Dkn さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
隊列を整え進むモノトーンと、カラフルな創造性。
1965年。ベルギーのアニメーション作家。「ラウル・セルヴェ」作。
黒い軍隊がきれいな色を奪い、モノクロの世界にしてしまうストーリー。
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冒頭で色鮮やかなタイトルを、黒いモノトーンの軍人が銃を撃ち、カラーを失わせてしまう。
当たり前のようにあった“色”が兵隊たちによって次々に奪われていく。
無くなり、初めて分かる生活の中で息づいていた色彩という存在。
モノトーンになってしまった世界で人々はやがて覇気を失くし、
すべての人間が同じような行動を強制されはじめる。
そんな色彩を失った世界で、
一人の女の子が水をあげた場所から、一輪の花が咲く。
花には失われたはずの赤が煌々と灯っていた。
そこから色彩を奪われた人々の反撃が始まる。
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ベルギーアニメーションの父として慕われるラウル・セルヴェは、
1928年、ベルギーのオーステンデで生まれる。
アカデミーで装飾美術を習いながら、アニメーションを作り始めるが、
卒業後、兵役に就くこととなる。
幼少期から戦争を経験していた彼が、自身の表現したかった芸術やアニメーションから、
全体主義的な思想に取り憑かれていた時代に対しての、反ファシズム的な作品である「クロモフォビア」
色を奪われるというのは、作家としての芸術であったり、
それに準ずる多様性といった意味が込められていたのでしょうか。
ラウル・セルヴェの他作品には芸術をプロパガンダとして扱う事を
批判するようなメッセージが込められているアニメーションもあります。
彼の時代に伝えたかったメッセージは、現代にも通ずるものが少なからずあるかも知れません。
自身の境遇から生まれた反戦意識の高い作品でありながらも、
見る者を楽しませ、年齢や国境、果ては時代をも超えることの出来る映像。
理解は出来なくとも頭に残る。大人は勿論、子供が成長した時に意味がわかるものこそ、
メッセージを伝える映像作品としての真価が発揮されるんじゃないでしょうか。
私達の身近にある鮮やかな世界も守っていく努力をしたいものです。