「四畳半神話大系(TVアニメ動画)」

総合得点
88.7
感想・評価
2933
棚に入れた
13596
ランキング
100
★★★★☆ 4.0 (2933)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

半兵衛♪ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

【ネタバレ有】『薔薇色の人生など有りはしないが…、薔薇色の反対が“雑多”ではない…』

 
 “森見登美彦(もりみとみひこ)”による小説が原作の作品であり―、「ノイタミナ」枠により放送され、(テレビアニメ作品としては初めて)“文化庁メディア芸術祭大賞”を受賞した作品である―(ちなみにその翌年、「魔法少女まどか☆マギカ」が受賞している…)。


 この作品を簡単に説明すると―、「ヒロインが3人で男が4人なのに、最後は皆が結ばれる…」という、複雑怪奇な大団円アニメ作品である―(なぞなぞではない…観れば分かる…)。


 早速、レビューに移るが―、結論から言おう…。超面白いです!!(マジで…)。

 正直、1クールの作品のみで言えば、今まで観てきた作品の中でも“五指”に入るレベルだと思っている―。

 ただし、(毎回この手の作品のレビューを書くとき言っているのだが…)、小説が原作ということもあって「面白さのツボが大人向けだという事―」、「盛り上がりにピークがあるような作品ではないという事―」、この2点によって低評価にしている人も見かけるが…、(マーケティングに成功しただけの)中身の無い作品とは違って、本作は間違いなく“傑作”である―。
 なので、この作品をつまらないなどと言っている人は、(残念ながら)受け手(=自分)に非があると思った方が賢明である―(「魍魎の匣」なども同様…)。



 この作品のような、作品全体(=ストーリーを中心として作画や音楽など…)に統一性やこだわりのある作品は、高評価な部分が多く…(というか欠点が少なく…)、何を書けば良いのか迷うのだが…、やはり特に良かった“物語”と“キャラ” (あと演出や世界観の部分も少し…)について書いていこうと思う―。 


 (…が、その前にその統一性やこだわりについて少し触れると…)

 この作品は、確かにその“独特な世界観”の描写が素晴らしい―。

 揺れた線や斜めに傾いた不可思議なパースを多用した“独創的な作画”―、“特徴的な語り口調の主人公”や“個性を(前面に)顔面に出したキャラ達”―、“実写とアニメーションを融合させた演出”―、そのどれもが、この作品の独特な世界観を創る役割を担っており…、どこにでもある日常の世界を、“非現実的で不思議な空間”へと変容させている―。

 “中村佑介(なかむらゆうすけ)”さんの“キャラデザ(原案)”も素晴らしく―、(執筆中から(森見さんの)頭の中で決めていたのかというぐらい…)キャラが世界観に完璧にハマっている―。



 (これだけ見ても、作品の“統一感”が素晴らしく、手を掛けていない部分などほとんど感じない―。だからこそまず最初に言い訳させてほしい…。本当は☆の評価を、5つの項目全て、0.5ずつ上げたい…。

 けれども、物語だけがこの作品より良い…、キャラだけがこの作品より良い…という作品を(残念ながら)知っている…。なのでその2つの項目を☆4.5にした時、残りは自ずとこの評価になってしまう…(物語=キャラ>作画=声優>音楽…)。

 いくつかこの作品のレビューを読ませてもらったが―、高評価かつハマったと思われる人の何人かも、この評価の“バランス”をしており(ただし☆0.5ずつ高いが…)、気持ちとしては自分も同じである―。

 だからこそ、“お気に入りの棚”に入れるくらい好きになった諸君…本当に申し訳ない…。)



 (では話を戻して、その物語についてだが…)

 (本作のあらすじを簡単に説明すると―)、大学入学を機にサークル活動を通じて「薔薇色のキャンパスライフ」を目論む主人公・“私”が―、他人の不幸が大好きな、妖怪のような風貌の“小津(おづ)”と出会い―、自分の大学生活が上手くいかないことを、常に誰か(何か)のせいにしては周りを妬(ねた)み…、小津と共に他人を貶(おとし)めることばかりに尽力する…という、何とも捻(ひね)くれた主人公の…、何とも地味な物語である―。


 ただし勘違いしてはいけないのが、これ↑はあくまで“各一話”のあらすじであって―、全体のあらすじとしては、これ↑を8回(数えようによっては7回)繰り返す…という、(何故か)「エンドレスエイト」(「涼宮ハルヒの憂鬱」参照…)に正面から挑んだ意欲作である―(面白さとしては、四畳半>>>>>>>>×8の8乗>エンドレスエイト…であるが…)。

 (前述、“繰り返す”と言ったが―、エンドレスエイトとの違いは、タイムリープではなく“並行世界(パラレルワールド)”を描いている事にある―。なので繰り返すというよりは、別の並行世界を生きる8人の主人公がいる…と言った方が正しい―。)



 (とまぁ、これだけを見ると…)、「おいおい…、同じような話を8回も繰り返すのか…」と思うかもしれないが―、各話の内容も然(さ)ることながら、毎話登場するキャラクターが素晴らしいため、一話として同じだと感じる話は無い―。

 前述した二人(私と小津)は勿論―、「先輩は阿呆(アホ)です…ぎょええええ!!」なヒロイン・“明石(あかし)さん”や―、ミミズ入り肉団子(大)が大好きな神・“樋口(ひぐち)師匠”―、美人だが…酔うと(エンドレスエイトならぬ)エンドレスナイトを味あわせてくる妖怪・顔舐め…ではなく“羽貫(はぬき)さん”―、一途に女性を愛する男の鑑…ダッチワイフ…(いや失敬…)ラブドール愛好家の“城ケ崎(じょうがさき)先輩”など―、個性的(過ぎて)で魅力的なキャラが多く登場し―、この個性を持ってして、飽きる話など有りはしない―。



 だが、(そろそろ本題に入らないと終わらないので…)、この作品の一番の見所は―、(独特な世界観や演出、魅力的なストーリーやキャラクターではなく―)、主人公が大きな“勘違い”をしている事…そしてそのことに、“最も何も無い(並行)世界で”気付く…ということにある―。

 それはラスト3話で描かれるのだが―、言ってみれば、それまでの7回(の繰り返し)は、そこに(その考えに)至るまでの“布石”である―。

 だが断言しても良い―。そこに至るまでの8話を描いたからこそ…、そしてそれが、この(並行)世界においては“有って無かった出来事”であるからこそ…、“かけがえの無い大切なこと”に気付いた時の主人公に共感し―、この(並行)世界での“誰の記憶にも無い”主人公の、ラストのあの涙や笑顔に感動するのである―。


 “何も無かった世界”を生き、“何かが有った世界”を振り返ることで―、自分の間違いに気付き…、人生というものを理解し…、そうして…本当に大切なことを知る―。

 ラストの…、主人公が橋の上で皆を見つけて涙し走り出すシーン―、そして最後の、病室で話す主人公たちの“やり取り”―。

 橋の上で主人公が涙した時、全く同じタイミングで自分も泣いていた…。自分たち視聴者が観てきた私と小津が過ごした時間は、最後の世界には存在しない―。それでも、病室でのやり取りを見たとき、心温まる感覚を覚えたことだろう―。


 確かに、この作品には他の作品とは違う“作画や演出の上手さ”がある―。“一話一話の内容”も凝っていて、“最後には全てが繋がる”という構成も素晴らしい―。

 けれども、もっと“感覚的な”…“本能的な”部分で感じる何かが、決定的に他の作品とは違い―、この感覚を感じた人…感じた作品には、このサイトで言う“お気に入りの棚”に入れる価値があるのだと思う―。



 (最後に一つ…)、自分は、この作品を観るまで(正確には、最近観てきた作品を観るまで)は、“物語”こそ最も大切な評価対象であり、他の4つの項目(作画や音楽、キャラや声優…)は“同列でない”と思っていた…。
 けれど、この作品(や最近観た作品)によって“キャラクター”の重要性を知り、“物語とキャラは同列だ”と気付かされた―。

 確かに、壮大で…、笑えて…泣けて…感動して…、最後には頭が真っ白になるような余韻を残して…そんな風に終わる作品は、ずっと心に残る名作だと感じる―。事実、今まで何度もそういった作品に出会い、それは今でも心に残っている―。

 けれど、思い返してみた時、その作品の中には、必ずと言っていいほど“大好きなキャラ”がいて―、時には、憧れたり尊敬したり、人として好きになったりもした―(道は踏み外していない…)。

 だがどうだろう…。もしこのキャラ達が普通の人間で―、物語“だけが”壮大だったり感動する話だった場合、果たして本当に今みたいな気持ちになっていただろうか…。

 答えはNOだと思う―。物語が心に響く内容なのは当然として―、“そのキャラに好感を持ったから”こそ…、“その作品にはそのキャラ達がいたから”こそ…、その作品を(今のレベルで)好きになったのだと思う―。



 本当の“アニメの良さ”を知った人なら、アニメの中にはただ面白いだけではなく、自分の“価値観や人生観を変えてくれる作品”があることを知っているだろう―。

 それは唯一、フィクションを“現実に持ち込める”方法であり―、(主人公ではないが…)改めて“気付かされる”教訓でもある―。

 この作品も、人生観ではないが…自分の“考え方”や“価値観”を変えてくれた…、最高の作品の一つとなった―。



 最後に―、この作品とのファーストコンタクトはワーストコンタクトでなく、ベストコンタクトである―。


  (終)

投稿 : 2014/09/15
閲覧 : 440
サンキュー:

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