「響け! ユーフォニアム(TVアニメ動画)」

総合得点
91.1
感想・評価
3122
棚に入れた
13854
ランキング
39
★★★★★ 4.2 (3122)
物語
4.1
作画
4.4
声優
4.1
音楽
4.3
キャラ
4.1

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ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

そして、次の曲が待ちきれないのです。

2015年春より放送。
全13話。


【前置き】

京都アニメーション制作の高校生の音楽モノということで、放送前より話題性のある作品でした。
ただ、恐らく私だけではないと思うのですが、以前と比べ「京アニ」という言葉に吸引力が無くなってきており、あまり視聴意欲が湧かなかったのが本音でした。
(私的には、「境界の彼方」辺りからかな…。好きな方はスミマセン。)

…いやはや……。
その印象からのスタートで、こうも大きく覆してくれるとは…。



【あらすじ】

北宇治高校に進学した主人公『黄前 久美子(おうまえ くみこ)』。

彼女は中学時代、京都府吹奏楽コンクールで、冷めた自分とは裏腹に本気で全国大会を目指していた『高坂 麗奈(こうさか れいな)』に対し不用意な発言をしてしまい、彼女との関係をこじらせてしまっていました。


クラスメイトの『加藤 葉月(かとう はづき)』『川島 緑輝(かわしま さふぁいあ)』から吹奏楽部に誘われた久美子は、その部の演奏技術や麗奈と偶然再会した件が手伝い、入部を躊躇ってしまいます。

しかし、未経験ながらも早速マウスピースを購入し練習に励む葉月や、天真爛漫で前向きなサファイアに後押しされ、入部を決意したのでした…。



【帰ってきた京都アニメーション】
{netabare}↑
「ウルトラマンかよ!」って思ったそこの貴方、同世代ですね。
…さて…、しょーもない話は置いておいて…。

実は見始めた序盤の頃は、以前にも増して凄まじい作画以外あまりテンションが上がらず、(好みの娘もいないし…。)また評判を聞いてから続きを見るか決めようと、録画を積み続けていました。
(「甘ブリ」はこの状態で、良い評判を聞かずそのまま断念しました。)
しかし本作は中盤辺りから、やはり断念したという多くの声の中から、チラホラと胸を張って「良作だ!」という声を耳にして、これはもしやと改めて一気に再視聴したのです…。

そして、最終的には「続きはあるけど一気に見るのが勿体無いよ!」とまで思うようになっていたんですよね。
なんだこの「女心と秋の空」精神はっ!
(ちなみに、好みの娘もいないし…って思っていた時の自分も、「後でオマエ屋上来いや」状態になっていましたとさ。※後述)



ある程度のアニメファンなら、まず本作を同じ制作会社の「けいおん!」と比べてしまうでしょう。
監督でないとはいえ、山田尚子さんの名前もありますしね。
ですが本作は、舞台こそ同じですが全く方向性の違う、かなりストレートな部活青春モノです。
それも、
「良い汗流して爽やかになる気持ちを一緒に味わおう!」
というよりも……、吹奏楽部を通し、その人間模様や演奏の出来を競い合う様を、丁寧且つ生々しく描いた内容だったのです。
「けいおん!」には決してなかった恋愛要素も盛り込まれておりましたしね。
加えて、吹奏楽部の活動や演奏する楽器についても、強調されない程度に分かりやすく説明されており、吹奏楽について全く知らないという私みたいな無知蒙昧という言葉が服を着て歩いているような人間でも、置いてけぼりにならずしっかり楽しめる構成になっておりました。

ただ、前述の通りそこの面白さに気付く中盤以降まで、視聴意欲が保つかどうかが難しいところ。
「けいおん!」の圧倒的知名度が、足を引っ張ったという見方も出来るかもしれませんね。



まず、本作を語るにあたり外せないのが、その圧倒的な作画ですね。
(京アニの作画技術は最早周知だと思いますが、あえて語らせて下さい。)
本作を見た後に他の放送中作品を見ると、作品によっては一世代前かのように感じてしまうことも…。
なんて酷なことが出来る制作会社だ…(笑)

人物描写もさることながら、京アニの十八番である実際の京都(宇治市)を舞台にした背景は、今作からは最早実写と錯覚してしまいそうな場面も…。
映画「言の葉の庭」を見た時の衝撃を思い出しましたね。
カメラをグイーンと稼働させるように画面全体を動かして舞台を描くことも、通常は並々ならぬ労力が必要でクールアニメでは中々見られないのですが、それも京アニは平然とやってのけます。
勿論、後にも息切れなんて全く感じさせない。
仕草や表情も一つ一つ細かく描き変えられているので、ご飯を食べながら見るとついつい見逃してしまうなカットもあり、私はよく巻き戻すハメになってましたよ。
改めて、作画に関して京アニは、作品の評価と関わらずトップクラスだと思いましたね。
背景に関しては、実際の宇治市と比較されたファンサイト等もありますので、眺めてみると中々面白いですよ。

加えて本作は、実際に存在する管楽器類の描写もまた凄まじい。
広告絵の時から感じましたが、実際の映像でも金色に輝くユーフォニアム達がどれも丁寧に描かれており、光沢具合の再現度も意識され常にピカピカ。
一年眠っていたにしては、ちょっと綺麗過ぎない?とも思いましたけど…、元吹奏楽部の子に聞くと手入れしたら本当に金ピカになるんだとか。
他作品には決して無い、絵を映えさせる本作の重要なファクターを担っていましたね。

唯一難点を挙げるとすれば、女の子は相変わらず可愛らしいので、そういう意味では背景や楽器と若干合わないように感じるシーンがあったことかな。
同調するよう色合いを意識されていたのか、そこまで大きな違和感は無かったですけど。
{/netabare}



【生々しさが光る、黄前久美子とその部員達】
{netabare}
さて、本作の主人公『黄前 久美子』ちゃん。
作中に留まらず視聴者にまで、ちょこちょこ「性格悪い」と表現されたりしてた女の子です。
しかしコレは、女子高生の女の子をただただ普通に描いた結果な気がしましたね。
そういう意味で私は、彼女の性格が悪いとは全く思いませんでした。
(実際、現実的に考えると「平沢 唯」の方がよっぽど異端ですもんね…、好きですけどね…ウンタン。)
友達付き合いでの本音と建前の使い分けであったり…。
本当に仲の良い男友達には素を見せて、冷たくあしらってもいいという一種の甘えを見せたり…。
あと、「上から目線」って言葉を頻繁に使うあたりも、とてもリアリティがありましたね。


周囲のキャラクターとその人間模様にしても、これまた非常に生々しい。
部をイマイチ統率出来ない部長。
同性の先輩へ心酔し過ぎる人。
部内恋愛で失恋を経験する人。
どこまでも唯我独尊を貫く人。
後輩にレギュラーを奪われた人。
そして、特別を求め邁進する人…。
勿論アニメとして分かりやすく表現されている故に過剰な部分もありますが、視聴者それぞれ、どことなく共感するキャラクターに出会えたのではないでしょうか。

部活経験のある方なら、それこそあるあるなシーンも結構あったのでは?
(……私は沢山ありました。)
後半の山場であるトランペットのソロを懸けた戦いは、その結果を含め何度見返しても胸が痛くなりましたよ。

『嘘をつけない…、良い音は良いと言わざるをえない。』

見方によっては残酷にも捉えられますが、それが全ての…このとてもシンプルな戦いが出来たことは、あの2人にとって良かったのでしょうね。
と、言ってはみたものの………。
やはり3年生(しかも超可愛くて優しい先輩)が最後のソロパートを演奏出来ず、本番で吹いている1年生をただ眺めているのは見るに絶えませんでした。

そして、その戦いを「心の底からどうでもいい、そんな下らないこと」と吐き捨てた『田中 あすか』先輩。
(本音かどうかはさておいて…。)
先程の手前ヘンに聞こえるかもしれませんが、実は私はこのあすか先輩の台詞にもちょっと共感しちゃったんですよね…。
私の他にも、あの台詞にドキッとした人はいるんじゃないかな?

麗奈にしても、多分あすか先輩の立場なら同じことを言ったような気がします。
それは、この2人がどこまでも自分に厳しく、良い意味でも悪い意味でも好きなことにしか興味が無い人間だったからでしょう。

そういう人は、魅力的に映って持て囃されることもあれば、嫉妬から必要以上に反感を買ったりもして、周りといるのが億劫になり結果的に孤高の存在となっていくんじゃないでしょうか。
今でこそあすか先輩は部内で確固たる地位を築いていますが、麗奈がそうであったように、あすか先輩が1年生の頃は一体どうだったのでしょうね…。
彼女のあの立ち振舞を見る度に、そんなことを考えてしまいました。


……と、生々しい故に出る暗い部分を先に述べましたが…。
このように生々しいキャラクター達だからこそ、魅力的なシーンが必要以上に映える部分もありました。

私が心に残ったのは、黄前ちゃんと同じユーフォニアム担当の先輩『中川 夏紀(なかがわ なつき)』が、オーディションを経て自分を差し置いてレギュラーを勝ち取った黄前ちゃんを、練習後に呼び出すシーンでした。
黄前ちゃんが極限の気まずさを感じる中、彼女はとても優しい笑顔で

『黄前ちゃんは実力でちゃんと勝ち取ったんだよ、私はそれで納得してる。

 良かったって思ってるくらい。だからヘンな気使わないでよ。』

って言ってくれるんですね。
そして、彼女の楽譜に激励のメッセージを添え、「ありがとねっ!」って清々しい言葉と笑顔を向けてくれました。

去年は部内でのいざこざもあり、流されやすい彼女は練習をロクにしておりませんでした。
しかし今年は、今度は良い意味で流されヤル気を見せ、必死に練習に励みました。
それでも先生は、彼女のこれまで全ての成果を見抜いて、今回の結果を出したんですね…。
それを彼女は感情的にならず、しっかり受け止める器を持っていたのでした。

黄前ちゃんはここで泣いてしまい、先輩から若干引かれてしまいますが…、私もコレを見て涙腺が若干崩壊してしまいました…。
部によっては1年生は、ヘタすれば先輩の態度一つで環境が一変したりもしますもんね。
そんな状況で、この夏紀先輩の言葉に、彼女はどれだけ救われたことでしょうね…。

先輩から貰った、その『絶対金賞!!来年一緒に吹くぞ!!』というメッセージ。
アニメではまだ描かれておりませんが、きっと…いや絶対に叶って欲しい未来ですね。
{/netabare}



【何故なら私達は、全国を目指しているのですから。】
{netabare}
さて、本作において作品の根幹を成すキャラクターと言えば、この『滝 昇(たき のぼる)』先生に尽きるでしょう。
とても柔らかな物腰と裏腹な、あの徹底した部活指導っぷりはとても魅力的でした。
実際、「粘着イケメン悪魔」という名誉な愛称まで部内で付けられる程でしたからね。
声を担当された「櫻井孝宏さん」は、ホントこういうミステリアスだったり天才肌的なキャラクターが似合いますね。


冒頭、新しく赴任してきた先生と部員との初顔合わせで、先生は部員達に温和な口調ながらハッキリとこう聞きました。
全国を目指すか否か…と……。
先生は、指導の方向性が変わってくるので生徒の自主性を重んじてこう問うと、優しく言いました。
実際にここで「全国を目指さない」と部員達が言えば、本当にそういう指導をしていたでしょう。
ただ先生はきっと、部員達にそう言わせにくいよう巧みに会話を持っていっていたんじゃないかと私は思いますね。
以降の言動や、あの性格を踏まえても…。


全国を目指すと決めてからの先生の指導は、丁寧な口調はそのままに部員達の気持ちを逆撫でする場面も多く、決して皆から好かれるようなモノではありませんでした。
まぁそりゃ実際、

「皆さんが普段若さにかまけてドブに捨てている時間をかき集めれば、この程度の練習量は余裕でしょう。」

「もっとも、皆さんの中に…1年生より下手だけど大会には出たいと上級生がいるなら…別ですが?」

とか言ってりゃ仕方ないかもしれませんけどね。

「合奏とは何か?」と改めて問う場面でも、部員達の中には馬鹿にされていると捉えた者もいたことでしょう。
ただ、しっかり成果を出した部員達には

「皆さん………今、合奏をしていましたよ!」

と、しっかり褒めてくれます。
これは、上手にアメとムチを使い分けているというより、ただ初志貫徹に正直な意見を述べていただけだった気がしますね。
気遣いなぞ無く「良いモノは良い、駄目なモノは駄目」と…。


この先生は、練習後のサンフェスの際も「今年の北宇治は一味違うと思わせるのです。」と温和な口調ながら大きく出ます。
そして、たじろぐ部長の前で

『出来ないと思いますか? 私は出来ると思っていますよ。

 何故なら…、私達は全国を目指しているのですから。』

と、どこまでも本気な姿勢を見せました。
この台詞のシーンは音楽の挿入も抜群にハマっていて、私は不覚にも先生にトキメいてしまいました。
先生は、あの笑顔と広げた両手の先に、どんな全国を見据えていたのでしょうね…。

この先生の本気の姿勢に当てられ、徐々に士気が上がっていった部員達。
第3話と第12話の練習の取り組み具合を改めて見比べると、もう笑っちゃうぐらい違いましたね。


最終話のエンディングで流れた、OPでおなじみの「DREAM SOLISTER (Wind Orchestra Ver.)」。
その演奏シーンの最後に映し出された写真で先生は、男子生徒に肩を組まれ屈託ない笑顔を見せていました。
あの笑顔は、作中で一度も見せたことのなかった、嬉しくてたまらずに出た、本気の笑顔でしたね。

あぁもぅ……、タキシード姿だけでも超格好良いのに…、その上あんな表情を見せるなんて…。
全く…、新たな扉を開いたらどう責任取るつもりだこの先生は……。。。
{/netabare}



【総評】

「京アニは、前までは好きだったけど…。」
「あまり興味が湧かない…。」
「…で、けいおん!と較べてどっちが面白い?」
という気持ちの人にこそ、是非13話きっちり視聴してほしいですね。
もう愛想が尽きたよって人も、もしかしたら「京アニ」を見つめ直せるかもしれませんよ?

本作は、その製作会社の知名度に決して恥じない出来になっていると、私は自信を持って言えました。
最終話の演奏シーンなんて、ホント息をするのも忘れるぐらい見入ってしまい、終わってからハッとしたぐらいです。
コレ、誇張じゃないですよ。
(勿論、私の独断と偏見と性癖を持ってしてであり、向き不向きはありますが。)

リアリティーのあるキャラクター達やシナリオに、どことなく共感するも良し。
本気で部活動に専念する気持ちに、熱く心動かされるも良し。
勿論、可愛い女の子や、イケメンで粘着で意地悪で正直な格好良い先生に萌えるも良し。

作画は、それこそ言わずもがな。
どこかの煽り文句を借りるなら「大丈夫!京都アニメーションの作画だよ!」といったところですね(笑)

ただ、直接的でないですが単純に見ると若干百合描写に見えるシーンがところどころ唐突にあり、ココは個人的にマイナス。
好きな人には「ご馳走様でした!」かもしれませんが、作風にはちょっと合わなかったんじゃないかなぁ。


期待すれば恥をかく…。
叶いもしない夢を見るのは馬鹿げてる。

だけど、願いは口にしないと叶わない。


黄前久美子とその部員達が、本気を見せる本作。
しっかりと、存分に、受け止めさせてもらいました。

…そして…、次の曲はいつ始まるのかな?

ではでは、読んでいただきありがとうございました。


◆一番好きなキャラクター◆
『滝 昇』声 - 櫻井孝宏さん


◇一番可愛いキャラクター◇
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


※ここより、一部薄汚い言葉があるので〆ることにしました※
{netabare}
◆一番、EDの笑顔にトキめいたキャラクター◆
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◇一番、気品が溢れ出ていると思ったキャラクター◇
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◆一番、トランペットが上手いと思ったキャラクター◆
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◇一番、LikeじゃなくてLoveなキャラクター◇
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◆一番、あがた祭りに行くと見せかけて山登りを一緒にしたいと思ったキャラクター◆
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◇一番、私の背徳感を逆撫でしたキャラクター◇
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◆一番「変態」って吐き捨てられて先を歩いて行ってほしいキャラクター◆
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◇一番、ワンピースが捲れ上がったシーンが頭から離れないキャラクター◇
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◆一番、マウスピースに価値があると思ったキャラクター◆
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん


◇一番、「痛いの…、嫌いじゃないんだよね?」と言って反応を見たいキャラクター◇
『高坂 麗奈』声 - 安済知佳さん
{/netabare}

投稿 : 2015/08/07
閲覧 : 551
サンキュー:

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