「咲-Saki-(TVアニメ動画)」

総合得点
87.6
感想・評価
3256
棚に入れた
15631
ランキング
143
★★★★☆ 3.9 (3256)
物語
3.9
作画
3.8
声優
3.9
音楽
3.7
キャラ
4.1

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ostrich さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

実は王道的な作品 / 舞台(長野県)について

■概論

萌え文化がついに麻雀にも及んだのか、
と半笑いで観始めたのですが、
意外にも少年マンガの王道的な作品でした。

様々な特殊能力を持った人々がバトルを通じて語り合い、
そこに友情が芽生えるという展開。
それに加えて、特訓まであるのだから、まさに「努力・友情・勝利」。
キャラクターを全員男子にして、
少年ジャンプあたりで連載すれば腐女子がキャーキャー言いそう。

と、同時に麻雀マンガとしても王道的な作りです。
現実の対局では(ほぼ)ありえない出来事や能力が登場し、
そこには登場人物たちが背負う人生の陰影が否応なく反映されます。
アニメ化された作品で言えば
「哭きの竜」「哲也」「アカギ」とも共通する構図で、
「哲也」のモデルであり、麻雀ものの祖である
阿佐田哲也作品から脈々と受け継がれた伝統にも根ざしています。
(ちなみに、次回予告は麻雀マンガネタが満載です。
 萌えキャラが桜井章一の格言をしゃべるとか!)

また、「麻雀マンガ」の「マンガ」という部分に焦点を当てれば、
「サルでも書けるマンガ教室」で語られていた

「麻雀マンガは読者が麻雀を理解していなくても成立する」

という法則にも当てはまっています。
要はケレン味やキャラクターが描けていれば、
競技のルールやロジックがわからずとも(≒正確に描いていなくても)
マンガとしては成立するということ。
逆に、素人だった読者がマンガを契機にその競技のプレイヤーになる、
という現象が起きることは、マンガとして成功した証とも言えます。
そういう意味でも本作は非常に成功した作品でしょう。
私の同僚の腐女子も本作をきっかけに麻雀を始めたそうな。

■デジタル/オカルト

とは言え、本作は麻雀をかなりきちんと描いてもいます。
競技のルールやロジックはもちろん、
「デジタル vs オカルト」の構図など、
それなりの麻雀ファンなら誰でも知っているけれど、
そうでなければなんのことやら、といった要素も、
物語の重要な対立軸として登場します。

ありえない能力を描くためには、
その対比としての「ありえること」を描く必要があるわけで、
この部分の描写が作品を下支えしています。

ちなみに、清澄高校の部員をデジタル/オカルトに分類すると、

[デジタル]
原村和
(羽根が生えたりはしますが、常に理論的)
染谷まこ
(パターンマッチングはそれなりに打ち込んだプレイヤーなら無意識にやっている)
片岡優希
(単に攻め好き、攻め巧者なだけでオカルトではないかも)

[オカルト]
宮永咲

[両方の属性]
竹井久
(基本、デジタル、一部、オカルト)

麻雀用語で言うところの「デジタル/オカルト」は
麻雀に対する考え方の違いなのですが、
本作ではそういう描写もありつつ、次第にマンガ的な飛躍が起こり
「常人/異能者(魔性のもの)」の対立になっていきます。
こういう形で「デジタル/オカルト」を描写した麻雀マンガって他にあるのかな?
とりあえず、私は初めて観ました。
「萌え」と「麻雀」という組み合わせに限らず、
麻雀の見せ方の部分でもとても新鮮な作品。

■異能者(魔性のもの)について

アニメ作品の特性により、原作の誇張がより際立っているため、
全員、異能者のように見えますが、実際の異能者はそれほどいません。
第一期では咲、久(一部)、衣、桃子だけです。

興味深いのは彼女たちには、
重い過去のエピソードが設定されていることで、
そのトラウマの大きさが、麻雀の強さと正比例していることです。
(第二期以降になると、曖昧になっていくのですが、
 少なくとも一期については例外はないと思います)
これが、本作の麻雀マンガ的なところであり、
本作の世界観の肝になる部分で、
このトラウマの解消こそが物語のテーマ。

各自のトラウマは少年マンガ的にバトルを通じた友情で
解消されていくわけですが、
主人公の咲のトラウマは解消されていません。
おそらく、同じトラウマを背負った姉の照とのバトルによって
解消され、物語が終わるのでしょう。

あ、先ほど例外はないと書きましたが、
和にはトラウマあるっぽいですよね。
ということは、本人に自覚がないだけで、
実は彼女、異能者なのかもしれませんよ。
異能者殺しの異能者みたいな。

となると、最終エピソードは全国大会個人戦決勝か。

咲、照、和(と誰か)が同卓。
和解できない宮永姉妹を案じた和の魔性が覚醒し、
壮絶なハルマゲドン的バトルの末、全員魔性を失い、
優勝は同卓した「誰か」。
でも、もう魔性なんて必要ないよね、
咲と照が関係を取り戻したのだから。
後日、宮永家を訪ねる和。
そこには家族麻雀を楽しむ咲と照の姿があった──。

ってな大団円になると思うな、たぶん(笑)。

■長野県出身者としてのあれこれ

見出しの通り、私は長野県(南信)出身なので、
本作には見慣れた名前や風景が登場します。
長野県民の特性に準じ、私も出身地区以外のことはよく知らないので
南信地区に限定して、あれこれ語ってみます。

・清澄高校

似た名前の高校(諏訪清稜高校)があり、湖の描写もがあったので
諏訪かな、と思ったら茅野がモデルのようです。
当たらずとも遠からず(諏訪と茅野は隣接しています)。
ちなみに、諏訪清稜高校は県内でも有数の進学校。
片岡優希がどうやって入試をかいくぐったのか、疑問が残るところです。

また、最寄り駅は飯島町の七久保駅がモデル。
飯島と諏訪はそれなりに離れているので、地理的な整合性はないですが、
そんなの、瑣末な問題です。
舗装されていない道、そこを夜歩く風景とか、
出身者としては涙腺が緩みました。
非常に残念なことですが、南信地区のホタルは激減しており、
劇中シーンのような光景はまず見ることが出来ません。
私が子供の頃は、あれに近い光景が確かにあったのですが。
それも含めて非常に郷愁を感じました。

・原村和

諏訪地方に「原村」という村が存在します。
うん、たしかに「のどか」な村です。
ペンションが多く立ち並んでいたり、別荘があったり、
避暑地って感じでしょうか。
いいところのお嬢さんである和の設定と親和してますね。
あまり関係ないかもしれませんが、都会からのIターンが多い村です。

・風越女子

飯田市。飯田風越(読みは「ふうえつ」)高校がモデルのようです。
ちなみに飯田風越高校は共学です。
昔から「かっこいい名前だなあ」と思っていたのですが、
原作者の方も同じように感じたのでしょうかね。

そうそう、県予選のとき、風越女子のメンバーだけが
現地泊しているのには、結構、感心しました。

長野県は縦に長い自治体で、
予選会場の長野市と飯田市は150キロ以上離れているんですよ。
実際の飯田市の高校生たちも
同じシチュエーションなら現地泊するでしょうね。
一方、清澄高校は風越よりも長野市に近いので、彼女たちは日帰り。
でも、大会二日目に「朝早くて眠い」描写がありましたね。
これにも感心。私も学生時代、似たような経験をしました。

・電車
2両編成のあのカラーリング、あれだけで私は郷愁を覚えます。
誰がどう見ても飯田線。
本作は「究極超人あ~る」以来の飯田線アニメでもあるのです。

それにしても、自分の出身地が作品に登場するだけで、
アガるのはなんででしょうね?

本作は風景や建物だけでなく、
そこに住む人々の生活感覚まで描写してくれていて、嬉しい限りでした。

※以下のサイトを参照しました。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~uso9000/travel/travel.htm
詳しい取材、素晴らしいです。

投稿 : 2015/04/06
閲覧 : 288
サンキュー:

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