「少女☆歌劇 レヴュースタァライト(TVアニメ動画)」

総合得点
72.1
感想・評価
267
棚に入れた
963
ランキング
1180
★★★★☆ 3.7 (267)
物語
3.5
作画
4.0
声優
3.3
音楽
3.9
キャラ
3.7

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ネタバレ

MLK さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:----

無題

本作の魅力に関しては、他の方が大いに語ってくれるはずなので、私は一言だけ。大傑作でありながらエンターテイメント性にあふれているので是非みるべきであり、これを見ずに2010年代のアニメを語ることはできないはず。

以下に続くのは、塔に幽閉されたまま誰も助けに来ない、臭くて罪深きオタクの勝手な批評。わかる人だけわかってくれればよいのです。
アニメ放送中から言ってきた、「本作は『魔法少女まどかマギカ』に対する回答である」ということについて勝手に語っていきます。
別にななのタイムリープなんかに目をつけて言っているのではない。(もちろんその展開がまどマギを彷彿とさせる効果をしていることは否定しませんが。)


そのためにまずまどマギの構造について話すと、かの作品は完全に美少女ゲームとして設計された作品であるということを理解していただきたい。

セカイ系という言葉が流行ったことがある。昔の庵野秀明や新海誠が代表的な作家であり、話の流れとしては、ひたすら無力な主人公が、傷ついていくヒロインたちに対しどうすることもできない、といったようなマゾヒスティックな特徴が目立つジャンルだ。
その中で、美少女ゲームもまたセカイ系の流行に大きな力を果たしていた。keyやニトロプラスといったゲーム会社はオタクから熱狂的な支持を集め、作品を「人生」と語る者まで現れた。

しかし一世を風靡したセカイ系も日常系の波に押され、2010年になるころには勢力を失いかけていた。「魔法少女まどか☆マギカ」が現れるまでは。
「魔法少女まどか☆マギカ」は、はっきりとセカイ系の(美少女ゲームの)流れを汲む。最も特徴的なのは、人物配置だ。主人公の少女・鹿目まどかはこれといって特徴も欲望も無い少女だ。これは美少女ゲームにありがちな主人公の造形に類似している。また、彼女は主人公でありながら、最終盤までほとんど影響力を行使することはない。物語のほとんどを占めるのは魔法少女となってしまった少女たちの悲劇であり、その極端なスポットライトの当て方はさながらルートを回収しているかのようである。そして最終盤、まどかは奇跡の力を発揮して悲惨な運命を辿っていったすべての魔法少女を救済することで物語の環をとじる。

重要なのは、鹿目まどかというキャラクターが、視聴者の目線を代表しているということだ。

   
   
視聴者→→→→→→<物語の壁>→→→→→まどか→→→→→→<当事者の壁>→→→→→魔法少女 


ゲームにせよアニメにせよ、私たちは決まりから外れた行為をしたり、筋書きに無いものを見たりすることはできない。なぜなら、私たちは常に物語の外側にしか存在することができないし、物語とは必ずあらかじめデザインされた予定調和だからだ。当然である。
そして、その現実を逆手に取るかのように主人公を傍観者に設定して私たちの感情に寄り添わせ、最後の最後でデザインの外側に出たかのように奇跡の大逆転を起こす(あるいは起こせない)ことでキャラクターと一体になってカタルシス(悲しみ)を味わわせる。それが美少女ゲームならではの手法だった。

さて、ようやく本題のスタァライトに戻ろう。重要なのは「傍観者」このワードだけである。



本作の筋書きは、魔法少女まどか☆マギカに似ている。願いを叶えるために戦う『舞台少女』たちはエネルギーのために戦わせられ、用済みになると捨てられてしまう。その悲劇の構造を打ち破る方法はただ一つ。ルールを変えること――。

最大の違いは、少女の中に「傍観者」がいないこと。ルールを変えてしまう(脚本を変えてしまう)のは視聴者を代表する「傍観者」たるキリンではなく、あくまでも苦しみの渦中にいる「当事者」であることだ。

そのメッセージの、なんと力強いことか。超越的な立場にある「傍観者」でなくとも、諦めない限り、自らを再生産する限り、脚本は自分の手で変えることができるというのだ。


人生には無限のシナリオが存在する。どれが本物かは誰にも分からない。だからこそ、「スタァライト 新章」を選び取った華恋は尊い。

投稿 : 2018/10/01
閲覧 : 272
サンキュー:

13

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