「惡の華(TVアニメ動画)」

総合得点
65.0
感想・評価
1147
棚に入れた
4511
ランキング
3544
★★★★☆ 3.2 (1147)
物語
3.4
作画
3.0
声優
3.3
音楽
3.4
キャラ
3.2

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タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

続きが観たいけど…

2013年、衝撃の話題作&問題作となった作品。

感想を書くにあたって、久々に観返してみた。

全編ロトスコープの手法を用いて作られた初のアニメであるが、

このサイトおよび、ネット上の評価など色々見てみると、見事に賛否両論なのが面白い。

まぁ原作ファンのことを考えると、裏切られたと感情的になってしまうのも無理はないと同情できるが..

これまでのアニメの既成概念を無視したうえで、一つの映像作品としてこの作品を考えてみると、

正当に評価されるべきものであると自分は思っている。

ただ、自分が評価する点も、嫌いな人、理解できない人にとっては、全てが反対の意見になるだろう、

というのは非常に興味深く、このような作品はなかなか無いのではないか、とも思える。


ロトスコープに批判的で、実写でやれば良いという意見が多く見受けられるが、

もしこのアニメが「萌え」を売りにしたようなものであるならば、

自分も全く同意見を持つだろうが、この作品の世界観には非常に合っていると思う。
(原作ファンには気の毒だけど)

そして実写とアニメ、両方の手法を用いることが効果的な場面が随所に見て取れる。

決して実験でも奇をてらって用いたものでもないのは明らかだと思う。

何故監督がこのような手法を採用したのか?意図を考えなければならない。

ロトスコープだからこそ、従来のアニメーションの、無駄を省いた動きでは表現できない、

本来の人間の動きを描け、それによって観る者に非常に生々しさ、

不快感を与える効果を生み出せるのだから。

「気持ち悪い」「こんなものはアニメではない」これは監督の思う壺である。

これだけどんよりとした生々しさを、映像として表現したアニメが、

今までにあっただろうか?


ロトスコープにばかり目が行きがちだが、

職人による昔ながらの「手書き」で制作されている背景描写は、

劇場版映画かと思うほどのクオリティで、非常に美しく風合いがあって素晴らしい。

これもロトスコープに合わせてリアリズムを追求した結果だろう。

そして、悪く言えば使い回しなのだろうが、これらの風景を繰り返し見せる演出も非常に印象に残る。
(余談だが舞台となった群馬県桐生市では背景美術展も開催されていたらしい。)


そして、演出面で非常に印象的なのが作中のBGM。

サスペンス、ホラーで使われるような手法は、

緊迫感、不安感、圧迫感など、なんとも言えない重々しい空気を醸し出し、

また時には幻想的でもあり、間の取り方、背景の見せ方と合わさって最高の演出となっている。

特に印象的なのは8話の冒頭、人物が歩いている場面では、

OP含めるとセリフ無しで9分以上も幻想的な音楽が続くのは、正直常識破り、圧巻だ。

この場面が如何に重要かつシンボリックな場面かという事が伝わってくる。

本編からのEDの入り方も毎回絶妙だが、...インパクトの塊だ。

しばらく頭から離れなかった、よくあんな曲作ったなと思わずに居られない、

もう笑うしかない、気持ち悪い、そして最高すぎる。。

しかも、この曲はこの作品の為に作られたものではないらしい..それもある意味凄い。


内容に触れるのが後になったが、

この物語は閉塞感、虚無感、劣等感、孤独感など、

思春期に抱くさまざまな感情を生々しくリアルに、かつ退廃的にも描いている。

中学高校、部活や恋愛で充実した日々を送っていたような人間には、

なかなか共感できないかもしれないが...自分には仲村さんの心情に共感できる部分は多かった。


キャラクターに関して、

とにかくインパクトの有る仲村さんの狂気がヤバい、怖すぎる。。

中盤まで何を考えてるのか、どういう気持ちなのかは、なかなか読み取れないが、

7話の教室でのやり取り、春日が仲村さんの家に行った辺りから察することが出来る。


佐伯さんは普通の感覚を持ち合わせているかと思っていたが、

実は劣等感を抱いていた、と言うのは意外だった。

佐伯さんの心情をうかがい知るには、今後の展開がカギになってくるのだろう。

それにしても、あれだけやらかした春日に大して、大して動じてない様子を観る限り、

もしかしたら一番変態なのは佐伯さんだったりするのかもしれない..


春日はある意味中二病なのだろう。

自身が他者と違う、特別な存在だと思い込んでいたが、

実は全くの空っぽで変態以下のクソムシ野郎(自分が見下していた只の一般人)であり、

佐伯さんに相応しくない人間であるということを理解し、打ちひしがれる。

大して魅力的なキャラではないが、一番生々しくリアルでもある。

声優(俳優)に新人を起用したのも、演技は上手くはないが、逆に作った感じがしなくて非常にリアル。

今後のヒロイン二人とどのように関わっていくのか、非常に気になる。


最終話まで観て、ここからがこの物語の真価が問われる核心部分だろうと思うのだが...

第一部だけで終わらせるには、あまりにも惜しい。

終わり方を見る限り、第二部をある程度作ってるように思えるのだが、

円盤がサッパリ売れなかったようで、続きを観ることは難しいかも知れない。

本当に残念だ。。

こんな中途半端に終わるならアニメ化しない方が良かった、とも思えるし、

最終話の終わり方も続きがないなら、結果的にダメだと思う。


本作は既成概念を打ち破る手法で、

固定観念で凝り固まったアニメオタクだけでなく、原作ファンまでも、ある意味排除した。

本当に勇気の要ることであり、「芸術性の追求」という観点では賞賛に値するが、

ある意味売上げに反映されなかったのは、当然と言えるだろう。

たとえ業界人や玄人アニメファンに評価されようとも、

実際に金を落とす層にアピールしなければ、どんなに優れたものでも「商売としては」失敗である。

ここに現在のアニメ業界が抱える最大のジレンマがあるのではないだろうか。


監督は「蟲師」や「デトロイト・メタル・シティ」などを担当した長濱博史さんが担当されている。

どうりでこれほど拘った作品ができるわけだ。。
(なお、監督の拘りは円盤の副音声で、細かく解説を聴くことが出来るらしい)

自分はこの監督の作品をもっと観たいのだが、売れないと製作会社的にもコストが掛かり、

起用しにくいのかもしれない。

投稿 : 2016/01/27
閲覧 : 403
サンキュー:

6

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