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「リズと青い鳥(アニメ映画)」

総合得点
86.0
感想・評価
572
棚に入れた
2372
ランキング
217
★★★★★ 4.1 (572)
物語
4.0
作画
4.3
声優
4.0
音楽
4.2
キャラ
4.1

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リズと青い鳥の感想・評価はどうでしたか?

ネタバレ

はく さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

良い意味で騙された

個人的には今までの映画の中でもかなり面白かったと思います。
まずはやはり作画の違いに驚きました。最初、ユーフォニアムの映画だと気づかなかったです。
本編の作画の希美、みぞれも良いですが今回の作画はこの『リズと青い鳥』に合っていて良いなと思いました。私は『リズと青い鳥』に関してはこの作画で正解だったと思います。

言葉で説明するのは難しいのですが
ユーフォニアム本編の方は色が濃くどっしりとしたような作画。
《部活動での熱い青春》《全国大会出場を目指す》みたいなそのようなものが伝わってきます。

『リズと青い鳥』の方は鮮やかな薄い色で淡く切ない作画。
《片想いの恋愛(もうこれは百合の恋愛だよね!)》《『リズと青い鳥』の切ない物語》《希美とみぞれのすれ違い》この辺を訴えるにはすごくしっくりくる作画でした。

部活動を通した全国大会出場を目指す友情の青春と、部活動関係なく抱いていた友情・恋愛の青春、これは全く別のものだと思います。なのでそこの作画の使い分けがとても好きでした。

 この映画には2度騙されました(良い意味で)
1,フルートのエースと言われていて友達も多くて全て上手くいってそうな希美が実は進路が決まっていなかったり、のぞみの足を引っ張ってしまっていたこと。
2.リズがみぞれで青い鳥が希美だと思っていたら実は逆だったこと。
映画を観ていて(そうだったのか!)と思わされました。そこがこの映画の面白さでもありますね。

 よくある描写かなと思うのですが
上手くいっているように見えて→だんだん違和感を出す→実は上手くいっていなかった
という方法。ただ、この作品は少し違ったように感じました。
希美の違和感をじわじわと出していくのですがその違和感も一瞬の表情のみで、しかも回収がなかなか来ないので(あれ、勘違いだったかな?)と思わせられました。
でも確かに違和感はあるしこのまま終わるわけがない、やはり最後の最後で回収されました。
これもやっぱりうまいなあと感じました。上映時間1時間31分をうまくいっぱいに使ってるなと感じました。

 本当に素敵な作品でした。吹奏楽アニメならではの音や、細かい作画の動きなど劇場で観れてよかったです!

投稿 : 2024/12/18
閲覧 : 233
サンキュー:

8

白毛和牛 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

みぞれと希美が主人公のスピンオフ作品

何だかキャラデザを初めに作中の雰囲気とかも本編と比べると随分と印象が変わったけど、
ただ内容としてはみぞれと希美の2人の関係性を描いたストーリーが非常に面白かったのと、
そして相変わらず京アニらしい映像美を堪能させてくれた所も素晴らしかったです。

【評価】

88点・2A級

投稿 : 2024/11/23
閲覧 : 84
サンキュー:

3

ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ムムッ!出たな、怪人シロ眼鏡!

原作は未読だけど、TVアニメ版は第1期、第2期とも視聴済み。

何やかんやで映画館には見に行けなかったけど、BDを購入して、ようやく視聴できました。
そして、比喩と対比に秀でた演出を少しも見逃したくなくて、何度も何度も視聴しています。

チョット熱めのレビューになりそうだったので、タイトル”だけ”は遊んでみました(笑)。
本当は《比喩と対比に秀でた作品》とかにしようとも思ったんですけどね。

『響け!ユーフォニアム』の劇場版第3弾。
ただし、完全新作としては初めての作品となります。
(劇場版の第1作と第2作は、総集編みたいな作品でしたからね)

【今作の主役は・・・】
{netabare}TVアニメ版で描かれた北宇治高校吹奏楽部には、3人のエースがいました。
ユーフォ担当のあすかとトランペット担当の麗奈、そしてオーボエ担当のみぞれ。
全国大会出場を果たしたのも、この3人の力によるものと言っても過言ではないと思います。
強気なエースのあすかと麗奈とは対照的に、無口でおとなしいみぞれが今作の主人公です。{/netabare}

【驚くほど男性が登場しない作品】
{netabare}男女共学なのに、男性部員もいるのに、ほとんど男性を見かけない、不思議な作品。
滝先生と橋本先生、担任の先生以外、男性の声を聞くことも無い、不思議な作品。
(恐らく)男性なんて眼中にない、『みぞれ目線で描かれている作品』であることがうかがえます。{/netabare}

【そして、もう1人の主人公・・・】
{netabare}もう1人の主人公は、南中時代にみぞれを吹奏楽部に誘った、フルート担当の希美。
彼女は、みぞれとは対照的に、明るく人付き合いの良い性格です。

そんな希美が、みぞれにとって『何よりも大事な心の拠り所』というのが本作の重要なポイントになります。{/netabare}

【2人の関係を関係性を、分かりやすく表現した導入部の演出は見事!】
{netabare}本作の冒頭。
一足早く学校に着いたみぞれが、階段に座って希美を待っているシーン。
すぐに靴音が聞こえてきますがみぞれは無反応。
やってきたのは希美ではなく別な生徒。
さらに、その後、別な靴音が聞こえてきます。
大きく目を見開いたみぞれは、靴音の方へ振り返ります。
そこには、さっそうと歩いてくる希美の姿が!

昇降口で下駄箱から上履きを取り出すシーン。
上履きを無造作に足元に放り投げる希美と、対照的にそっと足元に置くみぞれ。
ところが、希美が下駄箱の角を触りながら通り過ぎると、同じところを同じように触りながら通るみぞれ。

廊下を、背筋をピンと伸ばし、手を振りながら跳ねるように歩く希美と、あまり手を振らず静かに歩くみぞれ。
一見、2人の歩くペースは全く違って見えるけど、2人の差はほとんど広がらない。

開始数分の、この冒頭のシーンを見るだけで、みぞれと希美の性格や2人の関係性が、よく分かります。{/netabare}

【まあ、本当は{netabare}絵本の中の{/netabare}シーンから始まるんだけどね(笑)】
{netabare}絵本のような色鮮やかで優しいタッチの絵本の中の世界。
まさか『BDの中身が違う!』とまでは思いませんでしたけどね(笑){/netabare}

【TVアニメ版の1、2年生が進級して、新1年生が入部して・・・】
{netabare}本作において一番大きいのは、オーボエ担当のみぞれに後輩が出来たことでしょうか?
剣崎梨々花。
彼女の人懐っこさと根気強さが、みぞれの成長を促していきます。
本作の序盤から中盤の立役者です。
みぞれと梨々花のオーボエのアンサンブルのシーン以降、物語が大きく動き始めます。{/netabare}

【みぞれにまつわるTVアニメ版の第2期第5話との対比】
{netabare}『(コンクールのことを)たった今、好きになった』
第2期の第5話のエンディング。みぞれが満面の笑みを浮かべながら言った言葉。
しかし、この作品の序盤。みぞれは全く真逆の言葉を呟きます。
『本番なんて、一生、来なくていい』

みぞれにとって、希美に聞いてもらうことを想像しながらする練習こそが至福の時、というせいもあるでしょう。
第2期の第1話で紹介されたように、みぞれはいつも音楽室に一番乗りするほど練習好きです。

しかし、最大の理由は別にあると思います。
『本番の終わり』は『卒部』を意味し、『希美との別れ』を連想させるせい、というのが一番の理由?

今年のコンクールの自由曲の見どころは、オーボエとフルートのソロの掛け合い。
言うまでもなく、担当はみぞれと希美。

ところが、2人のアンサンブルは、滝先生のみならず、周囲からも心配される程、上手くいかない。
一番の原因は、いまいち乗り切らないみぞれと希美の心の中にあるようです。{/netabare}

【希美サイドの物語を大きく動かす、「後輩」と「スカウト」!?】
{netabare}みぞれをプールに誘う希美。
「ねえ、希美。他の娘も誘っていい?」
みぞれの申し出に、希美は『珍しい』って言ったけど、本当は初めてだったのでは?
みぞれに自分以外に大切な人が現れたことに対する、希美の『嫉妬』がうかがえます。
もっとも、希美自身は全く気付いていないようですけど・・・(笑)。
だから希美は、『みぞれが自分によそよそしい』って感じてしまう。
『1年生の時に1回吹奏楽部を辞めたこと』
これは希美にとっても大きなトラウマ。
「これが原因で、みぞれがよそよそしいんだ」と勘違いしてしまう。
本当は、知らず知らずのうちに、自分の方が距離をとっていることに気付かずに。

もう一つの大きな出来事は、新山先生によってもたらされます。
みぞれが新山先生から音大に『スカウト』されます。
初めて聞かされた時、希美が『スカウト』の重みを計り知れなかったは致し方なかったと思います。
だから、みぞれに対して『私も音大に行こうかな?』なんて、軽々しく言ってしまう。

「私、音大受けようと思っていて」
「あら、そう。頑張ってね」
新山先生の、当たり障りのない社交辞令な返事。
みぞれにマンツーマンで指導する新山先生。
それを見つめる希美の心中には、今度は希美にもはっきりと感じられる『嫉妬と羨望』の感情が・・・。{/netabare}

【物語を大きく動かすのは、北宇治高校吹奏楽部のもう1人のエース】
{netabare}この状況を黙って見逃せないのが、新生・北宇治高校吹奏楽部のもう一人のエース、麗奈。
「すみません。実は自由曲のオーボエソロがずっと気になっていて」
「先輩、希美先輩と相性悪くないですか?」
「なんか、先輩の今の音、凄く窮屈そうに聞こえるんです。わざとブレーキ掛けているみたいな」
麗奈ならではの表現で、みぞれに問題点を伝える麗奈。
「でも、私は先輩の本気の音が聞きたいんです」
みぞれの抱える問題点はみぞれ自身で乗り越えるしかない問題点。
麗奈は、自分の希望を伝えることで、それを促そうとする。

麗奈の行動はこれだけでは終わらない。

麗奈は、ユーフォニアムの久美子を誘って、校舎裏でみぞれと希美のソロパートを演奏します。
この演奏をみぞれと希美が聞いていたのは偶然ではないでしょう。
肝心なことを言葉で伝えることが苦手な麗奈ならではの伝達方法。{/netabare}

【誰がリズ?誰が青い鳥?】
{netabare}みぞれと希美。
初めは、2人とも同じことを感じていた。
『みぞれがリズで、希美が青い鳥』
ところが、そうじゃないってことに気付いた2人。
さて、この作品の中で2人が導き出した回答は・・・???

実は、この結論って、作品のなかではキチンと描かれていませんよね。
視聴者に委ねられているというか・・・。

私なりの解釈は・・・、
{netabare}みぞれにとっては、リズも青い鳥も、どちらもみぞれ。
希美にとっては、リズも青い鳥も、どちらも希美。
絵本の中のリズと青い鳥を、どちらも本田望結ちゃんが演じたのは、その象徴なのでは?って。{/netabare}

きっと、色々な解釈があると思うんですよね。
あえて正解を描かない演出って、素敵だと思います。{/netabare}

【圧巻のオーボエソロ】
{netabare}いよいよ、『怪人シロ眼鏡』登場ですね(笑)。
私のような素人が聞いていても感じることの出来る迫力ある演奏。
言うまでもなく、本作の見どころの一つです。

演奏終了後の先生たちや部員の姿からも、圧巻の演奏であったことがうかがえます。

演奏中、思わず涙を零す希美。
これは寂しさからくる涙だったのでしょうか?
これは悔し涙だったのでしょうか?
どちらにしても、周囲の人たちとは違って、ただの感動の涙ではなかったことだけは間違いないと思います。

覚醒したみぞれの演奏を聴いて、初めてみぞれの旅立ちを悟った希美。
自分では辿り着けない表現力を見せたみぞれに抱いた、希美の思い。{/netabare}

【山田尚子監督の真骨頂:随所に散りばめられた比喩と対比】
{netabare}今作も、足を使った感情表現の手法は、完璧でしたね。
それとともに、作品の中の至る所に散りばめられた比喩と対比の表現も完璧。
視聴を繰り返すほどに、新たな発見があるほどです。
このきめ細やかさ、丁寧さは、さすが京アニ、さすが山田尚子監督です。{/netabare}

【らしさを見せた他の登場人物。ただし久美子以外は・・・(笑)】
{netabare}デカリボン優子とポニテ夏紀は、みぞれや希美と同じ3年生で同じ南中出身。
2人とも、良い味を出してましたよね。

北宇治カルテッドの麗奈も強気キャラ全開だったし、葉月とサファイヤも癒しキャラ全開!

だけど、久美子だけは影が薄かったような・・・(笑)。{/netabare}

【キャラデザについて】
{netabare}この作品を見た後でTVアニメ版を見ると、TVアニメ版のキャラデザは少し子供っぽいように感じました。
そう思うと、本作のキャラデザは大人っぽいのかなぁ・・・と。
少女から大人への成長を描く本作では、このキャラデザで良かったと思います。
少なくとも、誰が誰だか分からないようなレベルでは無かったし(笑)。{/netabare}

【最後に】
こうやってレビューを書いた後も、繰り返し視聴が止まりません。
『響け!ユーフォニアム』という作品は、本当に奥深く、中毒性のある作品今後もこの作品から目が離せそうにありませんね!

投稿 : 2024/09/17
閲覧 : 632
サンキュー:

74

ネタバレ

とまと子 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

畏れふるえる まだ飛ばぬ翼よ

窓枠で囲まれた鳥籠のような「学校」という時間
群れ遊び さえずり交わす生徒たちの中にあって
切り取ったようにひとりだけを見つめる みぞれ
軽やかに跳びまわり屈託なく人と交わる 希美

ふたりの少女は 同じ場所に背中合わせで立つように
ひとりは外むきに ひとりは内むきに
オーボエとフルートという それぞれの音楽を通して
自分自身を確かにしてくれるものを探しています



心というものを何かで表すとするならば
それは「音」にいちばん近いのかも知れません
この映画もまず「音」からはじまります

希美の跳ねるような足音 揺れる髪のリズム
後ろから追うみぞれの足音 ぼんやりと響くエコー

みぞれの心には 階段の五線譜に音譜が乗っていくように
希美を見つめる想いが音楽となって積み重なっていきます

実際に ご自身も音楽を愛してやまない山田尚子監督は
場の空気を音にすることと 絵にすることとを同時に進めて
この凛と張りつめた導入シーンを作り上げられたそうです


全編にわたって 無駄なカットも要らない間合いも
この物語に不要なものはなにひとつありません
誰が見ているのか 視線の先には何があるのか
考え抜かれ 選び取られた一枚いちまいのカットが
砂時計の砂粒を数えて切り取ったようなタイミングで
つながって流れ ひとつの音楽になっています

すこしだけ傾く横顔 さまようようなまばたき
空間を満たすもの音 ちいさく耳の奥を打つような音の残響
近づき 遠のき 覗き込み 見つめる視点
一本の線 測れない程の角度 数ミリの動き  

そしてこの 青
何より印象的なこの映画を満たす澄んで重なる青色は
厚いガラスの瓶に閉じ込められているようでもあり
遠い空を映す水たまりの水面のようでもあり
まだ何者でもない時間の不安と自由と 寂しさそのものです



青い鳥はリズが教えてくれた赤い実を懸命に集めます
それは希美がくれた音楽 二枚のリードを結ぶ赤い糸
上手く語れない者ほど 伝えたい気持ちは強く
大きな翼ほど 羽ばたくのは難しい

リズはずっと戸惑っています
青い鳥は空を映した湖のよう
純粋で繊細 それはわたしの大切な音楽のように
わたしから離れることはないと思っていたのに


みぞれの音楽は一緒に生きていくひとのため
希美の音楽は生きていく世界を鮮やかにするため

でもそれでは上手くいかない
上手く いかないのです



新山先生とみぞれとの 向かい合っての会話があります
行動をなぞるだけではなく 心の中を想ってみては?
もし誰かのことを 自分のことを知ろうとするのなら 
想うための心の翼 想像力を使いなさいと

そしてみぞれは そして希美は
それぞれが相手だけを見るのではなく 自分自身を見つめ
自分たちが互いに違う 独立した存在であると思い至ります


軽やかに輝く おしゃべりなブルートパーズの瞳も
自分がみつけた もの静かで力を秘めたガーネットの瞳も
その宝石は 自分自身のものではありません
それを知ることは 生きたまま心臓を剥がされるような痛み

希美は「みぞれの全部が好き」とは言ってくれない
みぞれは「希美のフルートが好き」とは言ってくれない

それぞれが激しい憧れと焦燥で血を流しながら
自分の中に同化していた相手を切り離し
それぞれの違う世界への旅立ちを見届けることになります



そして ふたりの行き先は別々になって
みぞれは音楽室で譜面を 希美は図書室でノートを
ふたりは初めて 同じ動作で次のページを開きます

そこへ向かうみぞれのステップは軽やかにスカートを揺らし
後ろから憧れて見つめていた希美のポニーテールのリズムは
今はみぞれの髪先に宿って テンポよく揺れ始めます

物語の最後 二羽の鳥は揃って学校という鳥かごを出ます
ここが外への扉だよ と手を振り知らせるのは希美
嬉しそうに微笑んで それを超えていくのは みぞれ

ふたりの歩調ははじめてぴったりと重なり
お互いを向き合うところでこの映画は終わります


そしてきっとここから
ふたりにとってはじめての
次の曲が始まるのです



京都アニメーションという錬金術工房で
何層にも重なり繋がれたガラスの濾過装置を通し
一滴一滴滴り落ちる宝石のしずくを集め積み上げて
この映画は作られました

わたしにできることは ただ
息をひそめ まばたきもせず
そのすべてを漏らすことなく受け止め
この心を震わせることだけです
 

投稿 : 2024/09/09
閲覧 : 53
サンキュー:

5

ネタバレ

やまげん さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

等身が高い

原作は読んでいない

本編と絵が違うので敬遠していたが、本編のシリーズを最後に見てからだいぶ時間が経って、本編の絵の記憶が薄まってきたのでいい機会と思って視聴

{netabare}作画の方向性については、淡いタッチもさることながら、キャラの等身が高くてびっくりした。特に、劇中劇のリズと青い鳥のキャラは、さすがに等身が高すぎるのではないかと思った
作画そのものは、冒頭でみぞれと希美の歩き方やしぐさの違いを描き分けていたり、各場面での表情や動きだったりを丁寧に描いていたりと、京都アニメーションらしいクオリティーの高さだった

物語は、本編では割と一大事だったけど、描写はあっさりだったみぞれと希美の関係のその後が描かれていて、気になっていたことだったのでちゃんと消化してくれてよかった

エンディング曲の2曲目「Songbirds」は、spotifyでたまたま流れてきたのを聞いてからお気に入りに登録して聞いていた曲で、英語歌詞でジャケ絵も海外アーティストっぽかったから洋楽だと思って聞いていた。この映画で使われている曲だとは全く知らなかったので普通にびっくりした
エンディング曲に海外アーティストの曲を使うなんておしゃれだなと思って改めてどんなアーティストか調べたら、思い切り日本のアーティストでさらに驚いた {/netabare}

投稿 : 2024/08/11
閲覧 : 74
サンキュー:

6

ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

蒼き リミナリティー。

第一楽章  


《 あめゆじゅとてきてけんじや 》

あめゆじゅ とてきて けんじや。

『おれはひとりの修羅なのだ。』で有名な宮沢賢治の「春と修羅 心象スケッチ」に載る「永訣の朝」という詩にある一文です。

「あめゆじゅ」は「雨雪」、「とてきて」は「取ってきて」、「けんじや」は「くれませんか」の意味です。
岩手県花巻の方言で、賢治のすぐ下の妹、トシの言葉です。

肺結核を患い床に臥せていたトシが、ついに末期を悟り「雨雪を(口にしたいから庭に降り積もっているのを)取ってきてください。」と兄賢治に頼んだ情景とその気丈。
つとに胸に迫ります。

「あめゆじゅ(雨雪)」は、「霙(みぞれ)」のことです。

霙はわずかな気温差で、雨になったり雪になったりします。
物理学ではこの物性を「二相系」と呼ぶそうです。

みぞれを「あめゆじゅ」と誦するのが奥ゆかしくて、本作のヒロイン鎧塚みぞれにもその印象が重なります。
もう一人のヒロイン傘木希美、そしてふたりの関係においても「二相系」はたいへん似つかわしい言葉のように感じます。

「春と修羅」には「無声慟哭」という詩も載せられています。
これは賢治の造語なのですが、24歳という若さで夭逝したトシの気高さへの "真実" を表わしています。
同時に、本作の "演出" にも通底し、希美とみぞれ、双方の胸奥にも触れ得るものではないでしょうか。

友情とも恋情とも言えぬ境界層。
淡くて激しい疼きの納めどころ。

ふたりの「訣別」を、賢治が亡失した兄妹愛、「永訣と慟哭」から浮き彫りにしてみたい・・・。
そんな気持ちになりました。

(実は、『雲の向こう、約束の場所』でヒロインが朗読するシーンがあります。こちらも象徴的な演出。心が震えます。)


~   ~   ~   ~   ~


「響け!ユーフォニアム」は、原作もアニメもぞっこんな私。

本作は、本流・久美子とは一線を画する「もう一つの奔流」です。

水槽の内側にいると、安寧の心地よさはありますが、それでは自らの "少女性" も生半なままです。

"リズと青い鳥" は、うちからそとへ、大人の世界へと踏み出すための "それぞれの挑戦" なのです。


小鳥の少女とリズの語らいは "心躍る歓び" だけではありません。
そこには "微かな煩い" も見え隠れしているのです。

それでも精一杯、おどけあったり、思わせぶったり・・・。
もっと、もっともっと伝えたい気持ちがあるのは本当のこと。



でも、二人は「訣別」を迎えるのです。

・・・ 美しく、卒業するために。



みぞれが日常にもソリにも行き詰まるのは、「訣別」をどう表現すればいいのかわからないから。
いいえ、むしろソリだと思うからこそ、希美を抱き込んでしまうのでしょう。

心をどれほど近くに寄せようとも、道はやがて逸れていきます。
必ずやって来る気色ばむ瞬間を、みぞれは「あめゆじゅの思い」で伝えられるのでしょうか。

切なさと儚さを織りあわせながら、好きな人の幸せを祈り、遠くからいたわりを示すことを知る少女たちの姿。

すっかり心を奪われている私です。


ダイナミズムにあふれる本流・久美子が湧き起こすカラフルさとは明らかに異なっているのは、ブルーを基調トーンとし、視聴覚を転相させる大胆なカット手法。

希美の "音楽" への渇仰と、みぞれの "友だち" への憧憬の "アンビバランス" が、少女特有の神秘性のうちに強調され、シンボライズ化されているように感じます。

比類なき演出に、心が躍ります。


~   ~   ~   ~   ~


みぞれと希美は "等身大" の奏者として絶妙なバランスで描かれています。

さきに音楽性を求めてきた者と、あとに音楽性で求めようとする者。
いつも交友を広く浅く扱える者と、交情を深く濃く設えたい者。
ともに実力者でありながら、全国を知らない者と、知りえた者。

不思議な気持ちになるのは、溌剌と自信に満ち、音楽性を希求してきたはずの希美が、自らのそれに拘らなかったことです。

物語としては、いわゆる "技術面での限界" という部活あるあるで理解できないわけではありません。
でも、私には少し引っかかっているエピソードなのです。

原作を読むと気づくのですが、この自己承認欲求への処し方は、久石奏のそれと対比になっています。

希美のポジションは奏のそれに近く、集団のなかでの振る舞いに長けています。
希美にはみぞれが対置されており、奏には久美子になるのでしょう。
そして久美子には、あすか、優子、麗奈ら、錚々たるラインナップが揃っています。

希美と奏の内面性の近似点をよく見ると、みぞれと久美子の感化力の違いがありやかに浮き出してくる・・・そう感じるのです。

本作では、奏はもちろん、久美子ですら脇役です。

とは言っても、本作、原作ともに、まるっきり接点のない希美と奏の間に立っている久美子のポジションは、『響け!』シリーズならではの「ユーフォっぽさ」が十二分に味わえるシチュエーションだとは言えないでしょうか。

スピンオフ作品でありながら、青春群像を動かしている久美子の魅力がここにも活きています。

ファンには垂涎ともなる舞台装置。
なんとも心にくい脚本です。


~   ~   ~   ~   ~    


物語は「全国へ」と目的を一にする尊さに寄せようとします。
ですが同時に、訣別をふたりの時間に含ませるのです。

「さよならなんて言いたくない。言ってほしくない!」
久美子が自身に、あすか先輩に絞り出した惜別の響き。
それは久美子にとっても欠かせないエピソードでした。

別れは遠くにあるようでも、必ずやって来る最後の情動です。
その慟哭の深さは、懸けてきた時間と熱量とに比例するのかもしれません。
青春の美しさは、日々の繰り返しの一瞬に紡がれる短命。
久美子のそれは、今もなお、胸にするどく迫り来るのです。

かつてのあすか先輩との系譜は、2年生になった久美子を経て、次回作 "波乱の第二楽章(誓いのフィナーレ)" に昇華されるのでしょう。
悲願の全国出場に向けて、どのように描かれるのか興味は尽きません。


そんな思いに耽りながら、「二相系」という修辞をつけて本作を鑑賞しなおしてみよう。
そんなふうに思いました。


~    ~    ~    ~    ~


「二相系」は、みぞれの覚醒はもちろん、希美の驚嘆(驚愕と落胆)にも見受けられます。

ところが、二人にフォーカスするほどに、モブでいるメンバーたちの顔がクローズアップされるように思えるのは、私だけなのでしょうか。

ここにも山田尚子監督ならではの「ヒミツの二相系」が演出されているように思えてなりません。


静謐な空間のうちに自らを叱咤奮闘させ、北宇治マインドを熟成昇華させていく奏者・部員たちの目線の先には、全国があります。

"リズと青い鳥" を希美とみぞれに託し、新しいレジェンドを全員で創り出してほしい。
そう願わずにはいられません。


~    ~    ~    ~    ~


心象スケッチは、せわしなく二転三転する白日夢のようです。

みぞれの「ブルー」は、水のうちからそとへとみじんに散らばり、収束し、一つの確信を得ます。


空の高みへ舞い上がったときの躊躇いと驚きは別の次元に。

水槽ガラスに映り込んだ思い做しの呪縛に気づいたときの素心に。

前後を歩んだ朋友との未来にも、爽気をアンブシュアできるカデンツァに。


感じたままのイメージをリードに吹き込めば、思い描いたストーリーが瞬時に、麗しい感性で彩られます。




誰をも震撼させたオーボエの音色。




ついに、心服から初立つ一歩を踏み出していく礼砲なのです。


~   ~   ~   ~   ~


人間はいつまでも未完成であるがゆえに、煩悩はときとして修羅と化します。

阿修羅像の示す三面六臂は「幼少期、少年期、青年期」を表わすという「揺れ惑う三相系」。

表情に醸しだされるのは、慟哭に耐える苦悶と無音無声の伸吟です。


部活動における音楽性へのアプローチは人さまざまなもの。

たとえそれが自分の中では正しいものだとしても、それにとらわれ狭い心しか持てなくなることは良くないという仏道の教えがここにはあります。

阿修羅像の姿は、まさに人間の持つ紙一重の改心のさまです。

みぞれはみぞれの道に、希美は希美の道に、その意志と熱量を示していくのでしょう。

きっと様々な困難を乗り越えて、その人生を輝くものに創造していくことでしょう。


~    ~    ~    ~    ~


{netabare}
第二楽章


《 bluesy 》


二人のステップは成熟へのプレリュード。

追従と放縦が絡み合う。


それぞれのマインドは未だ憂愁の翳(かげり)。

謦咳と緘黙が交錯する。


お互いの矜恃を懸けたソロとソリが、今、始まる。



無垢な交歓はやさしげな戯れ。

懊悩する逡巡は囚われのケージ。



独り善がりなのは偏愛なの?

勝手気ままなのは放漫なの?



蒼きリミナリティー。

未熟なる道化師たちです。




《 blue tone 》


希美の音調は、明るいアニマート。

みぞれへの負い目をいくらも感じていないから?


みぞれの音高は、平坦なビブラート。

希美への引け目をどこかに抱え込んでいるから?



ふたりの音歩は、まだ少しぎごちない。

それがなぜだか、今はまだ分からない。



心は、鈍色(にびいろ)の曇天。

みぞれも、あめゆじゅのまま。




《 Be quiet 》 


2人だけの talkative.

戸惑いは隠せない。



フルートは明朗闊達。
  (リズからは離れたくないのに)

オーボエは頑迷固陋。
  (青い鳥を解放してあげたいのに)



中学3年生の府大会銀賞。

そこで時間は止まってしまったの?
 
それとも進んでしまっているの?



いったん交わした約束をどんなことがあっても固く守りたいのは、希美の責任感。

トラウマから抜け出しコンクールに喜びを見いだせたのは、みぞれの努力の証。

二人の五線譜には 𝄐(フェルマータ)が、不安げに浮き出している。



あるべき姿も、行くべき道も、二人の talkative.

どちらの頭上にも、蒼い空は広がっている。




《 blue note 》


flute に似つかわしいのは小鳥のさえずり?

oboe にふさわしいのはリズの呼びかけ?

いくどとなく懸けあわされる親近の呼応。



flat に見えていても、かすかに♭が聴こえていた。

半音ぶんの愁い。

何かのきっかけがあれば巣立てるのに。



まだ blue bird を手放せないみぞれ。

青い鳥こそ、天上へと羽ばたくに相応しい。

オーボエコンチェルトこそ、みぞれに相応しい。




《 blue hole 》


青春の移ろいは、深い痕を遺す。

修羅に身を任せれば、不安と背信が顔を覗かせる。



それは罪? 

それとも罰?



命がけの気丈が、希美にも待っている。




《 blue sky 》  


2つのベクトルを交錯させ、歩調を独立させる。

5年越しの going my way.

4つの瞳で見感 (みめ) でて、心で見合(みまぐあ)う。

6年間の矜持を分かち合うためのファイナルステージ。

北宇治の3年生たちは、ようやく一つ、大人になる。



蒼空を、それぞれに翔けていこう。

noiseは、残るのかもしれない。

それでも気持ちを、もう半音上げていこう。

きっと新しい わたしの青い鳥を見つけだせるはずだ。




さよなら。


さよなら、私の青い鳥 ―




~   ~   ~   ~   ~

{netabare}
第三楽章


レヴューを書こうと思い立ったときに、とある本に目が留まりました。

「宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人」、今野勉著、新潮文庫(令和2年4月刊)です。

すぐにネットで注文して、届いたページをパラパラとめくっていると、22ページ目に ≪猥れて嘲笑めるはた寒き≫ という一文が飛び込んできました。

どう読むのだろう? どんな意味合いがあるのだろう? どんな背景を持っているのだろう?

そんな疑問を頼りにして、500ページを1週間ほどかけてじっくり読み込んでみました。



巻末の解説を首藤淳哉氏がされています。
その末語をこう締められておられます。

「繰り返そう。この本を手にしたあなたは、幸運である。」



心から、そう思いました。



賢治をこよなく愛するあなたに、この本を捧げます。

{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2024/08/04
閲覧 : 451
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31

ヒロインコレクター さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

まずまず

この作品に関してはみぞ先輩ののぞ先輩に対する執着があまりに強すぎてちょっと引いてしまうレベルなんですよね
普段のユーフォシリーズだとみぞ先輩あまり喋らないから気にならないけどこの作品の主人公がこの2人だから最後の2人のシーンなんかはあれで感動はできないかなぁと
作画もいつものユーフォシリーズと変えてきたのも逆にキャラデザの良さが薄くなってしまったと思います
アニメ映画の当たり作品がいかに少ないかはユーフォシリーズの映画シリーズだけでも分かりますね
難しいところですね

投稿 : 2024/08/03
閲覧 : 47
サンキュー:

3

ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

この世で最も映像が美しいアニメ映画のひとつ。

【概要】

アニメーション制作:京都アニメーション

2018年4月21日に公開された90分間の劇場版アニメ。
原作は、宝島社文庫から刊行されている武田綾乃による小説。

監督は、山田尚子。

【あらすじ】

傘木希美(フルート)と鎧塚みぞれ(オーボエ)は、北宇治高校吹奏楽部の所属。
彼女たちの出会いは中学時代。みぞれが誰とも友だちになれずにひとりぼっちだったのを、
希美が声をかけて吹奏楽部に誘ってからは、希美はみぞれのかけがえのない存在。
彼女たちが高校3年生になって最後の出場機会のコンクール。

自由曲が童話を元に作曲された「リズと青い鳥」。
第三楽章にオーボエとフルートとの掛け合いのパートがある。
曲を理解するために童話を読むのだが、
童話の二人の少女に自分たちの姿を重ねてしまう、希美とみぞれなのだった。

【感想】

一応は山田尚子監督の最高傑作ということで良いのかな?久々に観てみました。

キャラデザや色調がユーフォの本編と大幅に違うだけでなくて、
本編ではモブに近い女子がグループを組んでかしましく仲睦まじい姿を丹念に描きながら、
男子が背景で喋らないですし、後藤先輩はいたものの塚本秀一を目視できませんでした。

これは自分の想像ですが、本当は普段のユーフォの作画での日常があるのですが、
みぞれの心理状態を反映したみぞれ視点の主観の映像世界がリズと青い鳥の映像。
滝先生やはしもっちゃんや担任の教師以外の男性は認識されずにアウトオブ眼中なわけですね。

みぞれと剣崎梨々花のオーボエパートの先輩・後輩のストーリーは覚えておいたほうが、
のちのユーフォ本編の続きを楽しむうえでは良いかも知れません。

山田尚子監督と西屋太志さんをはじめ京都アニメーションのスタッフの方々などによる、
作画と演出の美しさと音の計算し尽くされて調和した淡い水色の静謐の世界。

丁寧な作画に裏打ちされた繊細な芝居と演出の数々は、アニメの映像を作るにいたって、
少女の美しさと切なさを極限まで純度を高めた表現力は、ひとつの到達点と言えるものでしょう。
才能と才能、感性と技術が組み合わさってここまで完成された映像世界は、二度と作れないかもです。

ただ自分はユーフォ本編のほうが起伏に溢れて楽しめる人間ですので、
映像芸術として極めて優れていても、リズと青い鳥はストーリーがちょっと退屈な映画なのですよね。
南中カルテット成分が多めですので、なかよし川好きには素晴らしいものですが。

まあ、のぞみぞの尊い二人だけのドラマの雰囲気を楽しんでいけば基本的には良いのかも入れません。

絵本の世界も、本田望結の一人二役の演技が棒読みなのが気になって、
この人を起用したのには演出的な意図があるのかな?と理解できなかったり、
正確に数えてないですが十頭身キャラに見えてしまうのに目線が行ってしまったり。

やはり自分は芸術方面に振り切ってしまった山田尚子監督の高度さを理解できない、
よって言語化するすべを持たない凡夫のようでした。
自分には、けいおん!やたまこまーけっとのほうが好みに合っているようです。

この映画も、もっともっと繰り返して視聴する必要がありそうです。


感想としては簡素ですが、これにて終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2024/07/14
閲覧 : 165
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37

lumy さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

山田監督の本領発揮。

TVシリーズは1期・2期ともに視聴済み。
公開劇場が少なく、レディプレイヤーワンで映画欲が
すっかり満たされていたので、当初観る予定はなかった
のですが、みなさんのレビューが高評価だったので、
往復4時間かけて観に行きましたw

これは・・・4時間かける価値がある映画ですね。
みなさんがおっしゃる通り、この映画は「動」ではなく
「静」なので、フルスクリーンで観なければいけない
というわけではありませんが、
あにこれユーザーの皆さんには、ぜひこのレビュー祭りに
参加してほしい作品ですw

とにかく、作品全体の演出やセリフの美しさは、
これまでの山田尚子監督の集大成と言っても過言ではないです。
2時間という枠の中で1つの作品を作るというのは、
TVシリーズにはない苦労があるかと思いますが、
山田監督はこの制限を非常にうまく利用する監督だと思います。
視聴の途中で、なんとなく話のオチは見えてしまうのですが、
その着地の仕方が、本当にスムーズで無理がなかったです。

なお、ユーフォのTVシリーズからかなりキャラデザが
変わっていますが、私は本作の演出やストーリーを考えると
英断であったと思います。
頭身が伸びただけでなく、スカートの丈も伸びていますが、
最近のアニメはみんな丈が短いので、ある意味斬新でした。


2024.4上方修正
Eテレで放送してくれたので、劇場視聴から久しぶりに観ました。
前回の☆が4.0だったのですが、
誓いのフィナーレで演奏シーンを観た後ということもあって、
大幅に上方修正しました。

本作は、ユーフォなんだけど、
ユーフォじゃない作品として観た方が良い気がしました。
たぶんTVシリーズ観てなくても理解できる作品です。

本作の二人は、高校生なんだけど高校生じゃない、
少し大人びた関係にあると思いました。
だから、TVシリーズのような青春ものではありませんが、
本作の二人がもつ感情は、すごく響くものがあって、
こんなに洗練された作品だったのかと改めて気づかされました。

劇場公開時のレビューで、スカートの丈なんて書いている場合じゃ
ありませんでしたw

投稿 : 2024/04/07
閲覧 : 477
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65

いんゃん さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

雰囲気が好き

山田尚子監督のプロフィールを見たら、
パラジャーノフ監督作品が好きと書いてあって、
嬉しい〜と思いました。

だからこそ、ストーリーがどうのと言うより、
雰囲気を楽しめる作品を作って下さったのだな、と。

ストーリーよりも、視覚的な面白さや、雰囲気重視の作品が
もっともっと増えると良いなと思います。

投稿 : 2024/03/02
閲覧 : 63
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4

U-yan さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

スピンオフです。

2期でスポットの当たった「のぞみちゃんとみぞれちゃん(久美子の1コ上メンバー)」を中心に描いたスピンオフです。キャラデザ変更ありです。相変わらず爽やかです。
時系列では久美子2年生前半で劇場版誓いのフィナーレの前になるのかな?
本編視聴者なら観るべきですね。

投稿 : 2024/02/28
閲覧 : 99
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7

たくと さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

「響け!ユーフォニアム」のスピンオフだし観とこ、位のノリだったんだけど、すごい良かったです

「響け!ユーフォニアム」のスピンオフだし観とこ、位のノリだったんだけど、すごい良かったです

ユーフォ本編にも、部内オーディション課題曲だった リズと青い鳥 の、原作物語にも二人の関係がクロスオーバーして・・・と思ってたら、だんだん「あ、これって!」と思い出す自分がいた

響け!ユーフォニアム本編観てなくても大丈夫、
だけど、逆にもう一回見直したくなるくらい、切ない物語でした

投稿 : 2024/02/18
閲覧 : 121
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4

ネタバレ

タイラーオースティン さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

観る者の心に強く刺さる静かな作品

タイトルだけでは初見の人は響けユーフォニアムの関連作と気づきにくい作品ながら、本作単体でも充分楽しめるほど高い完成度を誇った映画となっております。

冒頭でのリズと青い鳥の世界で引き込まれるものがある一方で、みぞれと希美の物語は最初から静寂に満ちたもので、まるで口数の少ないみぞれを表現しているかのような雰囲気。一応、希美も主人公格なんだけれど、全体的にほぼみぞれ視点で進められていた気がする。

仲の良い二人なんだけど、すれ違いが起こり、山場だったのは終盤の音楽室でのリズと青い鳥の演奏シーン。それまで抑えめだったみぞれが本気を出した事により、部員達から賞賛され、その後の希美とみぞれの二人のやりとりは一歩間違えれば、それまでの関係が壊れてしまいそうな重苦しさがありながらも、みぞれの希美に対する想いが語られるくだりで張り詰めた緊張感が一気に感動に変わるという今まで経験したことのない感覚を味わえました。

また、ラストでそれまであまり笑わなかったみぞれが一瞬微笑むシーンは派手さこそないものの、個人的に強いインパクトを残しました。間違いなく秀作です。

投稿 : 2024/01/19
閲覧 : 94
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13

チャリア さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ユーフォニアムシリーズの中ではこれが一番好き

響け!ユーフォニアムは見ないのですが、この作品だけは好きです。なぜなんだろう・・・?この二人が本編に登場していれば、「響け!ユーフォニアム」もみていたと思います(背景の脇役でしか登場しない)。

脇役なのにこの才能。主役級はもっとすごい才能という事を表現したいがための脇役の映画なのかなぁと思いました

投稿 : 2024/01/18
閲覧 : 79
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3

フェイルン さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

『響け!ユーフォニアム』の続編でありスピンオフであり百合

『響け!ユーフォニアム』の続編でありスピンオフなのだが、恐らく単体で観てもそれなりに分かるように出来ている。

吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれと、フルート担当する傘木希美がメインの話になっている。
この2人の百合作品と言ってしまうのは簡単だが、プラトニックな部分を繊細な作画や微妙な音の違いで作られている良作。

Blu-rayでのオーディオコメンタリーは聞き応え有るとの事。

投稿 : 2024/01/02
閲覧 : 289
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11

あと さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

美しくも切ない2人の少女の世界。

女子高生の揺れ動く感情。2人のすれ違いと違和感のある生々しい描写。細いタッチで本編とは異なるキャラデザで一層世界観を作りあげている。上映当時は可愛くないなあなんて思ってたのがバカらしくなるほど素晴らしい映画で余韻に浸って倒れてました。
この映画が2人の距離感を描くという丸っきり舞台装置なんですよね。学校もキャラもセリフも音楽も全部。濃厚な90分。京アニの繊細な作画や演出もとても引き込まれます。自然でリアルだけど、アニメでしか表現出来ない関係性がある。

投稿 : 2024/01/02
閲覧 : 70
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4

既読です。 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

2021年11月ユーフォ聖地巡礼後、31日~3日Eテレ11:05放映!!

2023年12月

今原作を再再々読しているのですが
希美の心情の吐露が全て言葉で
表現されているので
読んでいて顔が引きつりそうになるくらい
エグイです。すんごい引きます。
なのに、会話を控えめにして色と描写だけで
全てを語るこのアニメは・・・神です!!

ところで原作 
希美はみぞれを音大に送り出すよような言葉
言ってないですよね?
みぞれが勝手に希美の選択を受け入れたってだけで。
リズが願わないと、話が成立しないのでは?
なので、新山先生の解釈が腑に落ちる件が
何度観てもしっくりこないんですよねえ。

う~~~ん、もう一度テレビで確認しよう。


帰りの新幹線車中で「誓いのフィナーレ」
観賞後続けて車中で鑑賞。

大好きのハグのシーンで
奏だけ背を向けていたシーン発見!
やっぱ、スゴイな。

みぞれのピュアな愛着よりも
希美のあざとさがメインなのかな?
新山先生に声を掛けられたのはみぞれ。
追従に気を良くしていた希美の
あざとく振る舞えなくなった姿が
とても心に響く作品です。

それを色と構図と仕草で
存分に仕立て上げた吉田先生と
山田先生には平伏です!


あ、ちなみに聖地は敷地内のみです。


2019年6月1日 

2月に観て以来激ハマりして
繰り返して視聴すること数十回。

内容に関しては皆様のレビュー通りです!
熱いレビューを書かせるほどの作品です!

背景、色使い、動き、性格分析等々
皆さん実に細かく分析されていますね。

私はこの作品に衝撃を受け

遅ればせながら

「響け!ユーフォニアム」なるものを知り

アニメ全話を観て

(何度も何度も何度も何度も)

「誓いのフィナーレ」も4回観て

とうとう原作ノベル全巻発注をかけました。

山田尚子先生
吉田玲子先生
武田綾乃先生
京都アニメーション様様様様です!!

投稿 : 2023/12/16
閲覧 : 376
サンキュー:

26

ネタバレ

hrrgr さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

ずっとずっと、一緒だと思っていた。

京アニが手掛けるユーフォシリーズのスピンオフ作品で希美とみぞれの二人の関係性に焦点を当てた映画。ユーフォの主人公である久美子は殆ど登場せず雰囲気もガラッと変わっている為、好き嫌いが分かれやすい作品かも。
まず音響のこだわりが尋常じゃないほど素晴らしく、足音や息遣いなど繊細な部分まで表現されていて、その空間に居るのかと一瞬錯覚しそうになる。
今作ではコンクールなど劇的なシーンはなく、話も大半が校舎の中で描かれている為、スケール感が小さく感じるかもしれない。だけど、この閉塞感こそがリズと青い鳥の魅力だと個人的には思ってる。
ユーフォと比較して演奏描写が減った分、心情描写はより繊細に描かれており、何気ない仕草や些細な感情変化など周回して気付いた部分も多い。
{netabare} みぞれと希美の関係性はユーフォ2の時から描かれてきたが、二人の間のわだかまりが完全に解消された訳ではなく、若干モヤモヤ感が残っていたが、今作でそのモヤモヤ感を払拭できたように感じた。冒頭ではリズはみぞれ、青い鳥は希美の事を指していると思っていたのが、中盤で立場が逆転していく流れは秀逸。そしてクライマックスの演奏シーン、大好きハグのシーンは感情移入しすぎて軽く脳がオーバーヒートしそうになった。 {/netabare}

投稿 : 2023/11/11
閲覧 : 79
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5

ネタバレ

カール さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

美しくも残酷な物語

原作未読。それ以外は視聴済み。

汗と涙の感動ストーリー。
それが響けユーフォニアム!!
だったのに、
今回はそういった要素は一切なし。

「そんなんエエから話ししようか」
と、担任から進路指導室に呼ばれ、
静かに真綿で首を絞められるような、
そんなお話。

陰キャのみぞれちゃんと、
陽キャの希美ちゃんは大の仲良し。

吹奏楽の切っ掛けをくれた希美に、
みぞれはただならぬ想いを寄せている。
一方の希美は、
そんな過去は意に介さず軽やかな感じ。

さて作中では、
「リズと青い鳥」という、
創作のおとぎ話が、
この二人の少女と重ねて語られます。

おとぎ話の結末は、
二人が離れ離れになる悲しいお話ですが、
それでもハッピーエンドを願う希美は、
悲劇の結末に台詞を付け足す。

「会いたくなれば、
また会いに来ればいい」

おとぎ話の青い鳥はリズに問います。
「冬になるとリズはどこに行くの?」
リズは答える。
「どこへも行かない」

お互いにキョトンとする。
「何で?」

青い鳥は渡り鳥。
越冬しなければ死んでしまいます。
にも関わらずリズは、
「ここにいる」と言うだけ。

二人が進むべき世界は明らかに違う。
二人は一緒にはいられない。

やがてリズはその事実を受け入れ、
青い鳥と決別する。

希美はずっと、
青い鳥の視点で世界を見ていた。
翼を羽ばたかせ、
自由の空を飛び回るのは自分だと。

しかし希美は、
耐え難い真実を目の当たりにする。
自分には才能がない。
遠くの鳥をただ見上げる凡人だと自覚する。

更に、
希美に才能を見せつけたみぞれは、
無意識に彼女にとどめを刺す。

大好きのハグ。
みぞれは関係を繋ぎ止めようと、
思いつく限りの大好きを希美にぶつけるが、
その大好きに対し希美はたった一言、

「みぞれのオーボエが好き」

しばし沈黙の後、
大好きのハグは解かれる。
希美が才能だと信じていたフルートは、
みぞれの大好きには無かった。

リズは、
自分の存在が青い鳥の足枷だと気付き、
別れを決意する。

希美は改めて、
自分のフルートが、
みぞれの足枷だったことに気付かされる。

みぞれにとっては成長物語だが、
希美にとっては絶念の物語。
最後まで明るく振る舞ってはいるが、
やはり希美にとってはBAD END。

冬が近づくにつれ、
進路が明確になるにつれ、
互いが進むステージが違うことを痛感する。

「会いたくなれば、
また会いに来ればいい」

学生時代はみんなそう思う。
でも卒業した途端、
新生活が始まった途端、
疎遠になっていくのが世の常。

若者が辿る、
かくもほろ苦い残酷な物語。

しかし最も残酷なのは、
多くの女子部員が参加したにも関わらず、
プールでの水着シーンが無いことである。


ありがとうございました。

投稿 : 2023/07/26
閲覧 : 164
サンキュー:

7

Dave さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

文学的な、響けユーフォニアム

1.「動」と「静」
劇場版「誓いのフィナーレ」(久美子2年生編)の裏側で、ひっそりと、しかし着実に変化していった2人の少女の物語。作中作である「リズと青い鳥」の物語になぞらえた少女たちの心の成長と関係の変化を、女性監督ならではの繊細で私的なタッチで美しく描いています。響けユーフォニアムが感動や躍動の「動」的な作品であるのに対し、こちらのスピンオフは見落としてしまいそうになる思春期の心の機微や言葉にできない内的な葛藤を、極力セリフではなく【情景】と【音楽】で静かに語りかけてくる「静」的な作品という印象を受けました。

2,作画
響けユーフォニアムと声優は同じながら作画のタッチがかなり異なるので、最初の5~10分くらいは少し抵抗を感じました。まるでいつもとは違った眼鏡をかけたような、そんな感覚です。声も舞台も同じなのに、アニメらしいはっきりとした輪郭ではなくどことなく輪郭のぼやけたようなキャラデザで、これまで響けユーフォニアムに思い入れが強ければ強いほど脳に混乱をきたしますが、間もなく物語に引き込まれて気にならなくなりました。

背景はとことん美しいです。ただ美しいだけではなく、まるで絵画のように情景がセリフの代わりに語りかけてきます。そうですよね、京都アニメーションの作品ですからね。ほんのわずかなカットにもちゃんと意味を込めていて、ああこれが世界のアニメをけん引するスタジオの作品だなと妙に納得しました。

3.音楽
響けユーフォニアムも演奏が素晴らしいのですが、セリフや動きの少ない本作では、より聴覚が鋭敏になります。BGMとしての吹奏楽、主人公たちが奏でるハーモニー、他の団員たちの合奏、どれも胸に染みます。オーボエの音、本当に美しいですね。

4.ストーリー
そして最後にストーリーですが、さすが女性作家&女性監督による作品だなと。女の子から女性に成長する、最後のステージ。アイデンティティは、誰かと同じであることではない。いつも一緒にいた友達と、いつまでもは一緒にいられない現実。独占したいけど、相手には相手の人生があって、可能性があって。そしてそれを認めて変化を受け入れなければ、自分もあいても羽ばたけない。すこし悲しいけど、より広い世界へ踏み出すには、失うことも受け入れなければならない。飛び立つしか、ない。

この作品を見た後で、もう一度劇場版「誓いのフィナーレ」が見たくなりました。あの合奏には、いろんな色の糸が紡がれているんですね。

P.S. 私の大好きな作品「宇宙よりも遠い場所」のめぐみちゃんとキマリの関係を思い出しました。こちらもあちらも、真剣な少女たちに幸あれ。

投稿 : 2023/07/22
閲覧 : 166
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13

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

京アニが駄目になったと感じた作品。

 京アニの例の事件の7月18日に合わせて何かをレビューしたかったんですが、少々遅れて7月20日です。残された家族、関係者の方の想いは部外者からは計り知れませんが、アニメファンとして追悼の意を捧げたいと思います。

 そのレビューにふさわしい作品が見つかったかなあという気がします。ただ、残念ながらそれとは別の意味での追悼にもなります。本作はまさに京アニと決別するにふさわしい作品な気がします。

 この作品は私が嫌いになった京アニの象徴だということです。この作品2018年と事件の前年ですから事件が映画の制作には関係ないですよね。

 人気が出たコンテンツを骨までしゃぶるという姿勢は、企業である以上しかたないのかもしれませんが、しかし「響け!ユーフォニアム」は2期ですら、過剰な演出とお涙頂戴のオンパレードで感動ポルノ化したのに、更にその2期で語った裏の情報をアニメにする姿勢が理解できません。

 作品は誰のものか?権利的にはもちろん作者であり版権を持っているところなんでしょう。が、本来作品というのは公開した瞬間から視聴者のものになります。
 よほど意図するか、精度が高いクリエータじゃなければ、作者の思惑から外れた意味内容に作品は変容します。それが読書や映画そしてアニメの面白さだと思います。また、人によって解釈がブレて、その変容が生じる余地を残せるのが、優れたクリエータだとも思います。

 ここは例ですが「私はこういうつもりで作った、実はこうでした、その解釈は間違っている」とSNS等で発信するクリエータは最低だと私は思っています。
 国語の「このときの主役の気持ちを書きなさい」という問題の正解に対して、作者が「俺はそういうつもりじゃなかった」という話があります。それはまともに解釈したらそう取れるのだから、作者の思惑とのズレは力量の不足だし、その解釈で作品が評価されているのだから、作品の評価が過大評価ということに気が付くべきです。ですから、この場合は解釈が正解というのが私の持論です。

 つまり、視聴者側には作品を独自に解釈した上での感動があるわけです。
 続編を作ると言うのはこのSNSの発信や作者の解説以上に視聴者が感動した作品の意味性を固定することになります。よほど慎重につくらないと前作を矮小化し、下手をすると殺してしまうことになります。ましてスピンオフというのは、元の作品の感動をシラケさせるものです。

 宮崎駿監督や新海誠監督が続編を嫌がるのはこれを分かっているからだと思います。逆に続編をつくらないアニメ監督は信頼がおける気がします(まあ、この2人は自作解説をするのでそれはそれで下品ですけどね)。

 つまり、視聴者は物語を見て、キャラの内面を理解し、行間を読み、考察して、感動して、作品の前後左右つまり過去と未来と裏側を想像します。それが視聴するという行為です。

 しかも、それを「いい話、感動する話、文学的な話」っぽく「技術で作る」「音楽をかます」のは特にやめて欲しい。つまり、いままで京アニの良いところであったはずの、優れた部分がすべて反転してしまったという風に私は感じています。この作品はその象徴です。

 そう…本作は、クリエータ側に言いたい表現したい事があって、この作品を作りました!に見えないです。だって、こんなことは2期を作ったらそのあとのヒロイン2人は、視聴者に委ねて感じさせる部分じゃないですか?非常に馬鹿にされた気分です。

 おそらく作品に魂がないので、この作品には引っ掛かりがなく、泣いておしまい、じゃないでしょうか?エモいだけエモいので、逆に薄っぺらく感じてしまい、虚無感すら感じます。
 何年後かに再視聴したくなる可能性は皆無だと思います。つまり「泣くための装置」であり、京アニが「泣くための装置メーカー」になった気がします。


 それがヴァイオレットエヴァ―ガーデンの劇場版という蛇足も蛇足、なぜこんなことを?という姿勢につながったんだと思います。

 本作の、絵本の部分のアニメは大したものです。ですが、その含意の薄っぺらさがにじみ出てきています。本作は正直、作品としては評価に値しないと思っています。

 ということで、京アニのこの姿勢。ぎりぎりの分水嶺がヴァイオレットエヴァ―ガーデンかなあと思いますが、この作品も言いたい事はいっぱいありました。ユーフォ2期、けいおん2期、メイドラゴン2期、ハルヒ2期(はちょっと違うか)もこの傾向が顕著で私は好きではありません。

 立て直すためには、京アニは2期以降をつくるな、劇場版をつくるな、スピンオフを作るなとしか言いようがありません。

 評価難しいのでオール3にしておきます。

投稿 : 2023/07/21
閲覧 : 824
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11

nyamu さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

傑作だった

ユーフォニアムの方は未視聴。

まったく前知識がないまま見始めて、スタッフが表示されて初めて名前だけは聞いたことがある「響け!ユーフォニアム」という作品関連だと気づく。

階段で誰かを待つ女の子。他の人が来ても特に興味を示さないけれど、その子が来れば軽やかな音楽が流れだす。
人物関連がわからなければ止めて、本編を見てからで良いかと思っていたけどそんな心配は杞憂だった。

前を歩く女の子とその後を追うように歩く女の子。大してセリフがなくてもそれだけで二人の関係性は分かる。歩き方や靴箱から靴を出して履くしぐさまで丁寧に描写されていて、それぞれがどういう人物なのかまでわかるように表現されている。

画面に映るのは後ろの子が見ている景色。前の子の後ろ姿。足元と、影と、揺れる髪の毛。その子のことが大好きで大好きで大切なんだろうと分かる。

最初こそセリフが少なくてもどかしさを感じるものの、タイトルが表示される頃には引き込まれていた。


ひとりぼっちで暮らしていたリズの元にやってきた青い鳥。二人はお互いに必要としていたけれどいつしかリズは自分が青い鳥を閉じ込めていることに気づき青い鳥を解き放つという童話に重ねて、みぞれと希美の二人の物語が描かれる。

後ろ姿だったり、足の動きだったり手の動きだったり。表情が見えなくてもセリフがなくても、繊細に丁寧に描かれている全てのカットで言葉にはならない何かを感じずにはいられない。俯瞰ではなくみぞれや希美の視界が多くのカットで使われているので必然彼女たちの心情にシンクロしやすくなる。セリフではなく映像で表現されているから画面から目を離せない。セリフが本心かどうか、本心だったとしてもほかの感情はないかは自分で読み取るしかない。

さすが原作、監督、脚本が女性で占められているだけあって、中学生~高校生の女の子同士の関係性がよく表現されていると思う。中学生ほどあからさまではないけれど、まだ残っている大人になり切る前の純粋さ、ひたむきさ、危うさ、狭さ、脆さ。そして自覚していて隠したい、自分の狡さ、独占欲、羨望、嫉妬。
言えない言葉、言わない言葉、あえて言った言葉。

二人の関係が主題だけれども、周りにはそれぞれに慕ってくれる下級生だったり近くで見守る同級生や大人がいるのが世界が閉じていなくて素敵だ。

写実的ながら淡い色彩の背景と細い線で描かれたキャラはいわゆるアニメっぽくはあまりない。それでいて、これはアニメでしか表現できない繊細なものだろうと思う。

登校のシーンで始まり、下校のシーンで終わる。物語が終わって二人の関係性に変化があったことがわかる。
喪失と挫折と葛藤と成長の物語。

結局、どちらがリズでどちらが青い鳥だったのか。セリフでは彼女たちの解釈があったが実際のところはどうだろう。自分は二人共がリズであり青い鳥であったように思う。解釈は人それぞれだしそういうのも心地良い。

全くつまらないと思う人もかなりいそうな気がするし、相当に人を選ぶ作品だと思う。

けれどもこれは傑作のひとつと言っていい作品だと思う。

本編のアニメも見たいし原作も読んでみたいと思った。

投稿 : 2023/07/07
閲覧 : 162
サンキュー:

16

ネタバレ

まにわに さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

類型:ブラ1

 
{netabare}「のだめ」で言うと、千秋のブラームスで、希美はのだめになれなかった、が初見の感想。
童話だけ見ると、どっちがどっちかわからないというのがあって、この感想だと、劇中劇がどちらかわからなくするようにしか機能していない、という非常につまらない結論になってしまうのが、どうにも引っかかって。これなら静止画ベースでいいわけで。

あらためてどっちがどっちか注意して見ていくと、みぞれがリズだとみぞれが思っているのは早い段階で明示されているが、希美は何も考えてないとさえ思うほど曖昧にされたまま、決定的なシーンでも明言されることはない。
諸々考え合わせて結論だけ言うと、どちらも青い鳥ということになるのだが。そもそも童話は母子関係を表していると考えるのが自然で、高校の部活に巣立ち間近の子供しかいないのは至極当たり前のこと。
すなわち、劇中劇も同年代の子供の起用以外の選択肢がなく、この有り様なのではないか。どっちがどっちか(子供か模擬母か)わからないのも重要、という意味ではよくできているとも言える。

jointについて。この物語を言い表していると考えると、そうは思えないし、手抜き。が、本編と切り離したという意味なら、気にならない。{/netabare}

投稿 : 2023/06/30
閲覧 : 96
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2

ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

良質の日本映画を見たような余韻を感じる傑作(追記しました)

[2023.5.7追記]
今回のGWを使って、やっとユーフォニアムシリーズのほぼすべてを見ることができました。
ユーフォの世界観・人物相関など理解できた上で、あらためて「リズと青い鳥」を視聴しました。
予想はしていたのですが、作品への理解の深さが段違いに違いました!

そのうえであらためて感じたのは、この作品はやはりまぎれもない傑作だということです。
より理解できた今のほうがさらにその思いが強くなりました。

リズと青い鳥という曲を演奏するというモチーフを柱として、絵本で語られるリズと青い鳥の関係とあの年頃の女の子の関係、第三楽章でのフルートとオーボエの合奏パートでの演奏で気持ちを表わしたり。

ユーフォニアム本編もそうでしたけど、音へのこだわりがこの作品も凄くて、オープニングの足元を映しながらの希美が来た瞬間の軽やかな音楽と二人の歩き方で表現される個性と感情。

もうその時点で再びこの作品の世界にどっぷりと漬かってしまうわたし。

後半、伸び伸びと力強く大空にはばたく青い鳥のようにオーボエを吹くみぞれと涙を流す希美のシーンは前回見た以上に私の胸に強く届きました。

オープニングと同じ軽やかな曲が再び流れ、希美は参考書を、みぞれは楽譜を開いて

disjointからjointへ

二人はそれぞれの道を歩みながら、これからも友達で居続けるんだと思います。


[初回感想]
響け!ユーフォニアムを全然見てなくて、この作品もスピンオフ作品だから見ても楽しめないだろうなと思って、気になってたけどずっとみてませんでした。

でも、見てなくても問題ないって友人に背中を押され、本編見ないでいきなりこの作品って変わってるかもだけど見てみることにしました。

冒頭、待つひとが来た瞬間、軽やかな音楽が奏でられる演出、そして足元多めのアングル。

歩き方で希美とみぞれの性格を表現してるところも面白いです。

二人以外の人物も足元で感情を表現していたり。

なんだろこの空気感・・アニメなんだけど(実写の)日本映画を見てるような感じがとてもします。

「リズと青い鳥」という絵本のお話をモチーフにした曲を練習する二人。

リズと青い鳥のお話パートは綺麗な水彩画みたいに描かれた世界で、こちらはまさに絵本の世界って感じ。

日本映画のような、絵本のような、それぞれが交互に描かれるのも面白いですね。

希美のフルートが光を反射してみぞれの胸に当たり、それに気づいて笑いあう二人。
みぞれの気持ちにあわせて奏でられる音楽。。ここ何気に好きなシーンかも。

第3楽章。合わないフルートとオーボエ。
先生に熱心に指導されるみぞれを見つめる希美。

二人はリズと青い鳥の物語を思い浮かべます。
リズの、青い鳥の幸せを思いながら。

終盤の演奏シーン、すごく細かいところまで表現されてて凄いですね♬

伸び伸びと吹くみぞれの演奏を聴いて泣く希美。

リズと青い鳥。
結局二人はどっちだったんだろう。
どっちというよりも、お互いがリズで青い鳥だったのかな。

冒頭のdisjointがjointに変わり、物語はいったん幕を閉じます。

見終わって。
とても質の高い、素敵な作品を見た満足感でいっぱいになりました!
うん。確かにユーフォニアム本編を全く見てなくても問題なく見れる作品だと思いました♪

同じ京都アニメーションのヴァイオレットもすごく良い作品でとても大好きですけど、例えば国際映画祭とかに2つの作品が出品されたとして、どちらか1つを選ぶとなった場合、なんとなく審査員はリズと青い鳥を選ぶような気がします。

水槽で泳いでるちびフグ可愛かった♡飼いたい。。

投稿 : 2023/05/07
閲覧 : 769
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58

ネタバレ

ガムンダ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

考察厨ホイホイ

タイトルではわかりませんが吹奏楽部スポ根アニメ「響けユーフォニアム」のスピンオフ映画となっております。
2期でひと悶着かましたノゾミゾ先輩コンビの物語。
時系列的には2期の後ですね。
クミコはモブに回ってます。

序盤から文学テイスト満載で本編とは随分雰囲気が違います。
キャラデザやや人間寄りに修正されてます。

語るのに台詞ではなく演出を多用しまくりますが、この大仰な演出にストーリーが負けてます。
演出にヤられて真面目に論評しそうになりますが、これはそんな大したストーリーのものではありません。

思春期青年期の共依存とそこからの脱却と成長によるカタルシス、と言うネタはもう100万回くらいやったヤツで、例えば「安達としまむら」を全力で作るとこうなる、みたいなアニメ映画です。

葛藤と成長を描く青春物語なんですが、肝心の「何故成長したのか」の部分がまるで説得力が無いのです。
まずコンクールで演奏する自由曲のモチーフとなったとされる、劇中劇ならぬ劇中絵本の存在ですがこれからしてノベライズされたり楽曲を当てられたりする様な名作とは思えないんですよね。

{netabare}木の実ひらって帰ってきたらある日突然「あなたは行かなきゃならない」って…
何故リズはそう思うに至ったのか。 ~ {/netabare}

そこに至る出来事こそが物語のコアの筈ではないのかと思う訳です。

同じことがこの作品全体にも言える事でして、そこを端折って演出しまくっても薄っぺらいだけになります。

安易に人死なせてお涙頂戴と言うのも感心しませんが、
何も失う事無く「ハイ成長しましたー目出度し」ってのも観てる方はシラけます。
このプロットでガチ感動出来るヤツは他に幾らでもあります。

「響けユーフォ」のスピンオフて事でだいぶ評価ブーストかかってる気がします。
ここは一つ製作側の意図に乗っかって
響けユーフォスピンオフ 言外の演出何個わかったかなー?ゲ~~ム
として楽しむが正解でしょう。


私的にはこの手法を用いるならそれ相応の中身が無いと、って思います。
{netabare} ラストでリドるのも「はいはいッ」って感じでした(^^; {/netabare}

投稿 : 2023/04/27
閲覧 : 181
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6

ネタバレ

RFC さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

本編の1年後 Ob.みぞれとFl.希美の心情にフォーカスを当てたスピンオフ

原作未読。
ユーフォ大ファンとしては視聴は必至でした。

【作品概要】
 ユーフォ1,2の1年後の物語。
 本編の主人公はユーフォの黄前久美子でしたが、
 今作は2の前半で登場した
 Ob.鎧塚みぞれ と Fl.傘木希美に
 フォーカスを当てた作品です。

【作品に対する感想】
 ユーフォ本編が熱い青春物語だったのに対し、
 今作は二人の心情描写に特化した作品で、
 かなり静かにトーンを落として描かれています。
 コンクールの結果とか、外界の事は描かれていません。

 コンクールの自由曲「リズと青い鳥」の物語に
 かぶってしまう二人の関係。
 曲を完成させていく過程でみぞれの成長を描いています。
 みぞれが精神的にあまりに自立できていないところに
 さすがにイラッとしました。
 最後はスタートラインに立ったものの、前半のイライラが
 解消し切れずいまいち感動できなかったです。
 
 音楽に関してはさすがで、言うことないです。

 本編ユーフォのような熱血アニメを期待している人は
 拍子抜けかもしれません。
 ただ、吹奏楽部を織りなす物語は常に熱いものだけとは
 限りませんので、こういう物語もありましたという点では
 リアリティがあると思います。

 
1)物語
 童話と二人の関係を関連付けて進めていくというのは
 なかなか面白かったです。
  
 みぞれの世界の全てである希美を手放す意味が分からない。
 彼女の考え方(希美の存在がすべて)なら仕方ないでしょう。
 新山先生とそれを一つずつ解きほどいていき、みぞれが依存から
 一歩を踏み出したところは良かったと思います。
 
 ただ、ちょっと疑問があります。
 童話と現実の関連について。
 一人のリズ 
  ⇒ 孤独なみぞれ
 
 リズのもとにやってきた青い鳥 
  ⇒ みぞれを吹奏楽に誘った希美

 孤独を満たされ幸せなリズ 
  ⇒ 希美の存在が全てとなり安心できるみぞれ

 に対して最後、
 「翼の枷になっていたと気付いたリズが青い鳥を解き放つ」
 というのは逆の立場になっていて、
 「翼を持つみぞれ(=音大に行けるほどの力を持つみぞれ)の
 ソロの掛け合いの枷になっていたのは希美」でした。
 さらに言うとみぞれが翼を持ちながら解き放たれて
 なかったのは希美を依存した自分自身が原因であり、
 希美がみぞれに枷をかけたわけではありません。

 ということで、いまいちリズと青い鳥をなぞらえた展開から
 外れてたなと感じているのですが、
 このあたりうまく噛み砕けなかったので、
 ご意見頂けたら嬉しいです。


2)作画
 リズと青い鳥の絵本の絵とリアルの方と描き分けられてました。
 絵本の方は足が異様に長く描かれてあるのがやや気になりました。


3)声優
 全体的にかなりトーンを落として話していたので、
 作品全体的に暗い雰囲気になってしまいました。

 童話の方はあえて棒読みな感じにして
 昔のアニメっぽい雰囲気にしてたのかと思います。

4)音楽
 吹奏楽の曲が非常に多かった印象です。
 おそらく「リズと青い鳥」の一部を
 シーンに応じて使っているのではと想像しています。

5)キャラ
 ①鎧塚みぞれ
  「またウジウジ引きこもりかよ」が最初の感想でした。
  去年の関西大会でのあの生き生きしたみぞれは
  どこへ行った!?
  
  ただよく思い出したら、みぞれが本来の演奏を
  取り戻したのは希美との間の誤解が解け、希美の為に
  演奏することを肯定できるようになったから
  だったんですよね。
  最後のコンクール、そして卒業…大切な希美と離れる
  刻が迫っている事が彼女を追いこんでるんですね。
  
  2のレビューでも描きましたが、「自分の為に」と
  思えるようには、1年経っても
  なっていなかったということでした。

  みぞれの希美への依存はまあ酷いレベルで{netabare}
  希美の後をついて回ったり、希美が音大に行こうかなと言えば
  自分も行くと言ったり…。{/netabare}自分の意思は無いんかいっ!って。

  自分のことで手いっぱいなものだから後輩に
  気を使わせたり泣かせたり。
  中学の時は後輩の指導とかどうしてたんだろうか?

 ②傘木希美
  1年経ってちょっとパワーが弱くなったかなという気がします。
  あすかに猛反対されてもめげなかったバイタリティーが
  感じられません。

  彼女は進路を音大から普通の大学に変更した件で、
  リボンちゃんから咎められますが、
  あれはちょっと不条理かなと。
  進路なんて自分で選ぶべきで、人が変わったから自分も…
  なんてありえないからです。
  

6)印象深いシーン
{netabare}
 ①高坂麗奈 みぞれに苦言を呈す
  麗奈の成長が凄く感じ取れます。
  1年前の麗奈なら突き放すような言い方しかできず、
  部内のぎくしゃくの間接要因になってたと思います。
  でも今回は自分の想いを述べつつ、ちゃんと後輩としての
  立場を考えながら言葉を選んでいたと思います。

 ②麗奈&久美子 信頼の掛け合い
  この二人の信頼を絶対的なものと示していたと思う
  このシーン。
  おそらくみぞれと希美に目を覚ましてくれという
  メッセージを乗せていたのではないかと想像します。

  こんなことまで後輩にさせるな!
  希美とみぞれは反省しなさい!

  ただ他のパートの演奏なんかしてたら
  「自分のパートをもっと昇華させろ」と
  めちゃくちゃ怒られるとは思いますが…。
  まあそれはそれで。

 ③新山先生 希美に対して「え?あなたも?」といった反応
  これ、リアリティの面でいいシーンだなと。
  全国レベルの吹奏楽部でも音大というハードルが
  どれだけ高いかを示しています。

  部内の1学年で2,3人ってところじゃないでしょうか。
  もちろん部のレベルによると思いますが。
  希美も部の中では上位の実力者でしょうが、
  高い金をかけて音大に行ってさらに
  プロとして生きていくのがどれだけ狭い門か…
  という話です。
  2年でも音大行きとなると麗奈くらいかなと。
  甲子園出場者の中からドラフトに名前が挙がるのが何人かを
  イメージして頂ければなんとなくわかるかも。

 ④希美と違う方に歩いていくみぞれ
  みぞれがやっと自分の意思で歩き始めたと象徴するシーン。
  ただ、「やっとですか」…という気はしました。
 
 
{/netabare} 

7)原作読破、誓いのフィナーレ視聴後(2020/3/29追記)
 原作読破・誓いのフィナーレ視聴後、リズを再視聴しました。

 リズと青い鳥を含む久美子が2年生の頃の期間は
 原作の「波乱の第二楽章 前編・後編」
 にあたります。
 2冊でリズと青い鳥・誓いのフィナーレが並行して進む
 感じですね。

 原作読破+誓いのフィナーレを視聴して感じたこと。
 ➀私のような脳筋にはリズ単品の視聴では拾いきれない
  繊細な心の機微がちゃんと作画されていた。

  原作のテキストを読んだうえで視聴するとほんのちょっとの
  口元や眉の作画で実は表現されていたことが解ります。
  {netabare}
  リズ単品で希美に黒い感情があったこと読み取れました?
  希美は多少ドライなところがあるとはいえ、
  そこまでみぞれを嫉妬の対象にしているとは
  思えませんでした。
  {/netabare}

 ➁恐らくこの北宇治高校吹奏楽部は鎧塚みぞれの視界を通しての
  描写だったのかなと感じました。

  ゆえに、本編のような熱量がない。
  物語が進む中、ずーっと音楽が鳴りっぱなしということが
  多いんですよね。
  音楽の上を人が歩いている。そんな印象を受けました。  
  これがみぞれから見た北宇治高校吹奏楽部の
  心象風景なんでしょう。

 
 原作を読むことで、情報不足も補えました。 
 読んでよかったと思います。
 全体的に原作のほうが生々しいです。
 その分リアリティがあります。
 みんなきれいごとだけじゃありません。
 打算もあるし、下心もあるし、嫉妬などの黒い感情もあります。

 そんな中で特に印象深かったのが、覚醒したみぞれの初3楽章。
 劇場版の映像はあくまでみぞれの心象風景だったのでしょう。
 ずいぶんマイルドで「すごくよくなりました」
 「よかったです」程度の表現でした。
 しかしすべての感情を生々しく乗せたみぞれのOb.は{netabare}
 滝・橋本先生をも「どうすんだよこれ」と唸らせるほど
 であり、希美の自尊心を木っ端みじんに叩き壊すほどの
 破壊力がありました。
 これにより希美のFl.は
 「私が前に出る」から「みぞれを支える」に変わり、
 みぞれのOb.は自由に羽ばたけるようになったと…。
 
 あー、みぞれの高校生活の真の完結として
 アンサンブルコンテストでのワンカット
 どっかで見れないかなー。
 というか、リズの最後に入れてほしかったなー。
 {/netabare}  

 生々しい真の姿を見たい方は原作おすすめです。
 そして限られた時間で目いっぱい詰め込もうとした
 京アニさんの努力がさらに感じられるかと思います。

投稿 : 2023/03/27
閲覧 : 496
サンキュー:

43

カミタマン さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5
物語 : 2.5 作画 : 2.5 声優 : 2.5 音楽 : 2.5 キャラ : 2.5 状態:観終わった

仮想ライバルはCLAMP?

2023/0/26 初投稿

絵は綺麗
流石,京アニ劇場版!!って感じです。
ただ,リズパートの等身が極端過ぎではないでしょうか?
コードギアスよりすごいかも?
「ノゾ・ミゾ」パートもややナイスバディー化しているように感じます。TVシリーズの方がリアルJK的なスタイル。本作はファッションモデルとセクシー女優を足して2で割ったようなスタイルに感じます。(気のせいかもw)

ストーリーは「ノゾ・ミゾ」を好きかどうかに左右されそうな気もします。
自分はテレビシリーズの「ノゾ・ミゾ」のエピソードも率直に言って苦手だったので,本作もやっぱり苦手でした。ミゾレの心情がよくわからない場面で言い知れぬ不安を感じたのは自分だけでしょうか?起こるはずもない破局的展開におびえ,正体不明の緊張感になぜか怯えていた自分でしたw(変ですよねw^^;)

「ユーフォ」シリーズ続編作製の後押しになるとしたら視聴した価値はあったのかと思います。

これかなり重要かも!!

投稿 : 2023/03/26
閲覧 : 271
サンキュー:

21

とろろ418 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

晴天に響くハーモニー

【魅力的に思った点】
・題材と物語の調和が取れている
・描写が美しく、キャラの内面までしっかり表現されている
・単一の物語としては完成度が高い

【残念に思った点】
・番外編であること
・作画が本編と異なる

【総評】
・90点
  単一の作品としては素晴らしく、100点付けてもいいくらいだったと思います。
  物語自体の構成が秀逸でありながら部活や学校生活の流れを崩すこともなく、ちゃんとその一環として機能していましたし、描写に関しても無駄な台詞を配置せずにキャラの表情や仕草を中心にとても美しく表現されていました。
  唯一と言っていいくらい残念なのは、この作品が番外編であることですね。
  当然経緯を知るためには本編を見る必要がありますが、本作の主役の一人である希美がお世辞にもいい扱いされてるとは言えず。なので変な見方をしないためにはこちらを先に見たほうがいいと思うんですが、それだと経緯が分からず物語に集中できない可能性が。と、不要なジレンマが生まれてます。
  他にも本編と並行してる都合で、見たいシーンがそっちに取られちゃってたり、差別化のためか作画が微妙な感じになってたりなど結構割を食ってる印象でした。
  まあ声を大にして言ってしまうと反感食らうんでしょうけど、個人的には本編よりも断然こちらのほうを推したいですね。

【こんな人におすすめ】
・完成度の高い作品が見たい人
・儚くも美しい物語が好きな人
・本編と気持ちを区切って見られる人

投稿 : 2023/02/15
閲覧 : 106
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8

御宅忍者 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

"音"だけで生み出す感情の物語

山田尚子監督が誇る傑作です。1つ1つの瞬間があまりにも繊細すぎる上、唾を飲むのにも一苦労要する作品となっており、私自身何度も死にかけました。先に音楽を作ってから作画を起こすという異例の制作をしており、"感情"というものを音楽で作っています。そして、Homecomings手掛ける主題歌『Songbirds』の歌詞にも注目していただければと思います。『響け!ユーフォニアム』シリーズのスピンオフ作品ではありますが、全く知らない方でも楽しめる作品です。

投稿 : 2023/01/15
閲覧 : 365
サンキュー:

17

ネタバレ

U さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

C. ネタバレ注意 – disjoint から joint へ

2018年
武田綾乃の小説  
制作:京都アニメーション キャラデザ:西屋太志

高校吹奏楽部が舞台の友情、青春、成長物語 のスピンオフ作品


<メモ>
監督とキャラデザを変えて描かれたスピンオフ。 
本編とは違う山田尚子らしいキャラデザと演出ですね。

人気作なので楽しみにしていましたが、私は本編の方が好きです。

希美が自分より劣る(と思っている)みぞれに声をかけて側においてマウンティングしつつ優しい私を演出していたのに
下だったはずの みぞれの方が演奏に関しては上だと知った時、
悲しいとか悔しいとかではなく怒りの感情が出てくるのが実に女子っぽい。
1年時、先輩ともめて部活をやめた希美が相談も報告もしなかったのは
みぞれをその程度にしかみていなかったって事。

入学早々に天使のような葉月とみどりに出会えた久美子は幸運だったと再認識しました。

一人ぼっちのリズがみぞれかと思ったけど、どこまでも飛んでいけるのに留まることを選ぼうとする青い鳥がみぞれなんですね。
みぞれは希美に執着しなくても、心配してくれる優子や仲良くなりたいと望んでいる剣崎がいる事に気づいて。

鳥かごの蓋を開けた希美はみぞれと親友になれたようにみえたけど、
最後の2人で何を食べるか話ながらの仲良し風下校シーン。
前を歩く希美が振り返り、みぞれの驚く顔で終わりました。
振り返った希美はどんな表情だったでしょうか?
笑顔だったら驚かないですよね。


<主要登場人物>
・鎧塚みぞれ:種崎敦美
・傘木希美:東山奈緒

・剣崎梨々花:杉浦しおり

・リズ/青い鳥:本田望結


<ストーリー>
大会の自由曲に「リズと青い鳥」を選んだ北宇治高校吹奏楽部。
オーボエ担当の鎧塚みぞれとフルート担当の傘木希美の掛け合いが大事な曲なのだがうまくいかない。

みぞれは後輩の高坂麗奈に「ブレーキをかけ窮屈に聞こえる、本気の音が聞きたい」と云われてしまうが
1年の時自分の前からいなくなった希美を気にしすぎて実力が出せていないようだ。

2人は童話の「リズと青い鳥」のようにそれぞれの人生を歩みだせるのか?


23.1.13

投稿 : 2023/01/15
閲覧 : 155
サンキュー:

10

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リズと青い鳥のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
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リズと青い鳥のストーリー・あらすじ

北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当している鎧塚みぞれと、フルートを担当している傘木希美。

高校三年生、二人の最後のコンクール。
その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。

「なんだかこの曲、わたしたちみたい」

屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。

親友のはずの二人。
しかしオーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。(アニメ映画『リズと青い鳥』のwikipedia・公式サイト等参照)

ティザー映像・PVも公開中!

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2018年4月21日
制作会社
京都アニメーション

声優・キャラクター

種﨑敦美、東山奈央、藤村鼓乃美、山岡ゆり、杉浦しおり、黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、桑島法子、中村悠一、櫻井孝宏

スタッフ

原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)、監督:山田尚子、脚本:吉田玲子、キャラクターデザイン:西屋太志、美術監督:篠原睦雄、色彩設計:石田奈央美、楽器設定:髙橋博行、撮影監督:髙尾一也、3D監督:梅津哲郎、音響監督:鶴岡陽太、音楽:牛尾憲輔、音楽制作:ランティス、音楽制作協力:洗足学園音楽大学、吹奏楽監修:大和田雅洋

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