「言の葉の庭(アニメ映画)」

総合得点
85.8
感想・評価
1995
棚に入れた
9508
ランキング
215
★★★★★ 4.1 (1995)
物語
3.9
作画
4.6
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.8

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けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

いつものこの街を“世界一美しい場所”と感じさせてくれる、こんな作品をずっと待っていた

オイラの中で『秒速』と並ぶ新海監督の代表作が誕生しました!










雨の日になると高校をサボって新宿御苑で一人ぼっち夢である靴職人になるための勉強やデザインスケッチに励む少年、タカオ
そんな彼がある朝、雨の中の庭園で出会ったビール片手にチョコレートをかじるスーツ姿の女性、ユキノ
「雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」
と、一首の短歌を意味深に読み上げてその場を去ったユキノ
六月の雨の日、こうして出会った二人は雨の日の朝にだけ会うことを繰り返していくうちに親しくなっていき、タカオは誰にも打ち明かせなかった靴職人への夢をユキノに語るようになる
しかしユキノもまた悩みを抱えているような様子にタカオは気付き、彼女のために手作りの靴を作ろうと考えるのであった・・・










新海誠監督の最新作
前作がハイファンタジーな世界観の中に“いつもの新海作品”らしいペシミズムを交えた渋い後味の作品だったのに対し、今作は『秒速』を髣髴とさせる背景美と切ない恋愛ドラマという二柱に回帰を図った、という第一印象を受けます
が、しかしながら既に批評家などの口からも飛び交っている言葉の通り【『秒速』っぽいだけで結果として全く違う作品】であると言えます


確かに今作は『秒速』と同じく現代を舞台に、ごく普通の現代人を登場人物とした現代劇であります
夢への遠い道のりに悪戦苦闘する多感な思春期の少年の、年上女性への淡い気持ちが描かれる切ないお話でもあります
でも『秒速』では様々な想いや経験を経たかつての恋仲だった二人が、再び出会うことなく、別れの言葉も交わすことなく、自然と遠ざかっていったわけですよね
それに対してこの作品は色んなモヤモヤを抱えた二人が【はじめて出会う】ところから始まっていて、最後にはちゃんとお互いに向き合って【想いをぶつけ合う】ところで終わっているんです
ですから同じような現代劇、同じような切ない恋愛ドラマでありながら『秒速』とは根本的に異なっているんですよね
クライマックスの階段の踊り場でタカオが口にする台詞、受け身がちな新海作品の主人公にはこれまで無かった力強い言葉たち・・・あのラストシークエンスこそがこの作品を最も物語っているところでしょう
『秒速』ではあんなに胸締め付けられた新海作品で、まさか胸のすくような想いを感じることになるとは・・・いやはや;恐れ入りましたw










もちろん今作でもヴィジュアル面にはただただ見とれてしまうばかりの美しさ
見慣れたはずの新宿の風景
あれを世界一美しい場所だと感じさせてくれたことには本当に感服
或いは、普段のオイラ達は薄汚れた摩天楼の中にポツリとある庭園にジメジメとした湿った空気が流れているとしか見てないんだけども、新海監督の目にはその風景全てが名画のように美しく映っているのかもしれません


そしてなんといっても“雨”です
霧雨、夕立、ゲリラ豪雨・・・作中に何度も登場しては一つとして同じ顔を見せない様々な雨模様
もはや写真なのか、フィルムなのか、作画なのか、CGなのか・・・区別は愚か現実としてある風景なのかすらわからなくなって、やがてそんな技術面などどうでもよくなるほどに惹き付けられる“美しい雨”たち
コンクリの上でネオンを反射する水溜りも、池に落ちる水滴の一つ一つすらも、今作の中では宝石のように輝きます


ちなみに新海作品の特徴でもある(というか癖であると本人も言っている)雲のカタチが全て故郷、長野の入道雲になってしまうといった部分は、今作では空の描写がキーポイントとなるだけあって極力オミットされている様に感じます


キャラクターデザインには大成建設のCM(http://www.taisei.co.jp/about_us/library/cm/tvcm/bosporus/bos_cm30b.html)などでアンサースタジオの一員として新海作品に参加していた土屋堅一氏
氏のキャラデザになったことでこれまでの低めな頭身と丸い目のタッチがお約束だった新海作品キャラ達から、アダルティーなドラマに相応しい落ち着きのある印象のキャラへ路線変更が図られています


またメインキャストには前作でも主演を務めた入野自由の起用に加え、ユキノ役に花澤香菜を配するなど今回も豪華な顔ぶれが揃い聞き応えの面でも損はしません


そして秦基博が大江千里の『Rain』をカバーしたエンディングテーマも、今作の清々しい幕切れに相応しいチョイスで微笑ましい


唯一、そう唯一これまでの新海作品のファンにとってハッキリと好みが分かれそうなのは劇伴が天門からKASHIWA Daisukeに変わったことでしょう
天門さんが新海作品の音楽から外れるのは前代未聞であり、これをどう受け止めるかは人それぞれになりそうです・・・










ちなみに新海監督、相当な足フェチらしい?です(爆)
『ほしのこえ』で膝を抱えるミカコ然り、『雲の向こう、約束の場所』で足の指にてんとう虫がとまるサユリ然り・・・
今作では靴職人のお話ってことで新海監督の趣味爆発!?ですね?わかります^q^


最後になりましたが新宿御苑はアルコール類の持ち込み、飲酒は禁止されていますのであしからず(笑)

投稿 : 2013/07/16
閲覧 : 596
サンキュー:

52

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