waon.n さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
絵の熱さと物語の厚さ
【First impression】
背景、キャラ原画だけでなくエフェクトとかすっごいですねー!動画枚数よりも原画が良いなぁーって印象。
また、それだけでなく色彩が面白い。っというか強いので、フィクション感出しまくりで圧倒されたからなのだろうか? どうだろう絵と内容とのコントラストが強すぎて全然内容入ってこなかった? さて、何でだろう? ってそんなレビュー。
※ちょっと(?)批判的な内容になっています。好きな人はご注意を。
【Story synopsis】
かつての戦争で世界はカントウとカンサイの二つに分かれた。
戦後関西は復興し技術も高度に発展したが政治と警察力は衰退し、アクダマと呼ばれる犯罪者で溢れかえることになる。
政府はアクダマに対抗すべく強い権限を持つ処刑課を結成し、これに対抗する。
7人のアクダマがある依頼を受け協力して依頼を遂行していくも処刑課に邪魔されてしまう。依頼を完遂した先で待つ彼らの運命は果たして……。
【Staff】
制作会社 studioぴえろ
原作 小高和剛
監督 田口智久
美術監督 谷岡善王
美術設定 青木薫
色彩設計 合田沙織
作画監督 小澤早依子(2・6・11話)
本作品ではやはり、その絵力が魅力であります。良質なアニメって感じですね。美術関係がスゴイので美術監督と美術設定、色彩設計を担当した方々の名前を上げさせていただきました。また、特に良かった作画の話数(11話は複数名の作画監督がいます)を担当した作画監督の小澤早依子さんの名前は今後の自分のためにもメモメモって感じです。
【Review】
冒頭で触れたように、絵と物語設定のバランスが悪いなーって感想ですねかね。
というのも絵の強さに対して、物語のディティールが弱く説得力に欠けていたように感じられるのです。
絵が強かった分“ディティールの弱さが隠れて楽しめた層”と逆に“浮き彫りになり、より弱く見えてしまった層”に分かれていると思います。
絵の趣味が合わないのではなく、絵に物語の厚さが合っていないことで楽しめなかったんじゃないかと思います。
上記のように書いたからには、どこがチグハグなのか、って話をしなければならないと思います。
実際1話目とかプロモを見た時の期待感は半端なかったです。と言うのも、『ブレードランナー』の未来的映像を再現したアニメはあるにはあるけど、ここまで露骨に表現してその完成度の高さに圧倒されたのは押井版攻殻機動隊に次ぐ感じですね。より真似をしているって点ではこの作品の方が露骨なので、比べるのは間違っているように思いますが。
まぁ、とりあえずメッチャ萌えたって事ですね。この絵で表現した未来像に興奮したのは間違いないです。最近のSFからするとちょっと古く感じてもやっぱカッコいいんだよなって感じです。
その結果とにかくハードルが上がりまくったことは一つの問題点だったかもしれません(笑)
カンサイとカントウという名称を使った瞬間にそれは日本で起きたことを連想させます。これは違う世界の話なんですよなんて事言われて「ハイそうですか」とはなりません。というか頭の中でカンサイとカントウの位置関係とか諸々を現実と結び付けてしまうのは自然ですよね。この時点でこの物語はファンタジーではなくフィクションになります。
地名とか意識して付けるものなんだからフィクションとして見せたいんだと感じるのが当たり前なんですよね。
じゃあ、フィクションとして考えた時に、カントウとカンサイは果たして本当に戦争をするだろうか、またカントウは新型爆弾を使用してカンサイをぶっ壊して、その後、復興支援して何がしたかったのだろうか。ここが見えてこずに疑問が残ったままです。イントロダクションに説明でもあればなぁ、と思いました
でも、アメリカと日本というモデルをカントウとカンサイで表現していて、なかなか風刺が効いているのは面白かったですね。カントウの状況が見えた時には思わず笑ってしまいました。躊躇なく要約したところはクールです。
それにしても、すぐ近くの隣国に新型爆弾を落とすかな。という問題は解決されません。
崩壊した世界を映像として映すためにある設定であり、物語の下地になっていないように感じれらます。端的に書くと設定に繋がりがないってところですかね。
例えばソマリアのように内戦しているような国であれば、これって現実と繋がるように思えます。それでも新型爆弾(一つの都市がぶっ飛ぶほどっていうか核爆弾がモデルっぽい)小型であればあり得るかもしれないが……。
やっぱり、カンサイとカントウが戦争になるという前提がどうして起こったのかを伝えなければ、ただのご都合設定になってしまうんですけれどね。とはいえ、見落としの可能性だって十分にあります。しかし、残念ながら一人の視聴者には届かなかったという事ですね。
ただのアニメでファンタジーしてるなって雰囲気の作品や絵であれば、多分それとして楽しんだでしょう。嬉しいんだか悲しんだかこの作品はアニメの質が高いんですよね。そのため、ディティールを求めてしまいました。
あれだけ世界観のある絵なので、その絵がある理由が物語にはないとただのハリボテのように感じてしまうんですよね。
物語のコンテキストが上手く構成できていないため、序盤から終盤までキャラが何をしたかったのか分からなくなっています。この物語で何を描きたかったのかは見えたような気がしています。
キャラに焦点を当てて作品を観てみると、アクダマたちの行動って動かされてばかりなんですよね、悪である自由さのような快感が感じられず、全くアクダマらしさがありません。爽快感がないという結果に。
懲役何年と表示されているだけですよね。殺人鬼さんは殺人鬼というか精神病患者の様子だし、喧嘩屋はただのバカで、運び屋とハッカーは中二で医者もなんかサイコで実は~みたいな感じ。キャラが濃いんじゃなくて、キャラが作り物すぎるのではないでしょうか。それこそ『ダンガンロンパ』みたいです。
各話のタイトルに色々な映画のタイトルつけるなら『沈黙の羊』でも観てカッコいい犯罪者を学んでも良いのではないでしょうか。
まるでゼンダマを観ているようでした。
終盤での民衆の暴動に関してもそうですね。それまで市民たちの生活がどんなものであるのかを描かれていないので、どんな不満があり、不安があり、政治に、政府に何を期待しているのかが見えていない。
この最後の数話では映画の『JOKER』における暴力の連鎖。つまり、アクダマの感染や増殖のような切り取り方をしているように感じられました。
しかし、ここでも上記の理由からディティールの薄さを感じずにはいられませんでした。
物語を不自然に動かしても、それでも絵の強さで行くんだ! みたいな根性は感じました。とはいえ、物語を不自然に動かしている自覚があったかどうかは不明です。
絵の強さ、緻密さによって物語に求めるディティールも変わるんだなという気づきがありました。
例えば、今期の『戦翼のシグルドリーヴァ』はその設定と絵のバランスが良かった。またフォーカスしたのもキャラという分かりやすく設定は置いておいても楽しめるものにしてありました。
本作品では彼らの生き様を見せたかったにしてはキャラが強く、そして薄い。風刺を利かせたいにしては、現実とのつながりが薄い。教訓を与えたいのであれば、下地が薄い。
原作がもう少しちゃんとしていれば、もっと面白いものになったのではないでしょうか。
【After】
なんか批判的な内容となってしまいました。言い訳するとちょっと悔しかったんですよね。絵もモチーフもメッチャ好きで、こんだけカッコいいのにあんまり楽しめなかった。というところに悔しさの根源があります。
本来であれば、おススメしたいアニメをレビューしたいというのが趣旨なのでブレてしまいました。
それにしても、最終回に『プライベートライアン』のワンシーンをパロったのを観た時には“好み合わないなー”って結論に至ったのは謎。ブレランの世界を一緒に楽しめると思ったのに……。
思ったことを書いたのでスッキリしましたが、この作品を好きな方には少し申し訳ないです。注意書きを最初に付け足しておこうかな。
10