ワドルディ隊員 さんの感想・評価
3.1
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
機械仕掛けの赤ちゃん
この作品は、「赤ちゃんはコウノトリさんが運んでくる」
逸話を元にしたアニメ映画である。後になって分かったのだが、
どうやらディズニー・ピクサー製作の作品を手掛けたスタッフが
監督として参加しているようだ。とある方からの推薦がなければ、
見る事はなかっただろう。この場をお借りしてお礼申し上げます。
おおまかなあらすじとしては、こんな感じ。
コウノトリ達は、赤ちゃんを人間たちに届ける仕事をずっと前から
続けていたのだが、ある事件をきっかけに、宅急便を届ける
ビジネスへ切り替えるようになった。
主人公ジュニアは、宅配会社の中でも出世欲が特に強いコウノトリだ。
社長から、昇進を告げられ喜ぶが、その際会社に居続けている
人間チューリップを解雇する役を押し付けられる。
彼は、解雇をためらった挙句、チューリップに嘘をつき閉鎖した工場で
働くよう命ずる。そこへ赤ちゃん申込書の手紙が届き、
赤ちゃんを作る機械が作動してしまう。このことを知った
ジュニアは、社長に知られたら昇進できなくなると判断、
2人で赤ちゃんを両親の元へ届けにいくのだが…。
全体を通した感想としては、赤ちゃんが可愛いのだぞということを
終始アピールしているような印象を受けた。赤ちゃんが可愛いこと
に関して、反論の余地はないが余りにも押しつけがましい上に、
脚本が微妙なことも相まってそこまでのめり込むことはなかった。
まずは良かったところから。
ディズニー・ピクサー製作の作品を手掛けたスタッフが参加している
故に作画は高水準。特に、可愛いキャラクターを描くのが上手く
見とれてしまいそうになる程だ。
個人的には狼の集団が好きなキャラクターだ。連携力が異様なまで
に高く組体操を駆使し、終始主人公たちを追い詰めていく様には
流石に笑わざるを得なかった。
これには恐れ入った。この能力を付けようと提案したスタッフ
には尊敬の意を表する。
ここからは気になった所を。
キャラクター設定に相当なブレが生じている。
トーディという鳩は、誰に対しても「ブラー(お前、仲間という意味)」
というのが、これがとてもうっとうしい。ぶっちゃけうざい。
いい加減黙れよと憤りを感じた視聴者がいても不思議ではない。
中盤から登場する狼の群れだが、当初は人間の赤ちゃんを
食おうとしていたのに、赤ちゃんの声を聞いた瞬間、赤ちゃんの
可愛さの虜になるのは落胆した。
(アンパンマンで例えるとさわやか状態である)
今思い返してもなぜ虜になったのかよく分からない。
そして、弟が欲しいネイトの両親が、思い切り不動産ビジネスに
取りつかれていたのに、いきなり「愉快な父さん母さん」に
キャラクターを変えるのも不自然だ。
恐らく、この両親の精神状態はかなり不安定なのだろう。ビジネスを
するよりも先にすべきことがあるのでは?とは思ったが、
スタッフはそこまで頭が回っていなかった可能性が高い。
もしやこれもコメディとして取り入れたのだろうか?それなら納得だ。
ギャグシーンが多いのは構わないのだが、かなり滑っている場面が
多く所々気持ちが冷めていった。早く終わらないかなーと心の中
で呟いていたような気がする。
この作品における一番の大きな問題点は、ストーリー構成の
稚拙さにある。前述したように、赤ちゃんの可愛さを前面に
押し出したバーゲンセールにしか見えないのだ。
赤ちゃんのために、他のキャラクターが操り人形として扱われている
ようにも見受けられる。
もう少し、脚本を練り直そうと提案したスタッフはいなかったのか
かなり気になる所だ。他のキャラクターへの愛着はなかったのだろうか。
え?赤ちゃんが可愛いんだから、そんなことはどうでもいいんだよって?
左様でございますか。
今までの流れを踏まえても、これがやりたかっただけだろと感じる
作品に終わってしまったので特に推奨するつもりはない。
赤ちゃんが可愛く動いているアニメを常に欲している方ならば
見る価値はあると思う。