蒼い✨️ さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
珍しいタイプの主人公。
アニメーション制作:WHITE FOX
2016年4月4日 - 9月19日に放映された全25話のTVアニメ。
原作は、長月達平によるライトノベルです。
小説投稿サイト「小説家になろう」のweb小説が出自のようです。
【概要/あらすじ】
高校三年生の菜月昴(ナツキ・スバル)は、ひきこもりである。
不登校で部屋に閉じこもって一日中、インターネットとゲームをしている。
ある日の夜。コンビニ帰りにスバルの風景が一瞬で変化した。
陽に満ちた異国の石畳の城下町。目を凝らしてみると往来は馬車が行き交い、
人間らしき種族の他にも亜人や獣人が大量に溢れかえって賑わっている。そこは王都だった。
スバルは理解した。ここは、ファンタジーな異世界であると。
異世界で一人で生きていく方法なんて知らないし職業技能も無い。
元剣道少年の名残で筋トレをしているので、本格的に鍛錬してない素人相手なら倒せる程度。
ラノベやネトゲに影響された“ゆとり脳”のスバルでも、
知らない土地に一人で放り出されたヤバさは理解できているようだ。
(web版と比べてアニメ版ではプロローグでのスバルの中二病的妄想発言が増加。)
スバルは、異世界で自分に初めて優しくしてくれた、銀髪の美少女エミリアに恋心を抱いてしまう。
スバルはエミリアの困りごとに付き合って行動をともにするが彼女を襲う黒い意志に巻き込まれて、
スバルとエミリアは惨殺されてしまう。
その刹那、スバルは商店街にて見覚えのある商人に、前に聞いたのと一言一句変わらない文句を吐かれていた。
殺された記憶は鮮明なのに生きている。傷口も無い。空は明るく、憶えている昼間と全く同じ出来事が起きてしまう。
エミリアも生きていて、しかも自分とは出会っていない。など、不可解なことが起こり続けた結果、
状況を理解したスバルは自分の能力「死に戻り」に気づいてしまう。
となれば、これから起きるはずの惨劇を先回りして予防出来るのでは?とスバルは思い立った。
スバルはエミリアを守ることを決意して動き出す。
そして、その後も異世界で出会ったレムなど大切な人々を救うことをも心の支えにして、
様々な敵や苦難を相手に「死に戻り」を重ねるという、死の痛みに満ちた日々が繰り返されるのだった。
【感想】
原作を読まずに視聴開始。
かいつまんで言えば、「死に戻り」という特質を持った主人公が、
物語の中で凄惨なバッドエンドを迎えて命を落とすたびに、
時間を遡って、(やり直し開始地点は自動更新であり自分では制御不能)
ここをこうすれば良かったんじゃないか?と状況整理をして、
何度も何度も同じ時間をやり直して歴史の修正を試行錯誤しつつ、
もがき苦しみながらもチャプターごとのハッピーエンドを目指すという構成。
間違った選択肢 = 即ゲームオーバーというのはチュンソフトのサウンドノベルを懐かしく思ったりしています。
率直に言いますと、主人公のナツキ・スバルは序盤の印象が悪すぎます。
「第一章 王都の一日編」では、周りを助けようと必死に頑張る好人物にも思えたのですが、
「第二章 屋敷の一週間編」では、ギャルゲーの主人公気分で異常過ぎる馴れ馴れしさ。
ヒキコモリ設定のくせに『たん付け』など、女の子に一方的にあだ名を付けて、
淀み無くふざけた態度を次から次までとれるって、
そんな図太い人間は、ひきこもらねーよwと思ってしました。この時は。
このアニメは、主人公のナツキ・スバルが不快感を煽るキャラですので、
ギブアップする人もいるようですね。
実は、私は屋敷での1周目のスバルの姿を正視するのがきつすぎて1度は断念しかけたのですね。
そんなときに手にしたのがコミック版。スバルがやってることは同じなのに、平気でした。
小説や漫画という媒体では気にならなかったのに、
アニメで動きと声がついた途端に、いらいらを感じてしまうのは、
スバル役の小林裕介のウザ演技が余程、堂に入っていたせいかもしれません。
実は話をすすめるうちに、このスバルがどういう人間であるか、
だんだんと分かってくるようになるのですね。
スバルの痛々しい言葉と態度の裏側。ふざけた態度を取り続けている理由。
実はスバルという人間は自分が嫌いで嫌いでしょうがないのです。
人に認められる、好かれることによって初めて自分に価値が生まれると信じているのです。
『かまって欲しい』『相手に好きになって欲しい』『頼むから、自分を見てくれ』
スバルの異常なまでの馴れ馴れしさは、
こうすれば気に入られるだろうという、他のやり方を知らないスバルの思い込みによるものであり、
他者への執着心の裏返しであり、屋敷の住人と打ち解けるための彼なりの努力のつもりなのです。
アニメ化してない先の部分の話になるのですが、
元いた日本では孤立した人間関係が原因で不登校になり無気力な毎日を送っていた彼には、
過去のしがらみがない異世界生活はゼロから始められる契機だったのかもしれません。
その結果が押し付けがましい明るさとして非常に目障りに感じられたりで、
うざい男であるのは本当のことですが、目に見えているものだけがスバルの全てではないのです。
スバルの行動原理。スバルが本当に欲しいものは何なのか?
スバルは異世界に投げ出されてしまった状態で、
しがみつける相手が欲しい、あわよくば幸福を手に入れたいと思っているガキであり、
そのためには、必死で頑張れる。
しかし、スバルに接する周りの人間もバカでは無かったのです。
スバルの下心が見透かされて、スバルの言動に対する違和感・不信感が、
容赦なく彼に突きつけられることも少なくありません。
沢山の失敗と絶望を繰り返して、なりふり構わない姿が観る者の目に醜く映りながらも、
いっぱい弱音を吐いて自分の間違いに気づいて人との相互信頼関係の構築の仕方を学習するなど、
少しずつ少しずつ人間として成長して、初めてスバルという人間が真に周りの人間に受け入れられていく。
(スバルのありのままな愚かさを受け入れて、その上で背中を押してくれた人物もいましたが)
注意深く見守っていけば、この作品の本質が掴めてくるのです。
(その本質というのがクセモノでして、成長しているつもりが本当は○○だったなんてことが後で発覚したりで、
スバルが向っている先が本当にハッピーエンドへの道なのかは微妙なのですが)
要するに『Re:ゼロから始める異世界生活』とは、
スバルが自分の弱さを認めて向き合って人間性を再構築していく、
そして他者と寄り合って生きていく物語でもあるのです。
それを観て、どう感じるかは人それぞれですけどね!
最終回まで観終わりましたが、人間の弱さと成長に挑んだ見応えのある作品に出会えたな!
と、なろう系も存外侮れないと思いました。
世界観やヒロインや精霊など書いてないことだらけですが、
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。
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