芝生まじりの丘 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
人造主義の世界
VRMMO的世界の根底に存在するのは人に作られた世界を是とする思考である。
VR世界において散策・観光を行うことを現実世界の観光よりも楽しむ。人によって作られた武器をとり、人によって作られたモンスターと戦い、人によって作られた箱庭を冒険する。
そうしたものを現実世界よりも面白いとする考えに対して自分は心の底から肯定できはしないだろう。
結局それは奴隷の生活のように感じられるからだ。
想像によって人はいかなることも行うことができ、そこに際限はないのだ、とリチャードバックは言った。しかし、私はその言葉を愛しつつも、懐疑する。結局のところ我々の生み出した芸術や美しさといったものは現実からモチーフを得ない限り、存在しえないのである。物語のモチーフにはいかなる幻想物語であっても現実との関連性を免れ得ないのである。我々の生み出すかに見える芸術の美は結局のところ全ての魅力を他の何かから借り受けているのである。
少なくともVRMMOの箱庭の中で完結する物語というのは何か異世界転生以上の物悲しさが存在する。
そこでのいかなる強さも問題も悲しみも薄っぺらなものに見えてしまう。
しかしその薄っぺらさそのものが現代というものを表しているかもしれない。
作品の内容についてもっとも大きなツッコミどころは、極振りなどというのはゲーム初心者の多くが一度は試すことであってそこに何らの斬新さや開発者の驚きを誘うことはないことである。この作品における「創意工夫」と呼ばれるような全ては存外ありきたりであって作品内で語られるような形容句は違和感を感じさせる。