2023年度のミステリーTVアニメ動画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画の2023年度のミステリー成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月09日の時点で一番の2023年度のミステリーTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

70.6 1 2023年度のミステリーアニメランキング1位
虚構推理 Season2(TVアニメ動画)

2023年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (189)
675人が棚に入れました
“怪異”と呼ばれるものたちは、この世に確かに、当たり前に存在している。 “怪異”たちの“知恵の神”である少女・岩永琴子のもとには、今日も“怪異”にまつわる悩みごとが持ち込まれていた。そんな琴子の隣に立つのは、一目惚れした相手であり、“怪異”にさえ恐れられる男・桜川九郎。 これは、普通ではない2人が力を合わせ、“怪異”たちの引き起こす理外的でミステリアスな事件に【虚構】で立ち向かっていく物語。 2人が挑む奇想天外な新事件の行方と、その恋の進展は――!? [恋愛×伝奇×ミステリ]再び!!

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

Season 2 こそ本番(むしろ第1期は観なくても良い、まである?)「推理」とあるけどミステリーじゃないですね。

私からは、2023年冬クールではかなりお勧めしたい本作です。

1期目では1クール12話中の10話を「鋼人七瀬」編とでも呼ぶべき1エピソードに使ってしまい、視聴者を飽きさせてしまう感じもあった『虚構推理』の2期目が本作ですが、ストーリーを楽しむ前提となる世界観やキャラクター設定などは、うまく1話目(#13)で振り返ってくれているので、この2期目からの視聴でもさほど違和感なく観ることはできると思います。

今回は2話目からのいわゆる「雪女」編(#14~#16)の面白さと、エピソード中の雪女の可愛さが一部の界隈で評判になったので、とりあえずここだけ観てみるというのもアリだと思います。

主人公は人の身でありながら妖怪や幽霊などの怪異たちの間では「知恵の神」として扱われ、「おひいさま」と呼ばれて親しまれも恐れられもしている岩永琴子(いわなが ことこ)。

そして桜川一族に悲劇をもたらした祖母の手により、外見こそ人の身を保ちながらも未来に干渉する妖怪「件(くだん)」の能力と不老不死の化け物になってしまった桜川九郎(さくらがわ くろう)。

1期目冒頭では二人の出会いが描かれますが、ストーリーを楽しむ上ではこの出会いのエピソードはそれほど重要ではないので「2期目からの視聴でも楽しめる」ということですね。

本作の琴子のポジションは特殊で、「事件の解決」には寄与しますが「解決」は必ずしも「事件の真相を暴くこと」ではありません。「人間社会が怪異を実在の物と認知してしまうと社会の秩序が壊される」という立場の下に、琴子は様々な虚構を構築します。

本当は怪異の仕業であっても人間社会に不都合が起きない嘘の説明をでっち上げたり、時には怪異たちをも騙して真相を闇に葬ったり…。

そんな琴子の虚構と奇行に振り回される九郎先輩や依頼者、事件の犯人そして視聴者たち…(笑)!

投稿 : 2024/06/08
♥ : 28

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

珠玉の短編集・・・かも。

いやー、また琴子に会えるとは。
私、琴子のはっきりとした物言いが好きなのです。
何かといえば下ネタに走るのに、頭が良い。
琴子の奇想天外な明晰さに大満足です。

2期は2,3話がひとくくりなっていて、飽きが来ません。
それに、そんなにグロくなかったような気がします。
このアニメに洗脳されたのかもしれませんが、評価アップです。

私は、雪女の話がお気に入りです。
ちょっとラブコメっぽかったし、声も悠木さんだし。
まあ、単純に雪女が美人だったということもあったかな。
そういえば、美人声の悠木さんって珍しい。
こんな声も出せるんだって感心しました。

ちょっとお下品な妖推理ものという唯一無二のこのアニメ。
もっと観てたいのが正直なところ。
次、琴子に会えるのはいつだろう。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 16

よこちゃん さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

2期の方が断然面白い

続編でこけるアニメもある中、珍しく2期の方がさらに面白くなりましたね。1期のレビューで私は数話で1エピソードにした方が良いのと、キャラが動かない点を指摘したのですが、まるで私の注文を聞いてくれたかのように改善されました。数話で1エピソードになり、やはりセリフメインの推理なので短編が合うのだと思います。飽きずに観やすくなり話もどれも面白い。推理部分が短くなりキャラも動くようになり、しかも1期ではたくさんいる可愛らしい妖怪みたいなのがほぼモブだったのが、2期ではよく絡んで来るので楽しくなったと思います。

桜川九郎が能力を使う部分が大幅に減りましたが、見た目が単調なんで逆に良かったかなと。その分出番も減り九郎の影が1期より薄くなりますが、ヒロインの岩永琴子の癖が強いからちょうど良いと思います。琴子は妖怪みたいなもの達から崇められ、頭もよく推理もキレてますが、九郎の事になると気づいてないのか下ネタも言い、普段からわがままであり、20歳と思えない残念感が増していくのでウケます。見た目もちんちくりんなのに偉そうなあかりん声なのが味わい深いですね(^。^)

OP曲はカノエラナの「ヨトギバナシ」雰囲気あって良いです。
ED曲は同じく宮野真守ですが1期のようなエモさが無くイマイチですかね。

虚構推理じゃなくて普通の推理やんみたいなのもあったように思いますが、まぁほぼ虚構推理ですね(^^;
良くなってるんで1期がそんなにだった人にも観て欲しいですし、断念した人にもお勧めしますよ。虚構推理自体がダメだった人は無理ですが…
個人的に3期もやって欲しいアニメです。

2023年6月16日

投稿 : 2024/06/08
♥ : 16

77.9 2 2023年度のミステリーアニメランキング2位
薬屋のひとりごと(TVアニメ動画)

2023年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (365)
1254人が棚に入れました
大陸の中央に位置するとある大国。その国の帝の妃たちが住む後宮に一人の娘がいた。 名前は、猫猫(マオマオ)。 花街で薬師をやっていたが、現在は後宮で下働き中である。 ある日、帝の御子たちが皆短命であることを知る。 今現在いる二人の御子もともに病で次第に弱っている話を聞いた猫猫は、興味本位でその原因を調べ始める。呪いなどあるわけないと言わんばかりに。 美形の宦官・壬氏(ジンシ)は、猫猫を帝の寵妃の毒見役にする。 人間には興味がないが、毒と薬の執着は異常、そんな花街育ちの薬師が巻き込まれる噂や事件。 きれいな薔薇にはとげがある、女の園は毒だらけ、噂と陰謀事欠かず。 壬氏からどんどん面倒事を押し付けられながらも、仕事をこなしていく猫猫。 稀代の毒好き娘が今日も後宮内を駆け回る。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

毒にも薬にもなる表裏一体性が心地よい中華風宮廷ミステリー

原作小説、コミック2作とも未読。

【物語 4.5点】
架空の中華風な後宮等を舞台に1話~複数話完結の事件を、
毒と薬の知識が豊富で毒味に目が無いw主人公・猫猫(マオマオ)が、
やたら絡んで来るイケメン宦官・壬氏(ジンシ)の依頼に顔をしかめつつもw
謎解きしていく。

各々無関係に思えた事件が、やがて一つの大きな企てに結びつき、
親と子という全体テーマが浮上して来る。


振り返れば、大事なことは、結構、口で説明せず映像で表現する
飲み込み辛い作品でもあったはずです。
勿論、事件の謎解き等は解説しますが、猫猫や壬氏の生い立ちなど、
特に人間ドラマの肝心な部分については、心情はアニメーションで伝えるから、
後は察して下さいといった感じで割とハイレベル。

ですが例えば序盤から子を想う妃の愛など事件の背景に隠し味として仕込んだ要素が、
終盤の猫猫の親子関係という核心への道標となり、
ストレス少なめで難事件の真相と人物の深層へと誘導される。

それを行き当たりばったりではなく、全体構成から緻密に計算してやっている。
視聴後、この地味な凄さに舌を巻き、さらに加点したくなってしまう上質な構成・脚本だったと思います。


毒にもなる薬、生と死、陰と陽。
表裏一体な性質を掘り下げる中華思想がふんだんに活用されていたのも、
中華風ファンタジーとしてやった意義を感じられ良好。

ラスト(※核心的ネタバレ){netabare} 羅漢は、長年、人の顔が駒にしか見えず不幸を撒き散らして来たが、
最後の最後に“鳳仙花”のような想い人の美顔を誤認して幸福をつかむ。{/netabare}
不幸と幸福もまた表裏一体。余韻を感じる素敵な幕引きでした。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・TOHO animation STUDIO×OLM

コメディーからシリアス、猫顔までカバーした猫猫(マオマオ)の多彩な顔芸などを花開かせた人物作画。
夕焼けだけで10色のパターンを使い分けて心情表現をアシストしたという背景美術。
作画・背景もまた、視聴者の無意識領域に真相へナビゲートする標識を植え付けるだけのパワーを有する。

特に後半、壬氏とすれ違い様にサブリミナル気味に垣間見せた猫猫の鬼の形相。
前半、警告するように広がった真っ赤な夕暮れ。
ここから先は入るな危険と、口で説明する以上に効果的な警告サインに鳥肌が立ちました。


各話の中で作画が強烈だったのが第4話・もああん氏の作画監督回。
いつもとキャラデザが変わった?との違和感が、
冒頭、毒味の所作描写の細かさで払拭され、これは凄い!と背筋を伸ばされ、
そのまま最後まで魅了されまくった忘れ難い回。

正座のまま追い出されてバウンドする猫猫のコミカル描写バンクwによるリズミカルな演出から、
間違った知識で主を危機に陥れた“馬鹿に折檻する”猫猫の闇深な強面まで、
4話は私が猫猫のキャラクターに一気に引き込まれた回でもありました。

キャラデザの一貫性や安定感が評価されがちな昨今のアニメーション作品では、
あまりお目にかかれない個性的な作監のお仕事。
今後、もああん氏が絡んで来たアニメでは、私も鑑賞ギアを一段上げて挑みたいと思います。


【キャラ 4.0点】
“薬屋”猫猫(マオマオ)と美形宦官・壬氏(ジンシ)
共に周りから過度に担がれたり、警戒されたりしないよう猫やら美男子属性やらを被っている凸凹コンビ同士。
どんな女官をも虜にする壬氏のイケメンパワーが、猫猫には悪寒をもたらすだけで、まるで通じないw
でも毒草には猫化して涎を垂らす猫猫w

単に探偵&助手コンビのテンプレートというだけでなく、
人によって薬になったり毒になったりを、お約束のコミカル描写でも好表現するお二人の掛け合いは見ていて楽しかったです。

花街の出で、しばしば矛盾に満ちた社会の影を覗かせる猫猫に、
想いを巡らせる壬氏。完全に恋する美男子なのではw
国家の縮図としての宮中を体現する二人の一面もスパイスとして効いていました。


そんな強烈な個性二人の間で堅実に役割をこなす高順(ガオシュン)や、
筋肉担当?で花街に入れ込み、宮中と花街を橋渡した武官の李白が、
妃たちの駆け引きも渦巻く中で、ある意味、私にとっての癒し?となった男たちでした。


【声優 5.0点】
全体構成から逆算してテーマへと誘導する監督スタッフ方針により、
単純に事件の状況を表現するだけでなく、
後々明かすことになるテーマも織り込んだ多重的な演技を要求するなど、
繊細なディレクションに対応できる修正能力を有した声優を選りすぐったキャスト陣。

特に主演・猫猫(マオマオ)役の悠木 碧さんは、
毒に狂喜するコミカル演技から、「これは、毒です」のシリアス演技まで、
濁声を駆使して作品を制圧していました。

モノローグのオン、オフの切り替え。今のセリフは説明なのか会話なのか。
この演じ分けが当たり前にできるのもまた地味に凄いこと。(※1)
これができないと、例えば量産型2時間サスペンスにて、クライマックス、崖の上で激情と事件解説をゴチャ混ぜにしてぶつけるが如き茶番劇で、興が冷めてしまうわけで。

説明都合丸出しの演技で視聴者に違和感を覚えさせることもなく、
気持ち良く真相へと惹き付けた声優陣。
プロ中のプロの仕事に経緯を表して、私は声優5.0の満点評価を付けさせて頂きます。


【音楽 4.5点】
『<物語>シリーズ』など多彩なジャンルを横断したミニマル・ミュージックで会話劇を演出する神前 暁(こうさき さとる)氏。

『メイドインアビス』などオーケストラによるスケール感溢れるファンタジー音楽を提供する豪州人・ケビン・ペンキン氏。

『呪術廻戦』1期などでも魅せた和楽器対応で東洋成分アレンジに重宝する桶狭間 ありさ氏。

三者三様の劇伴担当による化学反応への期待が私の本作視聴の決め手に。
中でもノッていたのが神前氏。
次回予告でも使用された「薬屋」などの宮廷BGMだけでなく、
挿入歌も多数提供し、掛け合いが織り成す人間ドラマを盛り上げる。



OP主題歌は前期が緑黄色社会「花になって」、後期がUru「アンビバレント」
ED主題歌は前期がアイナ・ジ・エンド「アイコトバ」、後期がWacci「愛は薬」
いずれも事物の表裏一体性や多面性を追求した作品世界に触発された良曲。

前期OP「花になって」は最初は中華風に随分攻めたアレンジするなwと私は苦笑していましたが、
物語の理解が進むに連れて、奥深い歌詞世界が病み付きに。
1クール目放送で流れていた時より、使われなくなった2クール目、放送終了後と、後になるに連れ、私はドハマリしていきました。

「花になって」はOPアニメーションも出色の出来。
猫猫ってこんなに美女だっけ?との違和感も、
{netabare} むしろソバカス顔の方が花街で搾取される美人顔を隠すための化粧{/netabare}
として伏線回収され唸らされ。
華麗な猫猫の舞の方も、ラスト{netabare} 身請けされた妓女の餞に舞として再び披露され{/netabare}
曲もOPアニメもスッカリお気に入りとなりました。


【余談】
YouTubeにて、日本在住中国人による李姉妹chというのがありまして。
アニメ専門とかではない異文化・言語学発信系のチャンネルなのですが、
TVアニメ版『パリピ孔明』の中国での反響などのネタも貴重なのでしばしば覗いています。

『薬屋のひとりごと』の中国での評判についても、
猫猫(マオマオ)の発音は中国語にはない発音なので、あくまで中華風と割り切って見ているとか興味深い話が発信されています。

因みに華流ドラマ界でも宮廷物は定番で、放送中は『薬屋』が実写ドラマ化されたら、
壬氏役はどのイケメン華流俳優が演じるか勝手に予想して盛り上がっているのだとかw

もし調子に乗って実写化とか企んでいる方々がいるとしたら、
取り敢えず、猫猫に悪寒を走らせるwイケメン俳優起用は実写化の絶対条件だと釘を刺しときますw


【参考文献】(※1)animate Times「アニメ『薬屋のひとりごと』は無意識を刺激する計算された一作/長沼範裕監督インタビュー」

投稿 : 2024/06/08
♥ : 29
ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ザツになって

拙は好きに仕事を選べるほどエラくも才能があるわけでもありません。
ほんとたいしたニンゲンじゃないので、
やれと言われたらたいていのことはやるタイプなのですが、それでも
  『宦官』だけはカンベンして欲しい
と心より思うわけです。いやほんと、それだけはやめて、お願い。

後宮華やかなりしときは何万人もいて、
チョン切るのに麻酔すらしなかったというのは有名なハナシ。
それなのに自宮者と呼ばれる『志願してなった』若者も多かったそうですね。
なんと申し上げますか、
書きながらついつい内またになってしまうジブンがおりますです。


さて、本作は日向夏さんの『なろう発』ライトノベルが原作で、
人さらいによって後宮に下女として売られてしまった薬屋の女の子の、
推理ありいのサスペンスありいのといったエンタメ作品です。
(いつものごとく、原作未読)

後宮、といっても、中国が舞台ということではありませぬ。
中国に似た感じがする架空の国のおハナシ。
原作者の日向夏さんが
 「考証であれこれ言われるのがイヤ」
だったから、そういう設定になっているんだそうであります。

で、実際にそこまで考証がおかしいのか、
最近知り合った福建省出身の青年(日本在住)に、
いろいろと尋ねてみました。

 〇 猫猫(まおまお=『猫ちゃん』の意)という名前について
   → ジブンの常識の範囲ではありえないっス。
     ただ、中国は人口が多くていろんな部族・風習があるので、
     ワンチャンあるかも知れないっスね。
     それよりも、
     正一品4夫人の名前の方がありえないっス。

 〇 町並みや文化、服装について
   → 三つぐらいの時代がごちゃまぜになってるっスね。
     建物や室内は中国と日本のちゃんぽんっス。
     いちいち突っこんだら負け、みたいな感じじゃないっスか。

 〇 食文化について
   → マツタケはほとんど市場にないし、
     値段はけっこう高いんスけど、誰もアリガタがらないっスね。
     土瓶蒸しってのは聞いたことないっス。
     あのへんの時代の人がチョコ食ってたとか、
     菓子作りにバター使ってたってのは、笑っちゃうレベルっス。

 〇 中国人として、見ててイラっとしない?
   → いやいや、中国制作のドラマでも、
     考証がめんどくさくて適当な国でっちあげるの、あるんスよ。
     ましてやアニメだしエンタメだし、
     それでも気になる人は気になるんでしょうけど、
     ジブンは大丈夫っス。面白かったらいいんじゃないっスか。


みたいな感じでした。大人っス。

ちなみにwikiによると、
リアル宦官というのは声がほとんど女性、あるいは不自然な裏声みたいだったそうで、
そのへんも、リアリティは追及していないですね。

あと、作品にぜんっぜん関係ないチョイネタなんですが、
宦官になってもリビドーは残るらしく、
大量のヘンなものがちょくちょく押収されていたそうであります。
(だから切っちゃダメなんだってば)



というわけで、あくまでも本作はファンタジー。
舞台が中国風というだけで、
考証という意味ではザツの精緻を極めており、
中国の歴史とか文化とかを伝えるみたいな学術的価値はありもさん。
(そこに突っ込んだらアビス行きかと)

じゃあつまんないんですかと問われると、
面白いんだ、これがまた。
僕個人の主観まるだしランキングでは、
今期の新作アニメでは『フリ-レン』に次ぐ堂々第二位ですね。
(ちなみに三位は『アンダーニンジャ』です、ごめんなさい)

  同じファンタジーでも『パリピ孔明』みたいに原典をまったく理解せず、
  これが三顧の礼ダ-とか言って、
  他国の文化を間違って伝える・ウソを伝えるのはよくないと思うんですわたし。

  だけど『一騎当千』みたく、名前だけ借りて遊ぶのは拙的に全然アリ。

  ましてやこの作品は中国の『雰囲気』を借りてるだけですしね。
  異国情緒たっぷりをウリにしている日本の街で、
  ここんところが異国と違う、なんてアラ探しをするのは詮無きことかと。

  もちろん文化・芸術作品なら『いやでもね』なんですが、
  面白さを追求したエンタメ娯楽作品なんだから、
  そこんところはスルーするのが大人のたしなみかなあと愚考する次第です。


で、この作品のおもろしさはそういう『世界観』ではなく、
猫猫役の悠木碧さんを筆頭にしたお芝居と、
脚本・映像・演出の『バランス』にあると拙は思っております。

そもそも『世界観』なんてのはムカシの中国風というだけで、
OPで猫猫がダサいドレス着て踊ってたりして、
綿密に作り上げられた感というのはぜんぜん、まるっきりありませぬ。
ぶっちゃけ、
でたとこショウブでやってたらこうなりました、みたいな感じかと。

で、物語の舞台というか骨組みは、

  かどわかされ後宮の下女として売り飛ばされた花街の薬屋の女の子が、
  薬に関する知識を買われ『毒見役』に昇進し、
  身の回りで次々と起こるナゾや事件を解き明かしていく。

という、面白くも駄作にもなりそうなものであります。

これで『なろう系』だと聞くとイヤな予感する方いるかもですが、
猫猫は転生ものみたいな『チ-ト知識の保有者』ではないんですよね。
あくまでもその時代の薬屋さん。
ちょっとビョ-テキに薬の実験が好きだったりしますが、
その時代レベルでの毒・薬に関する知識が豊富な女の子にすぎません。

ですから、転生ものみたく、
  この薬はこういう化学反応で人体のココにこう作用してあ~だこ~だ、
みたいなウンチクは出てきません。
現代科学・化学・医学のセカイじゃないんです。
  これ、毒ですからこういう症状がでます。こうしたら治ります。
という、『なぜ』をぶっちぎった結果と対処療法のセカイ。
『おばあちゃんの知恵袋』のおくすり版、みたいな感じなんですよね。

  というわけで、言うことがずるくも鼻につくこともありませんし、
  なによりもわかりやすい。
  そいでもってムダなウンチクがない分、ドラマに尺が割けるんです。よき。


で、そのドラマ部分も、ほとんど1~2話完結。わかりやすくてよき。

中華風後宮ものと言えば
  権力・出世欲・愛憎ごちゃまぜのドロドロ系
のイメージですし、実際、その要素がけっこう含まれてたりいたします。
ただ、見ていて『しんどさ』を感じないんですよね。
猫猫のキャラクターが、そういうのを気持ちよく中和しているんです。

  そもそも猫猫って、かどわかされて後宮に売り飛ばされた身の上なのに、
  ぶつぶつモノローグでグチを言うだけ、
  復讐に心を燃やしたり我が身をアイゴ-と嘆いたりしないんです。

  ここ、花街の薬屋、という設定が利いてるんですよね。

  虚栄と色欲と権力とカネに彩られ、
  一歩裏をあるけば犯罪者や落伍者が闊歩する不条理のセカイ。
  そこで薬屋を営むとは、そういう連中とうまく付き合うということ。
  アルプスの少女みたくふわふわなんかしてられず、
  強く、たくましく、そしてしたたかでなければ生きていけませぬ。

  だもんで猫猫も、
  後宮に売り飛ばされた事態を冷静にうけとめ、
  粛々と仕事をこなし、年季が明けるのをじっと待っております。

  かと言って心が死んで感情をなくしているというわけではありません。
    他の下女を恫喝してみたり、
    コミカルな言動で道化回しに徹してみたり、
    乞われて名探偵役をしてみたり。
  ほんと、いい意味で『実践的にかしこい』女の子なんですよね。

  あと、これはまったくの主観なんですが、
  ぜんぜん媚びることのないボソボソした言動が、
  一周回ってすごくかわいいです。

そして、さすがファンタジー世界だけあって、刑罰がやさしいです。
これがリアル古代中国なら
{netabare}
  毒とわかっているおしろいを隠し持って、
  帝の子まで産んだ上級妃に使い続けていたなんて、ふつうにクビちょんぱ。
  (たぶん、一族みんなそうなります)
  兵士が毒で倒れたら、理由なんか調べず村人みんなクビちょんぱ。
  下女が皇帝の妃にいじわるなんかしたら、やっぱりみんなクビちょんぱ。
{/netabare}
そういうリフジンさがないぶん、
現代にもつうじるニンゲン模様的なドラマが成立してるんですよね。
ふつうのヒューマンサスペンスみたく、楽しく見れちゃうんです。

  それでもシリアス展開が続くときは続きます。
  そういうときはSD映像なんか使ってかわいらしくガス抜き。
  たまにある下ネタも、けっこう攻めててよきです。



拙の個人的なおすすめ度は、Aランク。ほとんどSに近いです。
 ・中国マニアで歴史考証絶対主義
 ・バトル・ロボ・アクションこそアニメの神髄
 ・アニメは美少女がキャンキャン声でなんぼ、きゃぴきゃぴしてなんぼ
という方々にはおすすめいたしかねますが、
(アクションなんか『ない』のもいっしょですし)
その他の方々は、楽しい時間が過ごせるのではと愚考いたします。

なろう系にありがちな
 『推理と呼べない推理みたいなもの』
 『局面によって人格がころころ変わるご都合テンカイ』
 『因果関係がはたんしているプロットつなぎ』
といった『作家のひとりよがり性』は、まったく見受けられません。

コミカルな演出でしっかり尺をつなぎながら、
人間ドラマやサスペンス要素がしっかりと描かれております。
しかも、もう終わった話かと思いきや、
次回や次々回でその断片がピタっとつながるなど綿密なプロット構成がすてき。
ストレスフリーなのにホネのあるエンタテインメントかと。


映像は、作監によるブレも少なく、高いレベルを維持しています。

キャラデや作画がちょっとジュニア寄りかなあとか、
演出がときおりムカシふうだなあとか、
そういうところをを感じなくもないんですが、
それはそれでちゃんと一つの『世界観』になってるんですよね。
ですから、あとは好き嫌いの領域かと。

  SDキャラ演出による枚数・尺稼ぎも、
  きちんとした演出として作品の楽しいアクセントになっており、
  うまいこと作ってると拙の目には映ります。

  けっこうタマシイ入った作画もちょくちょく見受けられ、
  剛柔あわせて『良作』と呼べるレベルなのではあるまいか、と。

  ただまあ、動きが少ないっちゃホントに少ないです。
  いやほんと、言いわけ聞き苦しいぞ、と思われるぐらい少ないんですが、
    止め画の連続をパンとセリフとSEでごまかす
  みたいな感じでない限り、僕、気にならないヒトなんですよね。
  口元を袖で隠す碇ゲンドウ式動画枚数節約も、演出として全然アリです。
  (背中向けてしゃべるカットも多いですね)


キャラとお芝居は、猫猫を演っている悠木碧さんが傑出しています。

この作品って、全国の萌えアニファンには大変申し訳ないのですが、
清楚カレンな美少女声でやったら、
すっごくあざとい物語になっちゃうと思うんですよね。

悠木さんって使える音域めっちゃ広い役者さんなんですが、
役柄を考えてトーンを中低音域に絞り、
リフジンな世の中をしたたかに生き抜く少女像を構築しておられます。

  ちなみに、同じ『したたかな女の子像』のお芝居であっても、
  背景にある社会性を考慮して、
  『サクラダリセット』とはまるっきり方向性を変えてるんですよね。
  あの作品で演じた相麻すみれも悠木さんの名演の一つであり、
  機会がございましたら、ぜひ、聴き比べておくんなまし。

そして本作における悠木さん、
喜怒哀楽それぞれで、お芝居のいや細かいこと細かいこと。
いわゆる「ただテンプレにあてて読んでいるだけ」という芝居が一つも、
ほんとうに一つもありません。
このへん、いわゆる『アイドル声優』さんたちにぜひ見習って欲しいかもです。

あと、けっこうスルーされているんですが、
玉葉(ぎょくよう)妃を『フリ-レン』の種﨑敦美さんが演ってるんですよね。
種﨑さん、こんな天然っぽいミセス声もだせるんだ。すごい。

  ちなみに、同じ役者さんが猫猫やってもサブキャラやっても、
  一話あたりのギャラは同じです。
  ギャラって役の軽重関係なく、ランクによって一枠なんぼなんですよね。

  それにしても
  玉葉妃ってドラマCDでは日笠陽子さんがやってた役なんですよね。
  ところが、アニメ化に際し、
    種﨑さん、収録ワク空いてるならぜひ
  ということで無情のキャラ変え(担当役者の交代)になったのかと。

  拙個人としては、正解のキャスティングだと思っています。
  玉葉妃の天然っぽさが物語をカラっとさせて、
  後宮を『大奥』みたいな生臭さから引き上げてる効果、大きいですもん。
  (申し訳ないけど、日笠さんが演ると女オンナしちゃうんですよね)


音楽は、OPが緑黄色社会さんの『花になって』。
MVはなんかちょっとアレな感じですが、楽曲自体はすっごくいいです。
EDはアイナ・ジ・エンドさんの『アイコトバ』。まあまあ。

  劇伴は、神前暁さん、ケビン・ペンキンさん、桶狭間ありささん。
  特に中国宮廷風とこだわっているわけでもなく、
  中華風の楽曲もあれば、現代風オケ、電子楽器もありもうす。
  (誰がどの曲やってるかはぜんぜんわかりませぬ)

  このへんも、考証ぶっちぎったことが良い目にでてる感じですね。
  特に不自然さ・違和感などはありませんし、
  むしろ、いろいろ変化があって楽しいかと。作品に合ってます。



いろいろ書いてまいりましたが、
まだまだ放送中の作品ですから、最終的な評価はできませぬ。
いやほんとできないんですが、
これまで(9話放送段階)のところ、とってもいい感じで回っています。
よっぽどのことがない限り、このままいくんじゃないかしら。

もうそろそろ作品のセカイ観に慣れてきたかな、と思いきや、
9話の猫猫のセリフで
 「ストイックな性格」とか「ストレスも原因になります」とか、
いやもうそれどの時代のどの国の言葉なん?
みたいな単語も飛び出し、
己の想像力の未熟さを痛感させられたりもしてますし。いや奥が深い。

考証ぶっちぎって自由奔放やりたい放題、天上天下猫猫独尊。
そのくせ人間模様やサスペンス要素はきっちりしっかり。
なんかもう、そのテイストが病みつきになりそうな、ならなさそうな。

  とにもかくにも、エンタメとしては一級品。
  見てソンをする作品ではありませんので、
  後宮テイストが苦手で未視聴の方、一度お試しになってくださいまし。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 26
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

宮中に咲く石楠花

中国っぽい宮中を舞台にして、薬の専門家である主人公・猫猫が毒の知識を頼りに宮中で発生する事件を解決していく華やかなミステリーアニメ

同じような展開が続くので飽きる人はいそうですが、最初から最後までちゃんとしたミステリーで葬送のフリーレンと並んで2クールにわたってとても楽しませてくれた作品、文句なしにオススメ!!

まず絵と雰囲気と音楽が美しいですね、マオマオが「化粧をした顔(あえてそう書きます)」とか作中のキャラと同じように見とれてしまって、すごく力が入っているのがわかります
性格の悪い人達がたくさんいて陰謀と策略が渦巻き、一回ミスしただけで死刑になりかねない宮中で、誰にも媚びないマオマオのキャラクターも清々しくて好き
そして周りのキャラクターとの知恵比べにスマートな事件解決が鮮やかで見ごたえありました
作中にも出てくる石楠花の毒、石楠花の花はとても気品があってまるで女王様みたいな美しさがあります。でも毒がある・・・まるでマオマオのよう
過酷な宮中で生き抜くためにはそんな美しさと気高さと毒を持ってないといけないのかもしれません
王氏もただのイケメンじゃなくて{netabare} マオマオとの駆け引きや協力関係が心地良かったし、彼の出自はたぶん高貴な人なのかな?って思っていたけど、そういう印象を受けるのはシナリオ的な意味があって、ちゃんとそういう風に見えるように描かれているのもキャラクターをしっかり作りこんでいて魅力的でした{/netabare}

欠点が本当に見当たらない綺麗な作品でした

投稿 : 2024/06/08
♥ : 24
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