare}1話で画眉丸に一切の迷いなく斬りかかった後でぽっと出の罪人を斬る時は体がすくんでいたり一貫性がない。
そして迷いがあると言いながらも景気よくポンポン首を刎ねまくっているので、それなりの尺で描いている割に結局何が不満なのかさっぱり伝わってこない。本人にしか分からないコダワリの話を長々とされても退屈なだけである。{/netabare}
また内面描写とは違うが佐切については致命的な言動の破綻もみられる。{netabare}
3話冒頭、島に上陸する際の会話で佐切が「神仙郷が本当に存在するとは思っていなかった」ということが判明する。サラッと流されているがそれはつまり佐切は信じてもいない島や仙薬の話で画眉丸を騙していたということだ。それを踏まえて1話の佐切のセリフをふり返ると
「あなたの願いは叶います!」
「神仙郷から仙薬を持ち帰ればあなたは妻と平和に暮らせるんです!!」
(まぁ本当はそんな島も薬もないから結局助からないんだけどね)
―というわけである。
罪人を死の恐怖で追い詰め、妻への想いを煽り、無罪放免を餌にありもしない仙薬探しに参加させる。2話ではそうして騙され集められた死罪人たちを眺めながら「こいつなら気兼ねなく首斬れそうだな」とか品定めしていたわけだ。佐切はサイコパスか何かなの?
もちろん制作側にそのつもりはなく単なるミスだとは思うが…長期連載の中で話が複雑化して設定に矛盾が出てくる場合ならまだしも、チュートリアルが終わってさぁ本番という場面でいきなりこんなメインキャラの言動がひっくり返るような大ポカをやらかすものだろうか。
「死にたがっている画眉丸→本当は生きたい!」
「弟を見捨てて逃げる兄→やっぱり助けに来る!」
「こいつは強そう→すぐ死ぬ!」
どの話も基本的に○○と見せかけて△△!のパターンで意外性を演出するばかり。場当たり的なドッキリで気を引くばかりでなくもっと地道な描写の積み重ねでキャラや物語を描く努力もしてほしい。{/netabare}
8話感想
典座が主役の回。
命がけで無実のヌルガイを助けようと戦った熱血漢のように描かれていたが作中での典座の行動をふり返ってみると{netabare}
幕府によって家族も集落の仲間も虐殺されたうえ無実の罪で投獄された子供(ヌルガイ)を助けたい
↓
誰一人生きて帰ってこない未知の危険が潜む島に行き、あるかどうかも分からない不老不死の薬を持って帰れば助かると子供に提案
↓
上陸メンバーの選抜、殺人鬼や剣豪や不死身忍者の群れの中で子供が殺し合いをさせられている間ただ横に突っ立って見張ってるだけ
↓
島に上陸後、何の成果も持たずに島から脱出「ヌルガイ君が釈放してもらえるよう俺がお上を説得するから大丈夫っス!」
いやもう全然意味が分からない。
本気でヌルガイのことを助けたいと思い、お上を説得する自信もあったのなら投獄された時点でさっさとそうするべきだろう。
上陸前の選抜でヌルガイが血みどろの殺し合いをやらされてるときどんな気持ちで見てたの?生存者ゼロの危険地帯に連れて行って散々死の危険に晒してから「君は生きるべき人間」「俺が説得するから大丈夫」って笑顔でこれ言うのデスゲームの主催者くらいだよ。浅右衛門はみんなサイコパスなの?
もし島に上陸した後で「当初は予定になかったお上を説得できると確信するだけの何か」を掴んだのだとしたらそれを作中で描かないわけがないしヌルガイも言及してるだろう。おそらくだがこれら典座の破綻した言動も、海の化け物や潮流の見極めなどの「島から脱出できない理由」を見せるためにやらせたものだろう。{/netabare}
つまりここでも脚本の都合優先でキャラとしての一貫性が崩壊してしまっている。仮に原作ではそうだったとしてもアニメ化の際にその辺の矛盾を修正する(セリフをちょっと変えるだけの)事くらいできないものだろうか。
前述の佐切の件といい主要キャラの基本的な心情にすら無頓着なのでいくら感動的な回想シーンを見せられても中身が伴わない上っ面だけで、ウケ狙いが透けて見えかえって興覚めである。
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最終話までの感想
<タオについて>
アイデア自体はいいがどちらかと言うとテーマや思想という感じの観念的な話なので、これをもってバトルの強さの基準・理屈とするにはだいぶ扱いづらい代物だと思う。
画眉丸がタオを体得するに至った「強さと弱さを両立した心」にしても、たとえば妻の存在が彼にとって弱点にも強さを引き出す鍵にもなるということをエピソードとして描いたうえでタオに目覚める、のような流れであれば説得力もあるかもしれないが。実際の描かれ方は「タオを使うには心を弱くしてください→弱音を吐く回想シーン→大体わかった!」みたいなノリなので…元々精神論的な側面が強かったところにタオの理屈でその際限がなくなりキャラのやる気次第でどうとでもなる大味バトルに拍車がかかったように感じる。
またタオを使った戦いにしても天仙などは肉弾戦をやってから空を飛んで気弾を撃ってと、アレコレ語っているわりに結局やってることは普通のバトル漫画と変わらず。タオの登場によって能力バトルとして戦略的な面白さが生まれたわけでもないし相性どうこうは説明がなければ絵的にパッとわからないので単に戦いの内容が分わかりにくくなっている。
<天仙の強敵感の薄さ>
タオの説明や天仙の生い立ち?を語るのはいいが、詳細が分るほどに凄さ怖さよりも底の浅さが見えてしまうのが難点。
肉体的にも陰陽二極を併せ持ち千年間も修行をしてきた天仙が、昨日今日タオを知ったばかりの人間とタイマンで互角、複数人相手では敗北してるので、画眉丸たちがあと少し修行したらもう順当に勝てそうでラスボスとしての威厳が感じられない。
また兄弟チームには結局逃げられて結果的にパワーアップさせてるし、仙汰の場合は死んだふりからの不意打ちだし、まともに戦ってきちんと勝ったのがタオの知識のない典座だけなので大層な肩書の割に実績もしょぼい。
描写的にもダイダラボッチは一発でも攻撃を食らえばほぼアウトだったのに、天仙とはノーガードで正面切って殴り合えてるので(しかも殴り勝っちゃうし)画眉丸の成長を加味しても…ボスキャラとしてどうなの?また巨大化したあとは触手を振り回したり飛び道具を乱射する戦い方もプリキュアに出てくる週替わりの敵キャラのようで絶望感より「もうこの後倒される感」のほうが凄い。演出的には手軽に画面を派手にできていいのかもしれないが観てる方としては長期アニメならともかくワンクールアニメのラストを締めくくる戦いでソレをやられるとなんだかな…という気持ちになる。
あと天仙は花化の毒液?を相手の体内に少しでも注入すれば勝ちなんだったらビームじゃなくて毒霧を噴きつければよかったのでは?
<その他、常に何かしらガバい>
9話:蓬莱の内部も、仙薬の実態も、敵の戦力も一切不明なのに単独で真正面から乗り込もうとする画眉丸、もし戦闘にならなかったとしてあの後プランはあったのか。
島に上陸した人間は天仙が一人残さず殺す…と自分で言ってたのにその天仙がいる場所までメイ探しのためについてきて欲しいと協力を仰ぐ木人。それに応じる佐切一行。
11~12話:天仙に選ばれた者だけが蓬莱に入れる…とか言っていたのに特にためらいもなく門を開いて入ろうとする木人、そりゃ天仙も首切るよ。
天仙に出くわして狼狽える佐切一行。相手は人間を殺す気満々だって聞かされてたのに心構えすらしていない。道中でタオやら宗教体系やら長々語っていたのに肝心の仙薬を手に入れる手筈は何も考えていない。
そして天仙に対して刀を抜いた仙汰に驚く佐切の「それほど杠さんに思い入れがあるのかしら?」というセリフ…いや逆にあの状況で刀を抜かずに事態を収める方法あるの?その後の展開(仙汰の杠への憧れ)ありきの不自然すぎるセリフ。
11話、弔兵衛のバキバキに折られた両腕が一瞬で再生する異常事態に敵も弟も無反応、でも首の痣は気にするズレた観察眼。
画眉丸の炎の壁の時間稼ぎに対してすぐ横に川もあるし空だって飛べる敵が何の対策も打たずただ棒立ちで待っている。ダイダラボッチ戦でそれが原因で致命傷を受けたのにまた目の前の敵から視線を外し味方の方を振り向く画眉丸。
タオの力がなければ攻撃は通じないと道士が説明したその次の回でまだタオを習得していない厳鉄斎がばちっちり道士にとどめを刺している矛盾。
12話、ほとんど機関銃のような攻撃で佐切達を圧倒していた天仙が佐切&杠の作戦会議が始まるとピタリと攻撃をやめて待ってあげる気配り。
天仙(人間態)をチーム全員の連携でどうにか倒した後、同じレベルの相手が最低でもあと6人いると知っているにもかかわらず、他にもどんな化物や罠があるかもわからないのに、敵の本拠地のど真ん中、さっきまでドカンドカン暴れてたその現場でのんびり「僕の夢」についてお喋りをはじめる佐切一行。
13話、復活した天仙相手に犠牲者を出しつつ奇跡の助っ人参入でギリギリ勝利を拾った直後に敵陣のさらに奥に進んでいく一行。もう治療薬もないらしいが今後の具体策は?逃げ場のない敵地で囲まれたら?天仙が二人以上同時に襲い掛かってきたら?どういう判断でその部屋なら安全に休めると思ったの?
<総評>
最後まで作画は安定せず、そこそこ見せ場のキャラのアップでさえも顔のパーツがちょっと…な場面があったり、アクション面でも演出やコンテのキレが凄い!といった見所も特になくむしろ省エネ作画が目立つくらいで非常に残念。
ストーリーの構想はいいが構造はガバガバ。描写や演出も上記の通り緊張感を削ぐような場面が多く、後半はキャラが死ぬ展開もインパクトが薄れ演出の手法も同じ、タオの導入も説明が長いわりにさほど面白さに貢献せずむしろ展開がダレた。
またキャラの内面描写も相変わらずで最後の盛り上がりだった{netabare}仙汰のエピソードも、死ぬ直前になってから実は杠の生き方に憧れていた…とか急ごしらえのエピソードを差し込まれても盛り上がりようもない。
そういう展開にしたいのなら今までの話の中で仙汰が杠に対して共感であれ反発であれ監視役以上の感情を抱いている場面を積み重ねておくべきだったろう。典座の時もそうだがもう助からないことがほぼ確定してからの過去回想はお涙頂戴の意図が露骨すぎてシラケるのでやめて欲しい。{/netabare}
ただ後半は良かった点もあり10話で厳鉄斎が語った彼流の不老不死の野望は人となりと合わせて好感が持てた。11話で自分の妻とメイの境遇を重ねた画眉丸が怒りをあらわにするくだりも、このアニメで初めて強くキャラに共感できたし感情の流れも得心がいった。また士遠が最後に見せた激しい怒りも敵に対するより自分の弱さに向けた所がただのよくできた人物というだけではない善なる狂気を感じさせてよかった。あとヌルガイの「はーい」の返事は可愛い。
話の統合性には期待していないが画眉丸の妻に関するネタなど物語としてのオチをどうつけるのか引かれる部分もあるので、2期ではせめてキャラの感情描写は一本筋の通った内容(迷ったり考えを変えるなという意味ではない)にしてほしい。あと作画も演出もMAPPAならもっとカッコよくできるはず。
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