「迷家-マヨイガ-(TVアニメ動画)」

総合得点
62.7
感想・評価
919
棚に入れた
3516
ランキング
4648
★★★☆☆ 3.0 (919)
物語
2.7
作画
3.2
声優
3.1
音楽
3.1
キャラ
2.8

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ネタバレ

kids さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

読めないシナリオと強いメッセージ性で印象に残る作品

アニメオリジナルの作品です。覚えきれない程の登場人物に、独特の世界観、先の読めないシナリオと雑然とした印象でしたが、なんだかんだ毎週楽しみに視聴した作品でした。


★ストーリーについて
第一回人生やり直しツアーに参加した多くの男女が納鳴村(ななきむら)と呼ばれる不思議な村にたどり着き、様々な出来事に直面するというシナリオです。群像劇としての要素とミステリーとしての要素を併せ持ち、シナリオの完成度はともかく、様々な要素を取り入れようという意思が感じられるものでした。ただ、先程も書きましたが、特に前半は内容が雑然とした印象になり、結果序盤で視聴をやめた人も多かったのではないかと勝手に邪推していたりします。
あともう1つ気になる点は意図したミスリードなのか、話の中心である{netabare}「各個人の持つトラウマ(ナナキ)」{/netabare}に対して焦点がなかなか当たらず、最初は次々に人が消えていく原因を探る純粋なミステリーものなのかと勘違いをしてしまいました。こういった構成にどういった意図があったのか気になるところです。


★登場人物について
今回は描きたいものがかなりネガティブな印象のものだったこともあり、あまり好感を持てる登場人物はいませんでした。それぞれの登場人物はある程度強いキャラクター性を有しているのですが、基本的に物語をかき回すための設定で視聴していてイラッとくるときも多かったですし、また物語の中心となる人物は限られてくるわけで・・・どうしても消化不良の感が否めません。群像劇として、大衆が恐怖に扇動されるようすなどを描きたかったのかなと思いますが、もう一工夫ほしいと思いました。全員にちゃんと名前が与えられているにも関わらず、掘り下げ具合がバラバラなのも気になります。
とはいえ、評価できる点もあります。それは登場人物の名前がほとんどハンドルネームであり、素性などが明確でない分、匿名性が高いものであったということです。これはネット社会をイメージしていたのではないかなと個人的には思いました。他の人達の素性がわからないがゆえに、簡単に疑心暗鬼に陥り、結果集団行動がうまくできないというのは、現実をとてもうまく表現していると感じました。


★主題の考察
おそらくこの作品は、簡単に人生を諦めるような、活力のない若者に対して、「それでいいのか?」というメッセージを伝えたいのかなと思いました。具体的には
1、不幸に甘えるな
自分は不幸だと自分を攻めるほうが、つらい状況の時は実は楽なものです。また、「自分は誰よりも不幸だ」と思って殻に閉じこもると、立ち向かう気力を失ってしまいますし、意外と下には下がいるものです。「辛いけれど負けてたまるか」と思える人がそこから這い上がることができるのでしょう。
2,簡単に逃げるな
時には逃げることも大切です。ですが、逃げることがクセになると、いざというときに、人生の重要な局面で何もできない軟弱者になってしまいます。たとえ砕けることになるとしても、立ち向かう勇気は割と必要です。
3,ダメな自分から目を逸らすな
今作で言えば、{netabare}ナナキ{/netabare}から目を逸らすな、ということになりますね。自分のダメな部分はなかったことにしたいものですが、それも自分の一部と受け入れられなければ、向き合わなければ、その問題点を克服することもうまくカバーすることもできないということでしょう。

さて、ここからが本題ですが、これを伝えたいのなら、今回の作品は完全に失敗だと言わざる負えないでしょう。なぜなら、本当にこの主題を伝えられるべき人たちに、このメッセージは届かないからです。ひたすらに人間の醜い面を見せ、強引に向き合わせる構成に、人生を諦めかけた人がついていけるのか疑問に感じました。そういう意味ではこの作品は「最近の若いもんは・・・と愚痴る大人達のエゴ」がそのまま形になったと考えざるを得ません。物語の根幹に関して批判的にならねばならないのは非常に残念です。

もし、こういった主題を伝えたいのなら、もっと工夫するべきだったでしょう。例えば、「もののけ姫」の作風がいいお手本として挙げられます。
もののけ姫は5つの非常に重い主題を持つにもかかわらず、大ヒットしました。もちろん理由はいくつもあるのでしょうが、今回はその主題の一つである「若者たちの心の空洞」に絞って書こうと思います。
宮﨑駿監督は、もののけ姫制作当時の若者に関して、以下の様な趣旨の発言をしたとされています。

『現代の若者達は、意識の奥でみんなババを引いてしまったと感じている。自分は悪くないのに、何故か傷付けられていると感じている。マイナスの磁場のようなものを抱えている。その「心の空洞」に向かって「明るく元気に生きよう」「貧しさから抜け出して豊かになろう」と言っても通じない。こうした絶望、閉塞感を大きな歴史認識の中で捉え、考え直すことで「不条理な運命の中で生きる」ことを模索し、提示していく』

この引用は浦谷年良という方の要約ではありますが、結局のところ、視聴者、ひいては若者達についてうまく考察し、どうすればその心に響くのかを考えられているということです。こういった思考がちゃんとできていたことが、もののけ姫のヒットにつながったのだと思っています。このように、視聴者のことをちゃんと分析した上で、視聴者の心に響く構成を考える必要があったと思います。


★音楽について
OPの印象が非常に強いです。本当にいい曲でした。独特ですが、作風にもマッチしていて、素晴らしかったです。


★最後に
リアルタイムで視聴していた時は、毎回非常に巧い「引き」につられて続きが気になっていましたが、見終わったときに満足感はあまりありませんでした。もう少し考えて話を考えて欲しかったです。お勧めできなくはない、悪くはない作品ですが、名作とはいえないかなと個人的には思いました。興味のある方は一度視聴してみてください。

投稿 : 2016/06/27
閲覧 : 175
サンキュー:

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