とまと子 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「海獣の子供」体験記
わたしには14歳年の離れた兄がいます。
同じ都内にばらばらに暮らしているのですが、ある日連絡してきて、
「海獣の子供というアニメ映画をみたいんだが、おっさんひとりで見に行くのは大変につらい。そこでお前に付き合って一緒に見に行って欲しい。というか付き合え。」
とのことでした。
兄妹ふたりでアニメ映画見に行くなんて気持ち悪いですか?
わたしは気持ち悪いです(笑)
でもそういうわけで、まったく何にも予備知識も心構えもなく映画館でこれを見ました。
背中からドンっ!って夜中の海に突き落とされたみたいでした。
大量の色が線が光が動きが、音が音楽が波が海が、わたしを飲み込みました。
凄まじい、体験でした。
この映画は全部、人が描いた絵でできています。
アニメ映画だから当たり前ですよね。
でも、これを見ていただけたなら何故わたしがこんな言い方をするかわかってもらえると思います。
この映画は、全部、人がその手で描いた絵でできているんです。
海も、空も、星も、雲も
夜空も、夜の海も、人間も、魚も
銀河も、光も、響き渡るクジラの歌も、宇宙も
なにもかもが何百枚も何千枚もの人の絵の積み重ねで語られ
それはもう、ストーリーなんてなくたって構わない
エネルギーが、感情が、誰のだか何の生物のだかもわからないような思いが、吹き上げて、渦を巻いて、もの凄い音をたてて、わたしの中に突入してきました。
興奮しておかしくなった人みたいですか?
そうかもです。
わたし、少なくともこの映画を見たあと数日間は、興奮しておかしくなった人になっていました。
今でもまだ、”レビュー”なんてとても書けません。
だって自分があの日何を体験したのか未だにわからないんだもの。
好みかどうかときかれたら、ひとりだったらきっと見に行ってはいないでしょう。
神秘的な雰囲気のアニメは好きですが、わたしは海か山かと言われたら断然山派です。
宮沢賢治大好きっ子です。
なんだかなーっていうような兄のせいで、不得意分野にいきなり放り込まれました。
でも、わたしはこの映画のことは、あの夏の日の体験のことは、絶対忘れないと思います。
「海獣の子供」は、そういう映画でした。
え?
兄ですか?
寝てました(笑)