Dave さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
感情的なAIは何を探すのか?
1.総評
悪くない作品だと思います、評価できる点も多い。しかしちょっと「調味料を入れ過ぎてクドくなった出汁」みたいな、調理の仕方でもっと上を目指せたかなあと欲張ってしまうのは、ポテンシャルの高さ故でしょうか。ですので、ちょっと辛口の評価になってはしまうんですが、決してけなしているのではなくて、惜しいなと思っているとご理解ください。
2.タイムリープの陥穽
ネタバレにならない程度に説明すると…ロボット(作品中ではAIと表現される)が日常生活に溶け込む社会、主人公である歌姫ロボットのところに未来から別のAIがやってきて…というお話なんですが、ここまでは割とシンプルでいいですよね。
タイムリープものは昔からあるジャンルですし、強力で魅力的なギミックです。しかし、いわば「何でもアリ」にできてしまうからこそ、その使用に強力な制限を加えないと、(何度もやり直せるので)話が軽くなってしまったり、(どの世界線がどこにつながっているのかが複雑になりすぎて)訳が分からなくなってしまう。この点が本作の最大の欠点だと思うのです。
1回だけなら、どういう原理で・どういう制限があるのか、という根本的なルール設定を開示しないままでも許せるかなと思いますが、複数回となると…。伏線を貼って回収するのはとてもいいんですが、ちょっとついていけない部分がありました。なるほど、リゼロの作者なんですね…それで納得しました。あちらも最初は素晴らしいんですが、話が長くなるにつれ途中から面倒くさくなっていくのが同じだなと。
3.感情的なAI
もうひとつ本作で斬新というか違和感があったのが、主題であるところのAIがAIらしくないところです。感情がないはずのAIが随分と感情的だし、人間とちがって処理能力の高さが特徴のはずが、ぜんぜん速くないし。たぶん人工知能同士で口喧嘩しないし、したとしても高速でやり取りするはずですし。チ、とか舌打ちしてイライラするような感情が持てるなら、それは非常に高度なAIで、古くは「ターミネーター」や「A.I.」なんかで扱ったテーマを楽々とクリアしてますよね?
それだけ高度な技術があるのに、なぜだかAIにも「死」に近いような概念があるのもちょっと…。サイボーグみたいな、【生身の人体と人工知能の融合】みたいな技術ならまだわかるんですが。本作は、単に不老の人間を見ているかのようです。
4.作画・アクション
とまあ、ここまではけっこう酷評しましたが、作画はかなり良いです。人物もきれいですし、中でも時折「本気」出してくるところがあって、作画陣の気合を感じます。特筆すべきが戦闘アクション。格闘技のモーションキャプチャーですかね?スローで再生しても見応えがあるくらいのリアルなアクション、めっちゃカッコいい。
5.声優・音楽
主人公が歌姫ロボットということで、歌も重要な構成要素の本作。声優さんが歌ってもよかったんでしょうが、ここはちゃんと歌手が代打で入っているので、説得力があります。OPカッコいいですね、なんならこれを作中のメインソングにしても良かったかなと思うのですが、そこは色々と事情があったのでしょうか。欲を言えば、「ウマ娘」とか「ゾンビランドサガ」みたいに、作中曲もキラーチューンだと尚良かったですね。