takarock さんの感想・評価

3.4
物語 : 3.5 作画 : 2.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

この作品がなぜここまでヒットしたのか？

と、まぁこのレビュータイトルのような語り口で論ずるのはあまり意味があるとは思えません。
というのも、膨大な情報が垂れ流され、
スマホなどでその情報を漁っているという現状下において
ヒットに結びつくムーブメントというはほんの些細なことから発生するからです。
所謂口コミのパワーがかつてないほど強大であり、
噂が噂を呼び大きなうねりとなるケースが多発しているわけです。
それはある意味偶発的なものであると言えると思います。
「君の名は。」なんかもその例に当てはまるんじゃないですかね。
なので、「ここまでヒットする程か？　過大評価じゃないか？」という語り口も
あまり意味があるとは思っていません。
おそらく作り手側だって「こんな反響があるとは想像していませんでした」
と思っていると思います。
もし、「狙い通りです」なんて言われたら、私は「嘘だ！！！」と言うでしょうｗ

しかしこの作品において、やはり1番興味を引くのは
「なんでここまでヒットしたのか？」ってことだと思いますので、
その線から本作を語っていきたいと思います。

野生動物を萌え擬人化したというのを出発点とした場合、
もし、本作が冴えない男子学生が野生動物を萌え擬人化したキャラたちに何故か好かれて、
学園を舞台に繰り広げられるドタバタ学園ハーレムものだったら・・・
私は問答無用で1話で切ります。
モンスター娘なんてのも存在するのですから、
いくら野生動物の特徴を存外精微に捉えていたとしても、
野生動物の萌え擬人化なんてそこまでインパクトはないでしょｗ　
「わーい！きみはジャパリパークでよく見かけるフレンズだね！」ってことです。

では、ジャパリパークを舞台に野生動物を萌え擬人化したキャラ（フレンズ）たちが、
次々に登場してゆるふわなやり取りをする、日常系のようなアニメだったら・・・
多分3話で切ります。
とはいえ、基本的に本作はそのような作りのアニメです。
しかし、それだけじゃないんですよね。
セルリアンなる訳の分からないものが存在しますし、
どう見ても「あんた野生動物じゃなくて人でしょ？」というかばんちゃんが
極めて特殊な存在として取り扱われていたりと
「この世界には何かある。。。」と思わせ、
かばんちゃんが何の動物かを探るというロードムービー形式というのも
私が本作を最後まで視聴した大きな要因になっています。
個性の強いフレンズたちとのやり取りもなんか癖になりますし、
徐々に明らかになってくるジャパリパークやフレンズたちの謎には
正直興味を引かれましたｗ

そして、終盤はかなりシリアスな話になっていきます。
そこには日常系だと思っていた作品が実は・・・というギャップが存在し、
このギャップは反響を呼ぶという点において極めて効果的です。
そういう作品他にもありますよね？ｗ
日常系かと思いきやまさかのSF、そこには考察の余地も残されています。
とはいえ、私は詳しく考察したわけではないんですけど、
おそらくSFとしてのクオリティは2流レベルだと思います。

ここまでに本作の特徴というのをいくつか挙げていきましたが、
それらのなにか1つでも欠けていれば
誰からも見向きもされない作品になっていた可能性は高いでしょうし、
すべてが奇跡的に上手く結びついて成立しているヒット作なのかもしれません。
「奇跡的に」と表現したのは、他の作品で
私がここで挙げていった特徴をすべて具備していたとしても
それがヒットに結びつくとは思えないからです。
そういう意味で本作は極めて特殊な事例なのかもしれません。

そんな中でやはり私が本作を楽しめた最大の理由は、
「なんかよく分からないけど先が気になる」ってことですかね。
こんな作品は存在しませんが、
「魔法科教師の憂鬱」とか「異世界に飛ばされた俺がゴブリンと結婚するわけがない」とか
はっきり言って、私はもうタイトルだけでお腹いっぱいなんです。
後者くらいぶっ飛んでいれば若干興味を引かれますがｗ
22世紀の猫型ロボットというお題があったとして、
みんながみんな猫耳の美少女キャラを造形するというような
ありきたりが当たり前となっている現在、
本作の「なんかよく分からないけど」という既存の作品にカテゴライズできない新しさは、
素直に評価したいです。

今や注目作といえば劇場アニメという風潮ですけど、
話題となる深夜アニメの登場は非常に喜ばしいことだと思います。
作りも話も2流？　いいじゃないですか。
このレンジの広さこそ深夜アニメの最大の魅力なのですから。