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「さよならの朝に約束の花をかざろう(アニメ映画)」

総合得点
89.2
感想・評価
676
棚に入れた
3565
ランキング
89
★★★★★ 4.2 (676)
物語
4.2
作画
4.5
声優
4.2
音楽
4.1
キャラ
4.1

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さよならの朝に約束の花をかざろうの感想・評価はどうでしたか?

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

【女性の半生記モノ】として邦洋、アニメ実写、問わずして傑作!家族や子供にも観せたい文字通り【一生モノの映画】!!大河ドラマを1年観終えた様な充実感!!!

10代半ばの姿のまま、数百年の長寿を生きる“イオルフ”と呼ばれる種族
いにしえの伝説として扱われてきたイオルフ達は外の世界の人々と交流してしまうとその長寿故に普通の人間とは最後に必ず道を隔ててしまう為、「別れの一族」と呼ばれ、外界とは隔絶して生活していた
イオルフは文字の変わりに“ヒビオル”という繊細な布を織り上げ、その織り方に日々のメッセージを込めており、それが長い年月を生きるイオルフにとっての記憶であり記録であった
イオルフの民でみなしごの少女、マキアは優しい長老や親友のレイリア、クリムに暖かく囲まれながらも、どこか寂しげで家族のいない自分の孤独にやり場を失っていた
しかしある日、イオルフの長寿を狙う強国、メザーテ軍がイオルフ達を襲った
運からがら逃げ切ったマキアだったが、偶然にも野党に襲われた流れ者の忘れ形見である赤ん坊を拾う
マキアは赤ん坊にエリアルという名前を与え、自分の子として育てる決意をする
こうして身寄りなし、結婚暦なし、出産暦なし、ワケアリ、見た目少女、の1人子育てが始まるのだった…


『とらドラ』『あのはな。』『ここさけ』『鉄血のオルフェンズ』といった話題作を送り出してきた脚本家、マリーこと岡田磨里がP.A.WORKSとタッグを組んでの初監督
ことのキッカケはもちろん『花咲くいろはHOME SWEET HOME』であったが、この時に堀川社長は「岡田を100%さらけ出した“女の一生モノ”が観たい」と口にした
それから時は経ち、岡田から堀川社長へのまさかの一言に現場は驚愕した
「監督をやらせて下さい」
それは岡田自身が“観たい”と思ってる作品を自らの手で生み出そうという挑戦だった
(そういう意味では今作、『HOME SWEET HOME』のデラックスバージョンと捉えることも出来ますね)


演出経験の無い人間が、アニメ映画の監督をする…正直前代未聞の事態です
が、ある種としては好感が持てるな、とオイラは第一報を聞いたときに感じました
と、いうのも日本の監督ってアニメに限らずあまり脚本を書ける人がいないんですよね
全部自分でやるのは宮崎駿か新海誠ぐらいなわけで、海外では監督が脚本書いたり、脚本家から監督に転向するケースは結構ある
ってことでこの岡田磨里の挑戦を温かく見守ってやろうじゃないか!という気持ちに公開前、オイラはなっていました


さて、なにもかもが初経験な監督を支える為に、日本のアニメ界の重鎮とも言える超豪華スタッフが信じられないぐらい揃いました
もはや奇跡と呼べるレベルです


直近でマリー監督を支えるのがチーフディレクターの篠原俊哉
その篠原と『凪のあすから』でタッグを組んだ東地和生が美監、大自然から繁栄著しい文明まで、場面がコロコロと変わるファンタジックな世界観を作り上げた
キャラクターデザインを『タクティクスオウガ』で知られる吉田明彦がシンプルかつ繊細なものに仕上げ、これを同じくP.A.作品ではお馴染みとなった石井百合子が纏め上げる
そして演出処理を買って出たのが『エヴァンゲリヲン』等で有名な平松禎史、『花咲くいろは』の安藤真裕、『キズナイーバー』の小林寛、『サイコパス』の塩谷直義、『プリンセス・プリンシパル』の橘正紀、言わずもがな岡田とは盟友の長井龍雪、『TARI TARI』の橋本昌和
とまあこれだけ名前を挙げれば解ると思いますが、普通に考えてこれだけの布陣が一同に会することなんてほぼほぼありませんw
脚本家だから演出家との接点は希薄かと思っていたのですが、逆に脚本家“だから”監督クラスの人達とは縁が深い、ということなのでしょう
恐れ入りましたw


さらに彼等の複雑な指示をこなしていくスーパーアニメタが幾人も参加してる上で特筆したいのはやはり、数々の劇場アニメに携わりジャパニメーションの代名詞といっても過言ではない存在といえる井上俊之がメインアニメタとして参加していることでしょう
氏の仕事ぶりとしては過去最大クラスと言える物量ではないでしょうか、歴史的にも非常に価値のあるフィルムになったと思います


また川井憲次の劇伴やrionosの手掛けた主題歌も印象的、かつ効果的に使われています
よくあるBGMがやたら五月蝿い映画ともやたら静かな映画とも違うと言えるでしょう


さて、長々と書き綴りましたがオイラがこの『さよ朝』を最も評価したいポイントなんですが、それはずばり“女性の半生記モノ”というジャンルに新しい回答を出したのが今作だということですかね
実は昨今の大河ドラマや朝ドラで、激動の時代を逞しく生きたパイオニアな女性をモデルにしたドラマが流行っている傾向にあります
コレ自体はなんら悪いことでは無いと思うのですが、主役に抜擢される女優がスケジュールや売り込みの関係もあってか芸能界が特にプッシュしたい年端も行かぬ20歳前後の若手に任せられる、というのが通例になっちゃってるんですね
年齢相応の役を演るのはともかく、主人公が結婚して子供産んで育てて孫が産まれ…なんてところまでいくと大概の場合観れたものではありません;
結婚も出産も経験してない若者に祖母の役を演れったってそりゃ限界がありますよね
この手のパティーンの作品は中盤以降ほとんどメチャクチャになってるんでいい加減ウンザリしていたところなんですわ
ところがマリーは素晴らしいアイデアをこの作品に残してくれました
“主人公が長寿で少女の姿から変わらない”なら無理に演者を変更したり芝居を強要しなくても良い、ということになるからです
しかもフレッシュな若手声優の初々しい演技をそのまま使えるのだからこれ以上は無いと言えるでしょう
これに応えてみせた本作でマキアを演じる石見舞菜香は今後特に注目したい素晴らしい役者になってくれることでしょう


また劇中では実に長い年月が経過していくにつれ、幾人もの登場人物たちの立ち位置が徐々に変化していく様が描かれることについては、「群像劇が下手」と言われていたマリーが心情変化を直接的に視点を変更して描写するのではなく時間と舞台が変われば人の気持ちも変わる、という形で表現出来るようになっているという点において賞賛したいです
ある者は恋仲から復讐者へ
ある者は敵兵から従者へ
ある者は家族から想い人へ
またある者は子供から大人へ…


こうして観ていくと僅か2時間の映画で全50話の大河ドラマを観終えた様な充実感に満たされます
とても満足度の追求がされた映画と言えるでしょう
マリー独特の毒っ気が上手いことオブラートに包まれており、特に“幸せな女の裏には必ず不幸せな女がいる”ってところに的が絞られていると感じつつも、決して家族と一緒に観ると気まずかったりするわけでもないし、子供に観せられないような過激な描画が含まれているわけでもありません
だから安心してオススメ出来ます
その点は細田守も見習って欲しいとすら感じますねw
歴史的傑作の誕生です

投稿 : 2018/03/06
閲覧 : 837
サンキュー:

40

双真 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

★★★★★☆

おもしろかった!

読めない展開に2時間が短く感じる。いい作品だった。

投稿 : 2018/03/05
閲覧 : 205
サンキュー:

2

ネタバレ

fuushin さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

対価代償を求めえぬ、見守りに徹する愛のかたち

公式ホームページより、岡田氏の初めての監督作品ということで関心を持ちましたので鑑賞してきました。

『ここさけ』は観ておりましたので、そこで見られた登場人物の感性や行動意識が、今作ではどのように表現されているのか楽しみでした。

ここからネタバレになるかもしれません。
{netabare}

●紡がれる物語。
{netabare}
舞台は、ファンタジー感がいっぱい詰まった美しい異世界です。
スクリーンから垣間見えるシーンは、微部・細部に至るまでしっかりと構築・表現されています。
感情的にも安心して導入部から自然に入り込める感じです。

主人公の住んでいる世界は、神秘的というより、どちらかというと、情緒感の溢れる女性的なたおやかさに包まれるような感じです。
とっても穏やかで、緩やかで、それでいて安心の気にゆたかに包まれているような世界です。

時間を長く過ごす種族の世界というのは、存外こういうものなのだろうと納得できるような流れがありやかに描かれています。

台詞は少なめで、ちょっと小声なので、それゆえに一言一言を聞き洩らさないように傾聴しました。それも説明臭いようなシーンはなかったです。
とてもナチュラルで、いよいよ物語に吸い込まれていく布石になっています。

それにしても、造形デザインがよく練り込まれています。曲線や色彩、織り上げられた布の動きなどがとっても綺麗で、一つ一つの質感が清らかさにおいて際立って優れています。きっと作画に力があるからでしょう。それがこころよく感性に訴えかけてくるのです。

冒頭の10分間はとても重要なファクターが重ねられている感じがします。ぜひ注意深く観ていただきたく思います。

そのあとの物語はテンポよく回ります。ほどよくリアルな世界観も表現されています。特に難しく考えるところはなかったように思います。

特徴的なのは、マキアや、周りの人たちがいい人ばかりなのです。
あまりにも優しい人たちなものですから、愛の豊かさを感じます。それだけに、マキアの母性本能から生じるいろんな感情が、ときに何の遠慮もなくストンと胸の深い部分に落ちてきてしまいます。それが応えます。震えます。

伏線、とまでは言えないのかもしれませんが、物語の前半部でマキアがみせる言葉や仕草によって、観ている人の感受性や母性のような感情がゆっくりとじんわりと絆され感化されていくので、物語の後半部に移っていくと、とりわけ情愛の深い人は胸の奥底がずしんと楔(くさび)を打ちこまれることになるかもしれません。

それがはっきりと分かるのは、最後の最後です。走馬燈どころではない、ナイアガラの滝のように、怒涛の打ち込みです。涙腺の緩くなっていた私は、完全に崩壊してしまいました。
{/netabare}

●見送る物語。
{netabare}
「逆縁」が初めから設定されてある物語は、とんでもなく儚いし、あまりにも切なく思えます。
時間の流れが違うということは、愛する者の命の移ろいを突き付けられるということ。
それを目の当たりにすることで、知ること、分かることの「残酷さ」があります。

でも、気を付けないと気付かないまま見落としてしまうのですが、「逆縁」だからとか「残酷」だからとか、そういうところからくる儚さや淋しさで流される作品ではないし、だからといって愛のかたちのひとつとして「見守る」ってことを理解できたんだろうか?とやるせない気持ちにもなっていました。(はっきりいって浅い人生しか送っていないような・・。)

避けることのできない出会いに交わってしまったとき、それでも定められた運命を受け入れるためには、どんな智慧を持ち合わせていれば「幸せな気持ちを持ち続けられる」のでしょうか。

ともに同じ時間を過ごし、暮らしを彩り、傍らを通り過ぎていった人たちを、どんなふうに受け止めればいいのでしょうか。
愛する人の語られた言葉の一つ一つを、どんなふうに思い留めればいいのでしょうか。
愛する人の感情や体温や表情を、どんなふうに心に刻めばいいのでしょうか。
愛する人のいた風景と光景を、どんなふうに胸に納めればいいのでしょうか。

そうして、どんな気持ちで見送ればいいのでしょうか。


今、巷では「〇〇ロス」がしばしば話題になっていますが、この作品は否応なくそこに目を向けることになります。
きっと、誰でもが向き合わなければならない、人生最大のストレスになるはずの決定的な要素なのです。

よくよく考えれば、ひとりぼっちが、ひとりぼっちに関わるということは、実は、私たち自身のことでもあるのですね。

私たちは、何も持たずにひとりぼっちで生まれ落ちてきました。
やがて、何も手に持たずにひとりぼっちで、ふたたび別れゆくのです。
それは必ず訪れることはわかっているはずだし、避けられない道理、決まり切った真理なのです。

この作品のマキアやレイリアらが常に心に感じていることは、物語のなかだけに収まることではなくて、私たちの心にとってみても、向き合う定めにある永遠の普遍的な真実なのです。

恐ろしい力を持った「喪失感」に、心が殺されないように、壊されないようにしなければなりません。自分自身が幸せでいられるために、そのためのヒントをこの作品から、感じ取りました。
{/netabare}

●気になったこと、ちょっと分かったこと。
{netabare}
物語の終盤で、マキアとレイリアがドラゴンに乗って故郷に向かって飛び立つシーンがありました。
マキアがエリアルと過ごした場所。レイリアがソドメルに会いたがった場所。そこから離れて、つまり、子どもたちとの離別が表わされるシーンです。
2人の表情、言葉のなかに、先立つだろう?子どもへの愛惜はあっても哀惜は含まれていなかったような気がしました。
愛惜は、母としての感情として理解できました。子どもを愛しく大切に思う気持ちです。強く生きていってほしいと願う気持ちです。
哀惜は、人の死を悼む気持ち(転じて死を迎えるだろう人への悲しみの気持ち)です。子どもたちは先に死んでいくことが分かっているのに、その感情が表現されていなかったような気がするのです。
そこに引っかかったのです。
ラシーヌの言っていた「愛を知れば独りぼっちになる」ということも気になります。

私は「さよ朝」のたくさんのレビューに目を通しながら、自分の咀嚼力のなさ加減に悶々としていたのですが、先日ちょっとした機会を得て少しだけ気づくことがありました。
むしろ、若い世代の方には身近なのでしょうが、坂本九さんの「心の瞳」という曲との出会いでした。そこでやっと少し分かりました。愛を渡すこと、送ることということが。

ラシーヌが話していた独りぼっちというのは、愛した人への執着心なのだと。あまりにも美しいその追憶に、あまりにも切ないその郷愁に、あまりにも楽しいその思い出に、自分自身の心を縛ってしまうことなんだと。
それはラシーヌの言う一つの真理ですが、ラシーヌの心理でもあります。
リーダーとして、マキアに同じ思いをしてほしくないという示唆であり、愛の形のひとつだったのでしょう。

「心の瞳」は坂本九さんが亡くなる直前に吹き込んだ最後の歌です。(坂本九さんは歌手です。「上を向いて歩こう(スキヤキソング)で有名ですね。 1985年8月12日、日本航空123便墜落事故でお亡くなりになったのです。群馬県多野郡上野村高天原山の山中(御巣鷹の尾根)に墜落し、520人の方がお亡くなりになりました。)

若い世代の方は学校で合唱曲として触れているみたいですが、その合唱曲を作られた方(学校の先生でした)は、たまたまこの曲をFMで聴いていたそうです。(この曲は、電波に乗って流れたのは2回しかなかったそうです。)当時なかなか歌ってくれない生徒さんがいらっしゃって悩んでいたところ、この曲なら歌えるかもって思って作られたそうです。

学校という場所は何かにつけ心が揺さぶられる場所です。処世術という智慧を身につける前の純粋無垢な感性をもつ生徒の集合地です。やがて迎える卒業というターニングポイントは、喜怒哀楽の心をそこに残さず、次のステージに向かう大切なタイミングです。「心の瞳」は卒業ソングとして王道にあり、送り出す人、送り出される人の関係性を、温かく、軽やかに、優しい気持ちにさせてくれる名曲として知られています。

それを聴いて、そしてマキアの心情に少しだけ近づけたような気がしました。彼女もまた、自分のいるべき場所、向かうべき場所があり、人間の世界から卒業していくのは自然なことなのだと理解しました。エリアルは結婚し子どももいましたからマキアも育ての母としての責任を果たしたという理解を私はしたのです。

でも、レイリアについては、違和感を持ちました。ソドメルに会いたいと強い執着を持っていたレイリアでしたが、マキアの誘いにのってソドメルと別れることを選んだのです。レイリアは娘とともに暮らせない苛立ちを実感していたから故郷に戻ることを選んだのでしょうか。それとも別の理由があったのでしょうか。私はよくわからなくて、どうしても唐突な別れのような印象をもってしまいました。(どなたか教えてください~。)

マキアとエリアルとの交流の中で生み出された喜怒哀楽のエナジーは、彼の死後、マキアの記憶のなかに別のエナジーに姿を変えて、生き続けていくんだろうなって思いました。彼とのエピソードは美しい文様と煌く彩になって機織られることになり、マキアを慰め、幸せに誘うのかもしれません。
{/netabare}

マキアの生きざまは、私たちの生き方にとても近しい。
私も「一瞬の今を1000秒に生きよう」と思います。確かに生きた証としての文様と彩を機に織り込んで自分なりの布を作っていこうと思います。
岡田氏の意図の糸の端っこを少しは掴めたのかなぁ?
{/netabare}

長文をお読みいただきありがとうございました。
この作品が皆に愛されますように。

投稿 : 2018/03/04
閲覧 : 340
サンキュー:

34

ネタバレ

しゃあろ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

賛否が分かれそうな作品

みておもしろくなかった、となる作品ではないとは思うが、ストーリーの中で気になる点は少なくなかった。

母の無償の愛のようなものをテーマに設定されているのか、あまりにもそれに従順に進めていきすぎて変な齟齬や、描かれない大切な場面などがあったように思える。

特にレイシアにまつわるものでは、そういった弊害があったように感じる。例としては、グリムに対して子どもがいるからと王宮からの脱出を断っているにもかかわらず、終盤では割とあっさり子どもに別れを告げていることが挙げられる。(しかもあの場面では、子どもは自殺以外の選択肢がないように感じる)

エリアルが父になるまでの葛藤ももう少しあってもよかったのでは、と感じてしまう。母であるマキアが好きだったが半ば喧嘩別れして、リタと結婚して子どもを授かったら無償の愛パワーでマキアよりリタ達を優先するようになる、というようなうがった捉え方もできてしまう。

子どもへの無償の愛との対比に恋人への愛を引き合いに出すことが逆効果だったように思える。無償の愛を引き立たせるあまり、グリムが闇落ちするのは本来の意図するところではないと思える。

あまりにもレイシア関係がバッドエンドすぎて救いがなかったことに尾を引いてこのような評価になってしまったが、マキア関係では涙が出る場面もあった。作画も非常に凝っており、作品に引き込まれるのは早かった。

投稿 : 2018/03/04
閲覧 : 206
サンキュー:

11

ネタバレ

Ennuiシナジー さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5
物語 : 2.0 作画 : 2.0 声優 : 3.0 音楽 : 2.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

微妙でした

特に面白いわけでもなく、良作でもないので、余程の映画好きでもない限り無理に劇場に行く必要はないと思います。

キャスト一覧を見て声優目当てで劇場に行こうとしている人は要注意です。劇中の大半は新人声優の石見舞菜香さんと入野自由さん演じるキャラの子供時代の声優がずっと喋っているので、他の豪華声優陣の出番は殆どないです。
石見舞菜香さんの大ファンとかなら話は別ですが。

キャスト的には深夜アニメ好きが見に行く作品のような感じがしますが、実際に楽しめるのは、普段アニメなどを見ない層かと思います。

{netabare}時間がかなり飛びます。
完全なネタバレですが、主人公(男)が幼少期から老人になって息を引き取るまでをかなり時間を飛ばして描いて、感動をさせよう、といった作品です。{/netabare}

投稿 : 2018/03/04
閲覧 : 171
サンキュー:

2

ネタバレ

はあつ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

妖精と人間の家族の絆

数々の青春群像劇の脚本を手掛けられた岡田麿里さんが、脚本だけでなく自ら監督も志願され手掛けられた作品。
初監督として、自身が好きな要素である、かつて「あの花の名前を僕たちはまだ知らない」「凪のあすから」で描いた“時間のズレで生じる切ない感情“を掘り下げた物語を作りたかったそうです。

アニメ制作会社P.A.worksさんとしても映画初挑戦であり、岡田監督と組んだのは「凪あす」の主要スタッフの方々です。
私、P.A.さんのアニメ作品では、「凪あす」が一番好きなので、この制作情報を知り、期待を膨らませて観てきました。

作画は、劇場の大画面で見る価値あり!

「凪あす」でも私の心を虜にしたファンタジー世界を形作る美術は一級品。
美術監督、東地和生氏のセンスは美しさだけじゃなくノスタルジーも誘います。
冒頭から、桃源郷の中の神殿のような佇まいのある伝説の民が住まう里や、繊細美麗な織物に目を奪われます。
「凪あす」同様、水のある風景画も美しいんですが、特に、翼竜の舞う空は、表情豊かに溢れる雲と光のコントラストが絶妙でうっとりできました。
(余談ですが、P.A.のアニメ「SIROBAKO」で、雲にこだわりを見せた美術スタッフは東地氏がモデルなんでしょうか?)
作品を通して、数多くの素晴らしい一枚絵を堪能できました!

音楽に関しても、場面毎の劇判曲は、情感の盛り上げ方が上手くてそつがなく、最後に流れるrionosさんの主題歌も、しっとりと温かく歌い上げられ、優しい余韻を味わえました。

で、肝心のストーリーについて

私から申し上げるなら、公式の作品紹介を見ずに鑑賞された方がイイように思います。(なのでそれにあたる部分は一部伏せます)
本作のファンタジー設定{netabare}~若い容姿のまま、おそらく400~500年の長命を保つ伝説の民イオルフ~
その民の一人、当時15歳くらいの親のいない少女「マキア」が故郷を離れ、私達同様の寿命である常人の赤ん坊「エリアル」(男の子)を拾い育てる事になります。{/netabare}
このコアとなる舞台設定を作る事で、初監督として一番魅せたい、共に生きながら時間の進み方が違う事で生じる切ない感情の変化を、意欲的に描き上げています。

不安、戸惑い、苦悩、葛藤、覚悟、決意が、目まぐるしく交錯していく心情描写は、岡田監督らしい心をえぐる様な激しさも見せます。

主軸は親子の様な関係性にあるので、スムーズに親子愛や母性愛に感動できる方も多いと思います。

しかし、老化現象とも言える私の感度の鈍ったアンテナでは、主軸とその周辺の多彩な感情の波を上手に拾えなかった様で、感動しきれませんでした~

以下、ネタバレで言い訳がましく愚痴感想~(^^;
{netabare}
自分の心はひねくれてるんでしょうか~
ぶっちゃけ、ここぞで入る回想シーン、泣かせにキテる感を感じて、逆に泣けなかった~
主役の2人、エリアルには感情移入できたけど、マキアには人の母親らしい感情描写が薄く、妖精さんなら、この答にたどり着くんだろうとしかみえず、感情移入できませんでした。
鑑賞前に作品紹介から、単純な親子物の感動を期待しすぎたのもいけなかった様です。

エリアルは、幼少時、母親をからかわれても大好きで、母親から苛立ちをぶつけられても、おどけて機嫌をなおしてあげようと振る舞う健気さを見せ、思春期らしい感情描写も切ない。
母親を憎むような事が無い限り、息子にとって母親は、最初の理想の女性像になることはままある事。
その上、血が繋がらず、いつまでも若いとなれば、際どい情念がもたげてくることも仕方ない。
願い続けてきた、愛してくれた親への報労の思いとの葛藤が切なく伝わり、
「このままでは守ることができない!」
と、別れを決意する場面は激しく胸を打ちました。
そんなエリアルに肩入れし過ぎたせいなのか、マキアには、せめて母親としてエリアルをもっと受け入れてあげて欲しいと、もどかしく感じたんです。

私の、独りよがりかもしれませんが、ありきたりでも、マキアが親として苦労する姿と親子のふれあいで得れる親の喜びをもっと描いて欲しかった。
エリアルの6才頃から15才頃に時間がひとっ飛びしますが、その間の10年近い移り住みながらの暮らしは、マキアにとって計り知れない苦労だったでしょう。
それでも乗り越えてこれた「モゾモゾ虫」の様な息子とのふれあいによる充足感を感じる事が、もっと沢山あったはずです。
そんなシーンを観ていれば、ここぞの場面での回想はもっとシンプルでも、マキアの心情がダイレクトに伝わり、強烈に心を揺さぶられたと思います。

また、マキア達の対比として必要だったレイリアとその娘メドメル。
親子の情愛は育て育てられてこそ育まれる物だと主張したかったのか、あれだけ会いたがってたのに「私の事は忘れて!・・」と突き放し、「・・とても綺麗な方なのね。」なんて諦観したようなセリフで締める非情な別れは、本作で最も岡田脚本らしいエグさが表れてました。
ですが、結局、両親から見放されて終わるお姫様は、物語中、一番不幸で救われない。
大人の勝手で、生まれ捨てられる子供に罪は無く、直後の壮大なシーンでまぎらわされますが、思い返すと後味が悪いです。

他の登場人物の関係性も、あとは想像にお任せします的な描き方が多くてモヤモヤします。
妙にレイリアに気遣う王国の軍団長イゾルの心情は?
ハーフのバロウとマキアの最後の関係は?(ラストに映ったのは2人の子供たち?)

あと、ストーリーにアクセントを付けるための戦闘シーン。
敵影の見えない草原を騎馬が横列突撃したり、伏兵や寝返り無しの城内大乱戦とか、違和感ありすぎて安っぽく見えました。

映画の限られた尺の中、これらの中途半端に見える設定や要素を少し削って、もっと親子の関係性に絞った構成ならと個人的には惜しまれます。
(逆にこれだけの題材なら、1クールか2クールのアニメドラマが観たかった!)

声優さんについて

マキア役の石見舞菜香さんは、最近流行りの若手女優が演じる不安定さはなく、安心して観れました。
欲を言えば、イメージどおりの声だと抜擢したのが岡田監督なので、演技も監督の指示どおりなんでしょうが、年月を経てもマキアの見た目が変わらない分、心の変化を感じさせる様な、もう少し声音や口調に変化を加えて欲しかったです。
その点では、レイリア役の茅野さんは、感情の変化の激しいヒロインを強調できてたと思います。

最後に

長々と勝手な不満を述べましたが、初監督としての岡田さんの意欲を感じたし、P.A.worksさんの映画制作の力量も十二分にある事が分かったので、このタッグでの次回作に期待します!{/netabare}

投稿 : 2018/03/02
閲覧 : 337
サンキュー:

34

ネタバレ

sherlock さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

別れと孤独を知った母親の強さの秘密…それは子供というヒビオル

※久しぶりにこの気持ちを書き残したくなったので書きます!!

元々は見る予定がありませんでしたが
たまたま時間ができたので一切下調べなしでこの作品を観に行きました
そしてびっくりしました
いや~まさか{netabare}こんなに泣くとは
泣きすぎて頭痛いです{/netabare}

この作品の良さは絵ももちろんだがストーリー設定だと思う
簡単にあらすじを説明すると、
「別れの一族」と呼ばれるイオルフの少女マキアが赤ん坊と出会い
子供の成長と共に時間が流れながら彼女がどう変わっていくかというお話であるが
この作品を通してまず感じたのは

{netabare}『母親の愛情は何物にも代えられない純粋で深いものだという事である』{/netabare}

自分の人生や命を犠牲にしてでも守りたい気持ち…
相手に忌み嫌われても絶対に変わることのない気持ち…
一緒にいるだけで幸せだと感じられる気持ち…
これらの感情が凄く感じられる作品である

そして大事なのは

{netabare}どんなに子供が離れていても母親は子供の事を一番に考えていること{/netabare}

エリアルがマキアを毛嫌いして、距離を置いても
マキアはエリアルのために人生を捧げ、エリアルの幸せを願っていた
エリアルが自分の居場所を見つけ、自立した姿を見た後にマキアが去っていくシーンは
喜びと寂しさが混ざりあい何とも表現し難い感動を抱いた

母親と子供の関係には必ずしも血が繋がっている必要はない…

{netabare}子供と過ごしたかけがえのない時間が母性を育み、
大変な思いをしながら一生懸命育ててくれたことに子供が感謝する{/netabare}
親子にはこの事実だけで充分なのだと改めて感じることができた

さらに、この感動をより強くしてくれたのは
マキアがイオルフという民族だということ
数百年の寿命をもつことで時代に取り残され、
変わりゆくものを見ることがどれだけ孤独で辛いことなのか、
そして周囲の人間の思惑と戦わなければいけないのかを考えさせられた
子供が親よりも先に亡くなってしまうことがどれ程辛い事なのか
親になってみないとわからないがきっと生きる意味を失ってしまうぐらいの喪失感なのだろう

バロウが最後に言った言葉
{netabare}【別れとの出会いを探しに行こうか】{/netabare}

この言葉には出会いがあれば必ず別れがあり、
喜びと哀しみは表裏一体だと教えてくれている気がした

は~い、という事でとても真面目な話になってしまいましたが、
この作品は{netabare}「ラシーヌのお腹の虫がこちょこちょ」としたくなr…じゃなくて笑
{netabare}マキアにとってヒビオルの中心はエリアルで
最後のマキアの「いってらっしゃい」に込められた複雑な想いを是非感じて欲しいので
興味がある方はぜひ一度観てみてはいかがでしょうか(*'▽'){/netabare}{/netabare}

投稿 : 2018/03/02
閲覧 : 207
サンキュー:

11

ネタバレ

ぱんだまん さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

それでも愛は素晴らしい

〜はじめに〜
2016年に『君の名は。』が爆発的なヒットを記録して以来、停滞していたアニメーション映画の再注目が最近盛んになっている。今や宮崎氏、細田氏、新海氏の御三家が席捲する業界だが、満を持して暖簾を掲げたのが岡田麿里氏だ。人の機微を描くことに長けたヒットメーカーである彼女は業界からの評価も高い。そんな彼女が初監督を務める今作だが、アニメーション制作を務めるP.A.WORKSにとっても完全オリジナルの映画は初。右も左もわからない中で生み出される『岡田麿里の100%』が、一体どんな作品なのか非常に興味深かった。

〜子がいて親がいて〜
 描かれていたのは、切なくも優しい『母の愛』だ。育て親となるマキアが自己を省みず我が子を育てる姿は、個人的にどうしても片親である私の母と重なった。だから、青年になったエリアルの反発も不甲斐なく感じる気持ちも理解できた。子供からしたら「なんで俺のことばっかり気にするのだろう、もっと自分のこと気にしろよ」と母親の心理がつかめない時ある。 {netabare}ただ、劇中でマキアも似たことを言っていたが、親にとって『子を想うことは自分を想うことと同じ』。そこにあるのは無償の愛と子を持つ喜びなのだろう。最終的にエリアルも子を持つことでマキアの気持ちを理解したが、私もいつかその時が来るのかとふと思った。 {/netabare}

 アニメ版『そして父になる』と言えるかもしれない。こちらでは血縁のない我が子を受け入れるのに四苦八苦する父親が描かれていたが、共通して『自分の血を分けてなくとも、子を想う気持ちは変わらない』ことがテーマだった。また、劇中の母親は父親と打って変わり事態をすぐに受け入れたことを思い出した。子とナマのやりとりをする時間が多い母親だからこそ、大切なことに気付けるのだろう。

〜『飛ぶ』ということ〜
 ここからより作品に踏み込んだ話をしようと思う。マキアの成長記でもある今作だが、劇中では頻繁に『飛ぶ』という表現が出てくる。 {netabare}よく鳥が自由の象徴として扱われるように、今作では『変わる』ことを『飛ぶ』という意味合いで表現している。映画冒頭のマキアは非常に控えめな性格から高台から海へ飛ぶ勇気すらなかった。また、村から飛んで出るのも古竜に無理やり連れていかれただけで自分の意思ではない。つまり、これまでの自分(過去)に囚われて飛べずにいたのだ。しかし結果として外に出てしまったマキアは、出会いと別れの中で愛を知った。これは「誰も愛してはいけない」という変化を恐れる村の掟を破って得られたことだ。現に終盤にマキアはもう一度空を飛ぶ。その時は、変化の代償として生まれてしまった子供との共依存も脱ぎ捨て、自分の意思でまっすぐ前を向いていた。別れの一族として別れを避けるのでなく、『別れと出会える一族』としての生き方を見つけたのだ。だからこそ「愛してよかった」と言えたんだと思う。 {/netabare}

〜岡田麿里のセンチメンタリズム〜
 これまで多くの岡田作品(ex:凪のあすから、あの花)で『変化』を題材にしてきているが、今作でも時間の仕掛けを用いて色濃く描いていた。例えば、後半から主な舞台となる王国・メザーテ。 {netabare}先祖から引き継いできた謎の古竜を武器に英華を築いていたが、古竜の死によって敵国との力関係が崩壊し滅ぼされてしまったのだ。振り返ればかつて人間も自然やオカルトなど理解不能な物を排除しようと街を作り、産業システムを生んだ。まさに、このメザーテの崩壊は産業革命を遂げようとする時代の流れについていけなかったことを意味する。現にメザーテは完全制御不能な龍(つまり理解不能)に頼っていたが敵国は砲台や銃など近代的な武器で応戦していた。また、イオルフの3人組でもうまく対比されていた。変化に順応し飛んだマキア・レイリアと変化を受け入れず生き絶えたクリム。 {/netabare}作家・岡田氏の兼ねてからの主張は『変化の肯定』なのだ。その上で、様々な立場から一貫したテーマ(変化)を見せるのが岡田氏の真骨頂だ。

〜ファンタジーにしてよかった〜
 美術監督の東地和生氏も言っていたが、岡田氏といえば『現代』のイメージだった。その理由はやはり多くの舞台が『学校』であったからだろう。同じファンタジー要素がある凪あすも同様だ。狙いとしては視聴者の身近なものなら場面説明もいらないし肌に馴染み理解が早い。またクリエーターもイメージしやすい。だから、強烈なほどに心の陰陽を視聴者に伝えることができてきた。ただ一方で、伝わりすぎるが故に気持ち悪く感じる視聴者も少なくなかった。そんな中、今作は学校を使わず純然たるファンタジーを舞台に描いた。そうすることで岡田氏の描くリアルがファンタジーで中和されアクがなくなった印象だ。そういった点で岡田麿里ファンから「物足りない」という声があるのも上手く万人受けするようになった証拠だろう。もちろんそれが叶ったのも、東地さんや岡田さんを主体とした美術が巧みに場面説明を促していたおかげでもある。

〜最後に〜
あっぱれ岡田麿里、あっぱれPA。どうしても日々を描く都合から中盤に中弛み・話の抑揚のなさを少々感じてしまいましたが、本当に素晴らしい作品でした。これが処女作なんて信じられないです。SHIROBAKO以来ヒット作を作れなかったことに加え、雇用問題でファンからバッシングされるなど紆余曲折を経て生み出した子供は実に高い完成度を誇っていた。ただえさえオリジナル作品を提供するのが難しい中で映画として配給するその勇気とご気苦労は計り知れません。本当ありがとう。

投稿 : 2018/02/27
閲覧 : 442
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16

ぽよお さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

よかったです

余韻に浸ってしまう作品です
自分の過去の感情と重なるシーン、セリフがあってジーンとしました

たくさん書きたいことはあるのですが、愛情ってすごくやさしくていとおしいなって気持ちになりました

投稿 : 2018/02/27
閲覧 : 187
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6

雀犬 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

包み込むような優しさ

岡田麿里脚本というと「ドロドロ」という言葉で形容されるメロドラマ展開、
心を針でチクチク刺してくるような泣かせのシーンが特徴的です。
僕なんかそのアクの強さが大好きなんですが、好き嫌いがはっきり分かれる作風だったと思います。

本作は初監督作品、ましてやP.A.WORKSの堀川社長の「岡田麿里100%の作品が見たい」
というリクエストに応える形で生まれたアニメですから
愛憎入り混じる棘のあるストーリーを予想していたのですがこれが見事に裏切られました。

「愛別離苦」をテーマに、人と人の絆をしっとりと描いた物語です。
全体的にとても哀しいお話なのですが、それを優しさで包み込むようなイメージ。
キャラクターデザインを見た時から女性好みだなと感じていたのですが、
これほど女性的なアニメは観るのは初めてかもしれないです。
女性がアニメ監督をすること自体は珍しいわけではありませんが、男性向け萌えアニメを作品が多く
まして脚本を自身を手掛けることはなかったと思います。
今回既存のヒット作の焼き増しではなく、
女性らしさを隅々まで感じさせる新しい世界を見せてくれたのがとても嬉しかったです。
どうもインタビュー記事を読むに、
こういうテーマはそもそもTV放送アニメだと企画が通らないらしいのですが…

一方で「あーこれはマリー脚本らしいな」と感じたのは
大事な場面で自分の考える正しさ、価値観をきっちり伝えてくるところですね。
それは過去作と同じく、切迫した状況で主人公に決断させるという形で表現されます。
そしてその選択自体が心の痛みを伴うものだというのも共通していていて、
共感であれ反感であれ、観る者に強いエモーションを生みます。
本作で言うとマキアとエリアルが出逢うシーンからしてそうで、
観た方は分かると思いますがこの場面は「拾う」と「見棄てる」どちらが正しいとも言えないんですよ。
極端な話、桃太郎のように赤ん坊がドンブラコと流れてくるのが無難なわけです。
さよ朝はファンタジー作品なのでいくらでも都合良く描けます。
でもそうしないのがマリー脚本の良さなのだと思います。
終盤の「さよなら」をする場面も、かなり残酷な選択をさせるのですが
「親子の恩は返すのではなく渡していくものなんだ」という思いは
台詞がなくても伝わってきました。

これはP.A.WORKSの長所でもありますが、やはりキャラクターの描写は巧いですね。
特に幼少期のエリアルはべらぼうに可愛いくて、相当な破壊力があります(笑)
そして面白いと思ったのがマキアとレイリアの関係性です。
同じイオルフの少女でありながら、性格も境遇も対称的で
この2人はまるでコインの表と裏のような関係になっています。
マキアは感情がとても分かりやすく観客の涙腺を刺激してきます。
一方でレイリアは感情が複雑で謎めいたところもあり、
特にクライマックスシーンでの行動は色んな解釈があるのではないでしょうか。

ストーリーはそれほど斬新なわけではなく、
話が飛び飛びになる繋ぎの悪さも若干感じたのですが、
見終わった後に長く余韻が残る、非常に印象的な作品でした。

実は観て1日経った今でも心にザワザワするものがあって、
少々戸惑っている所なのです。

投稿 : 2018/02/27
閲覧 : 594
サンキュー:

47

ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

綺麗に紡がれた母と子の物語……感動しました。

本作で初監督及び脚本を務めた岡田麿里さん。

個人的に氏の脚本には、真人間の聖域としての学校がまずあって、
そこに馴染めないとか、行く行かないとか。
外れた者たちの生き様とか運命とか……。
こうした描写に惹かれる部分が多分にありました。

なので、登校する学校がないファンタジー世界で、
果たして張り合いはあるのだろうか?
などの懸念が正直ありましたが杞憂でした。


長い世界の営みの中では、人間の一生や時代など、
流れ行く月日の縦糸と、人のなりわいの横糸で織り込まれた、
切れ端に過ぎないのかもしれない。

けれど、その一糸、歴史書で言えば一行で流される部分にも、
親子愛など、様々な想いが刻まれている。

それらが不純物が混じって乾燥しがちなw私の心にも、
確かにジーンと染みて来る、感動作でした。


P.A.WORKSの背景作画や、川井憲次氏の劇伴などにより構築された、
ダーク風味な中世を思わせる王国の風景、
のち所により一時、製鉄などによるものと思われる、
煙が立ち籠める街並み、といった世界観もゴージャス。

混戦の日本ファンタジーアニメ映画に新たな強豪の参戦ですね♪
おめでとうございます♪


上映館数は決して多くなく、私も劇場鑑賞のために少し遠出しましたが、
足労の価値は十分ある一本だったと思います。


強いて劇場鑑賞するデメリットを挙げるとすれば、
本作もまた涙腺攻撃力が強く、
公共の場での涙腺崩壊のリスクが大いにあることw

深夜アニメばりのエグ味を効かせて、ピュアな母の愛を一層、際立たせる。
時代を激動させて、揺るがない母の愛を一層、際立たせる。
あとは、{netabare}この禁則事項……絶対にクライマックスの伏線回収及び涙腺爆破のために、
起爆させて来るに決まっているだろう……という約束事とか。{/netabare}

この辺りの狡猾な手練手管に関しては監督以下スタッフ一同に一日の長がありw
私はこみ上げて来る程度で済みましたが、
涙脆い方は是非ハンカチなどの織物を持参して劇場鑑賞にお越し下さいませ♪


その他、感じたこと……。

本作のプロットは、{netabare}人間と寿命差のある種族設定による、
時間差による一生涯の俯瞰から、
人生を悲喜こもごもをぶつけて来る、典型的な感動作の涙腺攻撃オプション。

その中で本作を観ていて惹かれたのは、
長寿のヒロインを横目に変遷していく時代の描写。

不老不死伝説及びドラゴン伝説を、中世っぽい王国の権威を維持するために悪用する始点、
鉄砲と火薬の時代へと進歩していき、文明が神話を駆逐する実力を獲得していく流れの中で、
伝説を王国共々危険視、排除に向かわせる終点。
一連の流れが、強力な作画兵団の表現力などと相まって、なかなかスペクタクルで興味深かったです。

これらの時代描写はあくまでメインテーマである
母子愛を強調するための引き立て役なわけですが……。
個人的には、この大河ドラマっぽい展開をもっと詳しく知りたいと言いましょうか、
主題の添え物にしとくには勿体ないと思ってみたり……。

岡田麿里監督並びに本作スタッフ一同には、
是非一度、一つの時代や帝国の栄枯盛衰などを描いた、
一大大河ファンタジー巨編を制作してみて欲しいなと私は願っています。{/netabare}

投稿 : 2018/02/26
閲覧 : 645
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58

デルタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

映画でこんなに泣いたのは久しぶり

最初は思っていた方向性と違い、驚きましたがすぐに世界観に入ることができ、あっという間に2時間経ってしまいました。伏線の回収の仕方が綺麗でが素晴らしいです。物語終盤は泣かせにきてるなーと思いつつ号泣してました。あんなに連続で感動シーン出されると耐えきれませんでした。クサいところはしっかりクサいので嫌いな人もいるかも知れませんが、自分は結構すきでした。是非多くの人に見てほしい作品です。

投稿 : 2018/02/26
閲覧 : 252
サンキュー:

12

ネタバレ

M.out さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

止まらない岡田麿里

「あの花」も「ここさけ」も合わなかった私だが本作は楽しめた。岡田麿里の脚本は、話運びとかキャラの心情的な部分ではなく、感性としてが合わないところがある。本作にもそれはあった。
 岡田麿里は人間の美しい部分と醜い部分の両方を描き、それ故「気持ち悪い」脚本家だと思っている。とんでもなく感覚が研ぎ澄まされていて、表現技法がすごく、故になんだかドロドロして気持ち悪い。しかし、とてもよい。(今までの私が合わなかったのは、そういう良い気持ち悪さではなく、気持ち悪い気持ち悪さがあったからなのだが)
 
 ファンタジーを離れて久しいからなのだが、ファンタジーの持つワクワク感のようなものを久々に味わった。作りこまれた設定と、その美術の美しさは文句の付け所がない。
 話自体は割とありがちな話であり、端的に表現するなら「人の生き死に、出会いとさよならが最終的に悲しみしか残さないのなら、ひとりぼっちでいい」みたいな話である。冒頭でこれらしきことを長老が言って、その後に子ども拾った時点で、ポスターの感じとかから結末を予想することは簡単なのだけど、それまでの過程に目を見張るものがある。

{netabare}
 長い命の種族、マキアは赤子のエリアルを拾って子育てを始める。しかし、いつの間にかエリアルだけが年をとっていく。エリアルの成長に伴って、マキアとエリアルの関係は変化していく。
 その関係に宿っている愛は悲劇をもたらすかもしれない。今後来るであろう別れに、マキアは悲しみを感じるかもしれない。
 それでも母という姿勢を貫く。命が巡る世の流れの中にある「愛する」という人の営みの美しさが、滲み出てくる。すばらしい。すばらしい。

 最後の回想入れたりするくだりが涙をせき止めかけたけれど、タンポポの綿毛が命の移ろいを表現しながら祝福するように飛び立っていくのを見たら、もうダメだった。
{/netabare}

投稿 : 2018/02/26
閲覧 : 245
サンキュー:

20

*TAKUMI* さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

言葉では表せない作品

凪あすスタッフが再集結した作品というのもあり、期待していた作品でしたが、想像を遥かに超えた作品でした。
ここまで泣いた作品は本当に初めてでした。
作画、音楽、声優さんの演技の全てがドンピシャにハマった作品だと思いました。
見る人の立場でまた違った感情が生まれると思います。
これ以上は私では到底言葉で表せない作品です。是非ハンカチを持って劇場へと足を運んで見てください。

投稿 : 2018/02/24
閲覧 : 165
サンキュー:

14

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観たい

岡田麿里監督作品

2018年2月24日(土)全国ロードショー
出会いと別れが紡ぐ、永遠の一瞬 。
監督脚本はあの花、ここさけの岡田麿里さん。
あの花は大の苦手。ここさけは普通だが、冷や汗が出ます。

岡田さんの自伝を見ると自分と経歴が酷似しているので
そりゃトラウマ呼び起こすなーとしみじみ感じました。
自分はアニメに没入しません。脚本や監督、
アニメーターの目線を常に感じて見ています。
キャラクターのセリフは全て脚本家のセリフ。
アニメの事件やハプニングは全て作らているという前提です。
歴史的事実も解釈でセリフはもちろん空想です。

これ邦画ドラマだとなかなかこうならないので、邦画を観ないんですが。

岡田さんの主張はかなりわかりますが、
その先に何が言いたいのかとても気になります。
この映画は公開初日か2日目に観にいく予定です。

投稿 : 2017/10/14
閲覧 : 176

AQUARIA さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

投稿 : 2025/01/02
閲覧 : 0

【流】 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/12/07
閲覧 : 1

ととたたと さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観たい

投稿 : 2024/11/20
閲覧 : 1

クマキチ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/10/30
閲覧 : 1

sarutatsu さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/10/12
閲覧 : 0

ばく さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/10/11
閲覧 : 1

te_schmid さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/10/08
閲覧 : 1

のは さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/30
閲覧 : 0

うゆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/26
閲覧 : 0

☆たーさん☆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/10
閲覧 : 0

あめ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/09/02
閲覧 : 1

電光 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.2
物語 : 2.5 作画 : 3.5 声優 : 1.0 音楽 : 3.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/08/25
閲覧 : 1

dskiwt さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/08/22
閲覧 : 1

アニメガタリ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

投稿 : 2024/07/29
閲覧 : 2

しるまりる さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

投稿 : 2024/07/18
閲覧 : 2
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さよならの朝に約束の花をかざろうのストーリー・あらすじ

一人ぼっちが 一人ぼっちと出会った

出会いと別れが紡ぐ永遠の一瞬

少女はその時 愛にふれた

『あの花』『ここさけ』の岡田麿里、初監督作品。(アニメ映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のwikipedia・公式サイト等参照)

ティザー映像・PVも公開中!

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2018年2月24日
制作会社
ピーエーワークス
主題歌
rionos『ウィアートル』

声優・キャラクター

石見舞菜香、入野自由、茅野愛衣、梶裕貴、沢城みゆき、細谷佳正、佐藤利奈、日笠陽子、久野美咲、杉田智和、平田広明

スタッフ

キャラクター原案:吉田明彦、監督:岡田麿里、副監督:篠原俊哉、キャラクターデザイン&総作画監督:石井百合子、メインアニメーター:井上俊之、コア・ディレクター:平松禎史、美術監督:東地和生、美術設定&コンセプトデザイン:岡田有章、音楽:川井憲次、音響監督:若林和弘

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